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2022/12/20

ソ連とドイツの戦争


独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) 

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)


同じ戦争を扱いながら、全く趣旨の違う、目的の違う2冊を読んだ。

女性の語る、感情的な、かつ女性らしい戦争体験と、もう一つは戦後50年たち、ソ連のプロパガンダとしての利用や、ヒトラー一人にすべての罪をなすりつける戦争研究から一歩進んだ新たな研究について、どちらも通り一遍の「戦争反対」ではない深く切り込んだ考察をされていている。


物事を研究しようとする場合、常にバイアスを注意深く検証しなければならない。バイアスの存在を消し去るのではなく、なぜバイアスが入りこむのかも含めて。



2022/11/08

砂糖と紅茶

通勤の最中に本を読むのが楽しい。


砂糖の歴史

仕事とは関係のない

砂糖についての本ではあるが、砂糖の歴史ときってもきりはなせないイギリスについての

歴史について多くのことが書かれている。砂糖を通してではあるが、興味深い。


砂糖入りの紅茶がイギリスの近代を支えたと。

いかに英国人が茶の木の一本も生えないイギリスを「紅茶の国」としたか。

サトウキビ畑、そして砂糖イコールプランテーションであり、プランテーションの

あるところ奴隷制度ありということで、砂糖の貿易や商売で儲ける話は正義感の

強い若いころに読んだら本当に腹立たしいと思うだろう。

しかしこれらは歴史のなかだけではなく、今なお繰り返されている人間の本質的な野望や

野心の表れでもある。そのなかで砂糖という商品が、コーヒーやコショウと同様の

「世界商品」と呼ばれる品目となり、イギリスにおいては東でとれた茶に、西(当時は

カリブ海、南米)でとれた砂糖をいれて飲むことが「ステータス」であり、

またイギリスという国は、「ステータス」をマネすることを良しとする国民性が

あったという分析が面白い。

(この傾向は島国ならではなのだろうか)


そして砂糖という商品に対して保護政策を設けたがゆえにおちいる政治的な混乱は

日本における米やこんにゃくといった産物を保護していく政策とも類似する。

歴史が繰り返すというのならば、こうした保護政策が将来に対して有用に働いたり

国の衰退を防ぐということはない。ただ現状で困窮するかもしれない人々のリスクを

先延ばしにするだけである。


それはともかく、砂糖がプランテーションで大量生産されるようになった以降の

英国において、砂糖が嗜好品の域をでて、主食とはいわないまでも

カロリー源とみなされるまでに重宝されており、それはフランスやその他のヨーロッパ

の国々では見られなかったという点も面白い。ワインやビールなどが大量生産できなかった

イギリスの気候風土、そして世界からの貿易で得た富がイギリスを(紅茶を生産できる

わけではないのに)、紅茶の国にしたのだと。

自国の産業ではなく、輸入そして輸出を循環させることで富をつくり、またそれを

維持するために文化までも変えてきた、その臨機応変さ、貪欲さには

文化を守るってなんだとまで考えてしまう。文化など、たかだか数十年から数百年も

したら入れ替わってしまうものなのだ。


それはともかく、砂糖に魅了された近代の歴史と、その後に訪れた飽食、そして

過剰な糖質制限。皮肉な近代の歴史。

プランテーションと環境破壊というところに着目すれば、砂糖の消費が落ちていくのは

良い傾向ともいえるか。




2022/11/07

脳の大統一理論 自由エネルギー原理

 

