2022/12/27

A & A January 2023

 

Respiratory Adverse Events After LMA® Mask Removal in Children: A Randomized Trial Comparing Propofol to Sevoflurane

https://journals.lww.com/anesthesia-analgesia/Abstract/2023/01000/Respiratory_Adverse_Events_After_LMA__Mask_Removal.7.aspx

小児のLMA使用麻酔において、TIVA とSevoでどちらは有害事象が少ないかを見たRCT

患者 6ヶ月から7歳までの小児患者

アウトカム at least 1 respiratory adverse event 2nd outcome agitationやLMAの挿入時間

結果でTIVAの方が呼吸関連イベントが少なかった。10.8.% vs 36.2%; relative risk, 0.29; 95% CI [0.14–0.64]; P = .001)



Longitudinal Profiling of Plasma Cytokines and Its Association With Postoperative Delirium in Elderly Patients Undergoing Major Lower Limb Surgery: A Prospective Observational Study

https://journals.lww.com/anesthesia-analgesia/Abstract/2023/01000/Longitudinal_Profiling_of_Plasma_Cytokines_and_Its.8.aspx


周術期(Day1ーDay4)の血漿中サイトカイン(plasma interleukin-1β (IL-1β), IL-2, IL-4, IL-6, soluble IL-6 receptor (sIL-6R), IL-10, and tumor necrosis factor-α (TNF-α).)が術後せん妄と関連しているかの前向き観察研究

188人の患者を対象に行う。time-dependent Cox regression modelで検証

結果、24.8%に術後せん妄が発生。IL-6 and sIL-6R levels が最もせん妄の発生と関連していた。


Anesthetic Preferences for Cardiac Anesthesia: A Survey of the Society of Cardiovascular Anesthesiologists

https://journals.lww.com/anesthesia-analgesia/Abstract/2023/01000/Anesthetic_Preferences_for_Cardiac_Anesthesia__A.10.aspx


心臓麻酔の好みを調査したアンケート(米国)アンケート実施した対象麻酔科医は 75%程度が男性、70%がFellowShipと。

日本でもアメリカでもこの割合は同じ程度。しかしアンケート方式で回答率21%は少ない。


Volatile Versus Total Intravenous Anesthesia on Postoperative Delirium in Adult Patients Undergoing Cardiac Valve Surgery: A Randomized Clinical Trial

Volatile Versus Total Intravenous Anesthesia on Postoperative Delirium in Adult Patients Undergoing Cardiac Valve Surgery: A Randomized Clinical Trial


心臓手術後のせん妄について、TIVAが良いか、Sevoが良いかのRCT 。患者数 684

対象はon-pump cardiac valve surgery。結果としてこの2群で差はなし。



2022/12/20

ソ連とドイツの戦争


独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) 

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)


同じ戦争を扱いながら、全く趣旨の違う、目的の違う2冊を読んだ。

女性の語る、感情的な、かつ女性らしい戦争体験と、もう一つは戦後50年たち、ソ連のプロパガンダとしての利用や、ヒトラー一人にすべての罪をなすりつける戦争研究から一歩進んだ新たな研究について、どちらも通り一遍の「戦争反対」ではない深く切り込んだ考察をされていている。


物事を研究しようとする場合、常にバイアスを注意深く検証しなければならない。バイアスの存在を消し去るのではなく、なぜバイアスが入りこむのかも含めて。



2022/12/19

Anesthesiology January 2023


Preoperative β-Blocker Therapy and Stroke or Major Adverse Cardiac Events in Major Abdominal Surgery: A Retrospective Cohort Study

 https://pubs.asahq.org/anesthesiology/article/138/1/42/137060/Preoperative-Blocker-Therapy-and-Stroke-or-Major


周術期のβブロッカーが脳梗塞のリスクとなるかについてのRetrospective cohort study 

患者 204,981 patients who underwent major abdominal surgery

3群比較(β blocker naive、chronic β blocker、β blocker initiation) 

    initiationは60日以内のβblockerの使用と定めた。

アウトカム 入院中の主要心血管イベント

結果 The overall frequency of major adverse cardiac events was 1.3%

結局のところ3群で差はなかったと。


この議論の発端となったPOISE studyはβブロッカーを投与した群の方が周術期のMIは減少したものの、acute strokeのリスクが高く、血圧も低くなったというもの。この時に投与されたβ blockerの量はかなり多かったので、そりゃ血圧管理が大変になるだろうさというものであった。

このような大規模後ろ向き研究での結果は、臨床医がβブロッカーを適切に使用しているという証拠にはならない。propencity scoreでマッチングさせても合併症が変わらないのであれば、むしろβブロッカー投与しなくてもいいんじゃないの?という結論にもなりかねないが、それはRCTを待たなければいけないか。


Perioperative Supplemental Oxygen and Postoperative Nausea and Vomiting: Subanalysis of a Trial, Systematic Review, and Meta-analysis

https://pubs.asahq.org/anesthesiology/article/138/1/56/137193/Perioperative-Supplemental-Oxygen-and


30% O2と80% O2で術後嘔吐の頻度は変わるか?

