2020/06/19

Capital of the 21st century (Movie)


アメリカ留学はどうなるかわからないし、
モヤモヤとした状況の中で、
とりあえず早めに夏休みを取ってみた。 

立て続けに映画を2本見た。 1つは「21世紀の資本」
https://21shihonn.com


元々の本は600ページを超える経済学の本であり、それを100程度の映画にするという試み自体なかなかチャレンジングなものであるとは思うのだが、それはそれとして(課題はたくさんあるが)面白かった。ただ、もう少し静かな映画かと思ったら、記録映像含めて効果音が騒々しかった(映画館だから?)。

資本経済と、実質経済の違いがわかっていないと、論点の解釈や証明が難しい。経済学をきちんと学んだらまた見方が違うのだとも思う。資本主義という極めて新しい経済・政治体系はまだまだ未熟で改善しなければならないという主張が映画の中で一貫していた。

しかしこの時代に、資本と政治が強く結ばれており、それをどうするか、どうやって資本の再分配を行うかという点については、答えが出ていない。より資本が資本を持つ人に集まるような政策をとる政治家が選出される。資本で全てが動いていく。

冒頭でピケティ氏自身が回顧していたように、私たちはソビエトの崩壊を目の当たりにして、共産主義、社会主義は実験として失敗したのだという思い込みから、あまりにも資本主義、自由主義経済に傾倒しすぎているのかもしれない。資本主義経済のもとでこそが人々は自由になれると信じきっていた。問題は、この「資本主義を信頼しすぎている」という点だ。もっと懐疑的になるべきなのだろう。そして今現実に、多くの人が懐疑的になっている。

社会格差の拡大は社会の不安定化をもたらす。社会疫学で証明されたように、格差の増大は社会全体の健康を損なう。
歴史的には社会格差は革命を引き起こす。フランス革命にせよ、カンボジアのポルポト政権によるクメールルージュにせよ、革命が起きれば、さらに社会は不安定化する。社会格差の憎悪から生まれた革命は人々を救わない。それは誰のためにもならない。孫子が説くように、戦わずして勝つことが善だとしたら、今この世界で格差そのものを、そして格差からくる憎悪を緩和しなければならない。

easy to say, hard to do.



2020/06/18

TCD Transcranial Doppler after cardiac surgery


生理検査の技師さんにTCDの測定方法を教えてもらった。
(基礎研究でマウスの血流遮断にも使っている論文があり、今後もやくに立つだろう)

心臓手術でどのくらい有用なのかと調べてみたが、
2003-2010年くらいには盛んに研究されていたようだが、今は下火なのか。。。
心臓手術というより、ECMOの患者でmixing zoneがどこかを推定できないか?


Review

Doblar DD. Intraoperative transcranial ultrasonic monitoring for cardiac and vascular surgery. Semin Cardiothorac Vasc Anesth. 2004;8(2):127-145. doi:10.1177/108925320400800206
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15247999/


Review2個目

Polito A, Ricci Z, Di Chiara L, et al. Cerebral blood flow during cardiopulmonary bypass in pediatric cardiac surgery: the role of transcranial Doppler--a systematic review of the literature. Cardiovasc Ultrasound. 2006;4:47. Published 2006 Dec 13. doi:10.1186/1476-7120-4-47
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17166253/


前向き観察研究
心臓手術後のせん妄の予測に関して、TCDは有用ではなかったと。rSO2の初期値が低いことが術後せん妄の原因であったとする研究
延世大学からなのだが、評価方法が私の研究と似ていて、(きっと研究したDrも同じくらいの人なのではないか?)親近感が湧く。同時に人の研究の欠点は目についてしまう...