結論としては変わらなかったと。


Ultrasound-guided Percutaneous Cryoneurolysis to Treat Chronic Postamputation Phantom Limb Pain: A Multicenter Randomized Controlled Trial

https://pubs.asahq.org/anesthesiology/article/138/1/82/137234/Ultrasound-guided-Percutaneous-Cryoneurolysis-to


切断後の幻肢痛に対するCryoneurolysisの治療効果をみたRCT

すでに幻肢痛が慢性痛となっているような症例で、大腿神経、坐骨神経に対するCryoneurolysisの治療効果はなかったが、切断部位によってはより疼痛を惹起、もしくは軽減するという相反する結果となった。

cryoneurolysisを行う神経と痛みに関係している神経を一致させることが治療成功の鍵なのかもしれない。





2022/12/10

Ado and Billie Eilish

 最近のZ世代の考えていることはよくわからんわと思っていたのだが、

私がアメリカに行っている間に流行っていた曲が、AKBのようなきゃぴきゃぴした曲から

Adoの「うっせえわ」に代わっていた。

アメリカでもBillie Eilishがチャートの上位を占めたし、最近は女子が「不機嫌さ」を

歌う曲が流行っているのだろうか。

と思いきや、男性グループは昔に比べて軽い、それこそアイドル的な曲が流行ったりと、

なんだか昔の男女が逆転しているように思う。


いつの時代も社会に対する不満や反発をうたう曲はたくさんあるけど、

それが社会的な体制をかえるうねりになるには、さらになんらかの要素が必要なんだろう。


2022/12/09

PCI vs CABG 論争、戦争?、ののしりあい

 部長のK先生と雑談

「昔からCABG vs PCIの論争って終わりがないけど、外科学会は循環器学会が出した

XXXの患者さんにPCIをすべきというガイドラインに私たちは従わない、

というステートメントをだしててね、

またこのステートメントがなるほど批判というものはこうするのかと面白かったよ」


その背景には、このガイドラインのもととなったCABG  vs PCIの大規模RCTという臨床

研究がある。歴史の長い、何度も繰り返されているRCT達。

RCTだったら公平なのか、バイアスはないのかというと、

そんなことは全然なく、例えばアウトカムの取り方ひとつでもPCIが有利になったりする。

(例えば術後すぐの炎症反応や、トロポニンの値はCABGに不利なことは自明である)