Soh S, Shim JK, Song JW, Choi N, Kwak YL. Preoperative transcranial Doppler and cerebral oximetry as predictors of delirium following valvular heart surgery: a case-control study [published online ahead of print, 2019 Sep 3]. J Clin Monit Comput. 2019;10.1007/s10877-019-00385-x. doi:10.1007/s10877-019-00385-x
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31482364/

101人の心臓手術を受ける患者を対象に、手術前にrSO2 TCDを測定し、術後のせん妄との関連を見ている。 結果rSO2のみが術後せん妄と関連があったと。





2020/06/16

IHME


公衆衛生学、国際保健の授業。

Global /Local burden of diseaseという考え方。

http://www.healthdata.org

From bench to bedside to public health
それは欲張りすぎだろうか。 

Hypertonic saline after cardiac surgery RCT


心臓手術後のICU患者に対して高張食塩水を投与した方が体液バランスが良くなったというRCT

Pfortmueller CA, Kindler M, Schenk N, et al. Hypertonic saline for fluid resuscitation in ICU patients post-cardiac surgery (HERACLES): a double-blind randomized controlled clinical trial [published online ahead of print, 2020 Jun 9]. Intensive Care Med. 2020;10.1007/s00134-020-06132-0. doi:10.1007/s00134-020-06132-0
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32519005/


Patients n=101

Intervention: patients received a single infusion of 5 ml/kg body weight of 7.3% NaCl (or 0.9% NaCl) over 60 min

Outcome: urine output fluid balance

本文を読めていないけど、高張食塩水を投与した群の方が尿量が多く、体液バランスのプラスへの振れ幅が少なかったと。

こういう安い治療方法はいいなと思う。水をたくさん入れて、後でサムスカで引くというようなお金のかかる治療より良い。そのあたり(コストの問題)はどうなんだろうか?




2020/06/15

CRRT weaning protocol


CRRT 離脱の標準的な基準があるかどうか?を数日前に考えていたのですが、
https://mmarico.blogspot.com/2020/06/crrt-weaning-from-crrt-in-icu-patients.html

同じ雑誌の2019年にドイツでCRRT離脱プロトコルを作成して実際にやってみました、という論文があった。

Tourneur JM, Weissbrich C, Putensen C, Hilbert T. Feasibility of a protocol to wean patients from continuous renal replacement therapy: A retrospective pilot observation. J Crit Care. 2019;53:236‐243. doi:10.1016/j.jcrc.2019.06.031
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31280144

ICUに入院してCRRTが必要となった患者に対して、離脱プロトコールに沿って離脱を行なった群と通常の担当医師による判断で離脱を行なった群でどうだったかをみた研究
対象人数はそれぞれ15人で、pilot study。

その具体的な離脱プロトコルなのだが、
・フロセミドを1mg/kg を500mlの晶質液に入れて投与。(乏尿の場合)
 (輸液過多の場合はボーラス投与)
・12時間で尿量が 50ml以下かどうか
  ・50ml以下であれば、CRRTを1 cycle行う。(1cycleって?1日?)
   アミノ酸の補正を行う 1.5-1.8g/kg*day
         この際に利尿薬は使用しない。12時間後に再度尿量を確認する。
  ・50ml以上であれば次の離脱プロセスに進む
(離脱プロセスを進める場合)
・循環血液量の減少を認めなければ利尿薬を追加
  フロセミドの持続 最大 0.25 mg/kg*hr
  フロセミドで効果がない場合はさらに別の利尿薬(サイアザイド系など)も追加。
・以下を整えて離脱する。
 ・輸液バランスが0となるような利尿状態
 ・MAP > 65    <65であれば昇圧薬の使用
 ・ScvO2  > 70    < 70であればカテコラミン、輸液、輸血の実施
 ・アルブミンの補正
 ・電解質の補正 


新鮮な点は結構な量の利尿薬を使用するところだった。

結果として 15人 vs 15人の比較では、このプロトコールに従った群の方がScvO2が高く、尿量も多かったと。
ただ、46%はこのプロコトールを行っても離脱できなかったと。副作用は認めなかった。