そしてこういう臨床研究にはスポンサーとしてステントの会社がついていたりするわけで、

(funding supportは決して違法ではなく、それを論文に明記していればなんの問題も

ない)、裏でPCIが有利なように、(意図的ではないにせよ)、そもそものアウトカムを

事前に一方に有利なように設定して行うというのはいかがなものかとも思ってしまう。


そして当事者たちは、決して自分たちは悪いことをやっているのではない、医学の進歩に

貢献しているのだと思っている。

正義をせおった人間の方がたちが悪い。


K先生に、「いやー、学会や研究とずぶずぶに関係を作って、たくさんの患者にステント

治療をしてもらうことで、私たちは人類に貢献しているって、本気で信じてしまう

ってアメリカっぽいと思ってしまいます」と言ったら笑っておられたが、

アメリカにいると、そういう私たちはがんばっている、私たちのしていることは

100%正しい。という妄信をもった企業や人が大勢いる。

そういうことをアピールする場を多く目にするといったほうが適切か。本当に心底

そう信じているのかは不明だが、そうしたイベントやアピールの場は高揚感や肯定感が

できる。アメリカだけがそういう国なわけではなく、資本主義のもとで野心のある人たちが

それを堂々とできる自由があるのがアメリカである。


結論、RCTは気を付けて読もう。

基礎研究から臨床にもどると、そもそも本質的な疑問を解決しない臨床研究(とくにRCT)の

はがゆさを感じる。そういったことはもうすでに別の論文で答えが出ていて、

でも実際のpragmaticな状況ではどうなんだというのがRCT研究の目的なんだけど、

いざ自分の現場では、RCTより理論や実際の観察データに基づいた機序の研究

にそって臨床をしていきたいなと思うようになってきた。





2022/12/08

Extubation strategy: PSV vs T piece


https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2209041


ハイリスク患者(65歳以上、chronic cardiac or respiratory diseaseがある)の抜管時に

PSVが良いか、Tピースが良いかのRCT

969人の患者

primary outcome  ventilator-free days at day 28

再挿管率は13-14%であり、primary outcomeに差は認めなかったと。


慣れている方で良いということか。

PSVの方が慣れている私はTピースだとちょっとハラハラする。

2022/12/05

Sleeping and dementia


Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia

 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33879784/

別のstudyデータを使用しているが、数が多く面白い。

7959 participants of the Whitehall II study


50代、60代での睡眠時間が短かった(6時間台、それ以下)のグループは長かった(7時間~

群よりも認知症になるリスクが高かったと。70代の睡眠時間についてはデータの精度として

よくなかった。

25年のフォローアップというかなり貴重なデータに基づいたデータ。


2022/12/02

Memo

 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2804255/

Glymphatic system and anesthesia; Sleeping drive metabolite clearance


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24136970/

Xie L, Kang H, Xu Q, Chen MJ, Liao Y, Thiyagarajan M, O'Donnell J, Christensen DJ, Nicholson C, Iliff JJ, Takano T, Deane R, Nedergaard M. Sleep drives metabolite clearance from the adult brain. Science. 2013 Oct 18;342(6156):373-7. doi: 10.1126/science.1241224. PMID: 24136970; PMCID: PMC3880190.


Glymphatic system 

脳にはリンパ系システムがないとされていたが、脳に存在するリンパ系システムとして認識されたシステムの名称。具体的には髄液や間質液のことを指す。


このGlymphatic system が覚醒時と睡眠時(もしくは麻酔時)で異なり、睡眠時には髄液系の拡張によって、Aβといった代謝産物の排泄が促進されるかどうかの検証、

結果、髄液量は睡眠時には増加し、クリアランスについても増加が確認された。

睡眠時と麻酔時では差は認めなかった。

このため、睡眠というよりadorenagic stimulationがこのGlymphatic systemの拡張及び収縮に関与しているのではないかとの仮説から、adrenaline inhibitorsを投与したところ、inhibitorの投与によってもGlymphatic systemの増加が認められた。


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面白いなと思うが、本質は睡眠というより、交感神経の興奮が主だったというところ。

麻酔と睡眠に差がないというのであれば、麻酔をかけることで、脳の代謝産物の排泄を促し、

より健康になれるとも思ってしまうが、それはかなり早計だろう。

むしろ、いかに交感神経の活動をコントロールするかが脳の代謝に重要か。


Nature2021 

https://www.nature.com/articles/s41586-021-03489-0


A&A Review

https://journals.lww.com/anesthesia-analgesia/Fulltext/2019/04000/Glymphatic_System_Function_in_Relation_to.20.aspx






2022/12/01

Milrinone

PDEIII阻害薬 

・DOBとの力価換算は1/20  DOB 5r = Milrinone 0.25r 

・強心薬にはかわりなく、DOBやDOAと同じように不整脈のリスクはある。

・肺高血圧を呈している場合にはDOBとの併用が有効かもしれない

・投与するならば人工心肺中から投与。1時間以上投与しないと、効果が表れない。

・腎機能が低下している症例では腎障害を悪化させるリスクがあるので避けたい。

・術前にB-blockerを長期間つかっている場合はミルリノンの方がDOBよりよい(かも)

・小児心臓手術では細血管の拡張機能がより高いオルプリノンの方が好まれる。


OPTIME-CHF study (2003)

慢性心不全に対する Milrinone vs placebo。差は認めなかったが、このStudyではミルリノンの投与量が0.5rと多かったため、副作用(不整脈など)が多い結果となった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12651048/


Milrinone vs DOB (2021) for cariogenic shock 

NEJMに報告されたRCT。結果としてDOBでもMilrinoneでも差はなかった。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2026845


β遮断薬抵抗性慢性心不全急性増悪に対するPDEIII阻害薬と低用量DOBの併用

http://www.jcc.gr.jp/journal/backnumber/bk_jjc/pdf/J013-2.pdf