プロトコールがあった方がいいのかどうか、この結論でははっきりしない。
Feasibilityは確かにあるのだけれども、それを積極的に導入した方がいい理由(=現状の問題点)が曖昧だからかもしれない。

しかし長期間のCRRTは患者さんの臥床期間が長くなるし、感染のリスクも増えるのでやはり早くweaningできればそれに越したことはないのだが。 weaningが早くなるとも言えていない。難しい。




2020/06/14

MR and cardiac death


JAMAの論文 review

https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/fullarticle/2766532


後で読もう。

冬眠を刺激する神経細胞


人工冬眠という分野。 


http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202006111800.html

https://www.riken.jp/press/2020/20200612_1/index.html

麻酔に応用と書いてあるが、どちらかというと、集中治療の方が応用できるんではないだろうか。
重症患者において、代謝を抑えることができれば?
そもそも重症患者で代謝を抑えて人工冬眠状態にしても良いものか?
外部からの侵襲に対して体を守るためにはそれなりのエネルギーが要ると考える方が普通かもしれないが、不必要な代謝のみを抑えることができれば?

CRRTからの離脱成功要因とフロセミドの投与 weaning from CRRT in ICU patients


CRRT、CHDFからの離脱において、明確な基準はないらしいのだが。


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29477939/
Raurich JM, Llompart-Pou JA, Novo MA, Talavera C, Ferreruela M, Ayestarán I. Successful weaning from continuous renal replacement therapy. Associated risk factors. J Crit Care. 2018;45:144‐148. doi:10.1016/j.jcrc.2018.02.009


Purpose:
To identify risk factors associated with successful weaning from CRRT in critically ill patients and to evaluate the effect of furosemide in the recovery of urine output after CRRT stop

Design:
retrospective observational study

Patients
from 2014 to 2017  those who admitted to the ICU with CRRT

Statistics
multivariable logistic analysis
  logit (weaning fail/success ) =  b0 + bn * several factors

Definition:
Successful weaning, when renal function was recovered based on urine output and glomerular filtration at a level that CRRT was not required again to maintain homeostasis; and failed weaning, when the patients did not recover urine output and needed CRRT again.

Result:
Risk factors of failed CRRT weaning
 more days of CRRT and positive fluid balance
6 h-urine output after CRRT stop was the main risk factor associated with successful CRRT weaning



クレアチニンレベルやCRRT中止後のフロセミドの投与有無については、失敗群と成功群で差がなかったとのこと。
因果がなんともはっきりしない(尿が出ないから失敗なのか、失敗だから尿が出ないのか)し、新しい発見があったのかと思いきやそんなこともないので、
これが後ろ向き研究の限界なのかなとも思う。

まずCRRT離脱のプロトコールがないっていうのが問題だ。
(うちの病院もないけど。。。)

心臓手術を受けた患者に限ると、CRRTで導入されて、次にRRTに以降し、そのままRRTになるか、もしくは離脱できるかというところで、時間がかかるのかもしれない。

統計解析(特に多変量解析)の限界なのかもしれないが、時間的な経過を加味しなければ、なかなか言いたいことが言えないし、第一治療に繋がるような魅力的なことが見つからない。。。


2020/06/11

AKI after cardiac surgery: クレアチニンはAKIの診断にどこまで有効と捉えるか


オーストリアからの報告。 斜め読み。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32371831/
Bernardi MH, Ristl R, Neugebauer T, Hiesmayr MJ, Druml W, Lassnigg A. Very early changes in serum creatinine are associated with 30-day mortality after cardiac surgery: A cohort study [published online ahead of print, 2020 May 7]. Eur J Anaesthesiol. 2020;10.1097/EJA.0000000000001214. doi:10.1097/EJA.0000000000001214

今時AKIをクレアチニンでみるのは研究的には古いかなと思っていたのだが、
(NGALとか、なんとか、今はやりのより感度の高いものでみた方が良いのかしらと)

1997-2008年にウイーン大学で心臓手術を受けた患者 8711人を対象とし、
術前のCreと術後2時間以内のCreの差を測定。

primary outcome:
30-day mortality and its relationship with the difference between the baseline SCrea level (SCreabaseline) measured just before surgery and the peak SCrea level measured within 120min after skin closure and ICU admission (SCreaAdmICU).

ここまでみると、いやいや、心臓手術の時は、輸液がたくさん入るので、大体Creは低くなる(単に薄まっている)。手術直後のCreと死亡率を比較してもどうしようもなくない?
と思う。きっと誰でも思うだろう。

そこでこの著者らは、輸液によってCreを「調整」している。

Adjusted Cre level = Serum Cre level * correction factor.

Correction factor = BW in kilograms􏰁 * 0.6) + Σ (cumulative fluid balance in litres)]/(BW at hospital admission 􏰁 0.6).
Cumulative fluid balance  =  術中の輸液、FFP、コロイドから尿量、ultrafiltrationを引いたもの。

Correction factor 0.6というのは体液量の推定値なのだろうが、うーん、こうしてみると結構ざっくりした計算のようにも思える。

で、さらにCreの変化を4群(減少大、減少小、増加大、増加小)に分けてそれぞれの30-day mortalityとの関連を多変量解析しているというもの。
Cox harzard modelを用いて4群による死亡の変化を見ている。
risk factorsとして27項目をそれぞれ単変量解析した後でモデルに投入している。

結果で面白いグラフがあった。Alluvial diagramsを使っている。

結論としては、Creが少しでも上昇している場合は30-day死亡率が高いというもの。 

輸液が入っているのにCreが高くなっているというだけで、AKIと考えて良いのかもしれない。ふーむ。むむ。




Alluvial diagrams をRで実装する方法
https://www.karada-good.net/analyticsr/r-504






2020/06/08

心臓手術後の持続フロセミドはRRTを防げるのか



心臓手術後の持続フロセミドはRRTを防げるのか?に関してのReview

Does Perioperative Furosemide Usage Reduce the Need for Renal Replacement Therapy in Cardiac Surgery Patients?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22761122/
Cardiovasc Thorac Surg. 2012 Oct;15(4):750-5.  doi: 10.1093/icvts/ivs208. Epub 2012 Jul 3.

内容は47編の論文のnarrative reviewなのだが、結論としては

We conclude that continuous furosemide infusion in the perioperative period promotes a gentle and sustained diuresis in cardiac surgery patients. The evidence supporting the benefit of this strategy in terms of reducing the need for RRT is weak.

私はまだこの治療法について、とやかく言える立場ではないが、うちに前にきた心臓血管外科の先生は「持続フロセミドなんてほんと意味がないよな・・」とぼやいていた。
本当のところはどうなんだろうか。


2020/06/07

INVOS1枚で逆側の脳の酸素化も推定できるか?


n=17 という少なさですが、INVOSの精度を比較している。

クリニカルクエッションは
心臓手術において、INVOSを片側の前額に貼付することで、逆側の脳の酸素化も
推定できるか?というもの。


Prediction of bilateral cerebral oxygen desaturations from a single sensor in adult cardiac surgery
A prospective observational study
https://journals.lww.com/ejanaesthesiology/Fulltext/2018/05000/Prediction_of_bilateral_cerebral_oxygen.7.aspx

患者は17人、CABG(CPB on) もしくは弁置換を受ける患者を対象。
両側にそれぞれ1枚ずつINVOSを貼付し、その差について見ている。

統計解析にBland-Altman法を使用してその精度を見ている。
Bland-Altman法:異なるモニタから得られる結果の一致度を検討する手段 


対象患者がそもそも左右左のない患者としているので、なんともというところなのだが、
これが例えばTARとかだとどうなのだろうか?
内頸動脈狭窄がある患者とか? 
逆にそういうものがない患者では、INVOSは1枚で十分と言えるだろう。