https://www.iwanami.co.jp/book/b548871.html

脳の大統一理論 自由エネルギー原理


Free energy principle, Friston 

Review: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33597069/


ホルムヘルツの自由エネルギーを最小化するべく、脳の回路は形成されている。

ベイズ推論に基づいた認知と誤差の修正を繰り返していく。

シャノンサプライズの最小化


まず初めに期待される状況があり、それに対しての外界からの信号との誤差をもとに、さらに予測もしくは期待される状態を作り出していく。

睡眠時の神経シナプスにおける刈り込みによる単純化

単純化を行わなければ自由エネルギーは最小にならないため。



この理論において

感覚(視覚)とその認知、またそれに対する動作による補完が説明できる。

感覚のみならず、運動についても同じプロセスによって説明できる。

この理論を使って

統合失調症の幻覚や幻聴また無動といった症状、自閉症の一部の症状(知覚過敏性)を説明できる。


ーーー

痛みの増強もしくはオピオイドによる中毒作用もこの理論において説明できるのか

プラセボ効果が存在する理由は説明できそうだ。

麻酔による意識の消失において、シナプスの刈り込みは行われているのか。

 もし行われていないとしたら、その差部分にシナプス刈り込みの制御機構があるか

 もし行われているとしたら、麻酔による思考の単純化は可能であるのか。


ーーー

統合失調症や自閉症といった精神疾患の症状の説明ができるということだが、

せん妄といった一過性の錯乱、もしくは加齢にともなう認知機能低下も説明ができるのか

(認知機能の低下は説明ができそう)


Audibleを使って読んで(聞いて)みたが、やはり数式がでてくる本は

紙媒体でよまないと限界がある。

そうだとしても、聞くことで概念理解ができるほど、この本は自由エネルギー理論についてわかりやすくかみ砕いて説明してくれている。


2022/11/06

The constructal law of design and evolution in nature


The constructal law of design and evolution in nature


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2871904/


有限の流動系が時間の流れの中で存続するためには、

その流動系の配置は、流動抵抗を低減するように進化しなければならない


2022/10/30

地に足をつけるものと

日本に帰国してから、活字に飢えていたのか、色々と読みあさっている。

日本の携帯番号を復活させたら、雑誌読み放題の特典がついてきたので、

雑多な雑誌から、文庫本まで。仕事関連の本も。


別に日米や世界情勢に詳しいわけではないが、アメリカにいると、民主主義国家の限界を感じずにはいられなかった。そんなわけで、今後の民主主義がどうなるのか、国はどうあるのが良いのかな...

「22世紀の民主主義」「文明が衰亡するとき」という2冊を読んでみた。

「22世紀の民主主義」は成田悠輔氏という、今注目されている若手研究者の本。

ネット時代だからこそ、そして学歴・権威崇拝の強い日本だからこそ出てきた研究者。

いわゆる本当に頭の良い人なのだが、情に薄くザッカーバーグやイーロンマスク氏と同じ匂いを感じる。そんな人が民主主義の限界について解く。

民主主義のリスクとしての衆愚政治を、情弱(情報弱者)とか、過激な言葉を使って書いている。政治はアルゴリズムになれば、今よりはましになるというのが主張。読み物としては面白かったが、現実味はどこまであるだろうか。グローバル経済の中で、経済が最も重要とされる世界の中で、アルゴリズムが「日本はアメリカに併合された方がうまくいく」と結論にいたったときに、そうですかと受け入れられるのだろうか。

すでに円の限界から、環太平洋(韓国、オーストリアなど)と結んで、EUと同じような通貨単位を作った方が良いという動きもあるようだが、国という単位は合目的な理由だけでは動いていない複雑形であることを考えると、アルゴリズムだけで国家がうまくいくようにも思えない。

その辺りのことも著者はわかっておられるようで、人間の本質的な弱さとどう向き合っていくのか、それをなしに理想の民主主義を描いても行先は暗いと。

かくもおろかで、はかなき人類。


「文明が衰亡するとき」は高坂正堯氏の本。読み応えがあった。

資源を持たない通称国家として、日本の身の振り方をベネチアと比較している。なぜベネチアが長期に渡って繁栄を続けてこれたのか。そしてそんなベネチアもなぜ滅びたのか。そしてアメリカという国の衰亡と今後について。

一部抜粋

「ローマの衰亡において、ローマのエリートの思想が進歩的楽天観から、禁欲的厭世観と変わっていった」

「通称国家は他人に依存している存在であるだけに脆弱性を持っている」

「(衰亡に際して)ヴェネツィアは変化を恐れず変化についていく能力の衰えを示すようになった」

「(アメリカにおいて)自信に満ちた秀才エリートが使命感を持つとき、それは教条主義となるやすい」


著者によると、ヴェネツィア、日本のような資源の乏しい国は地に足がついていない国の代表である。自国だけで完結できる産業がない以上、地に足がつけられない。だからこそ、臨機応変であることが生き残る道だということなのだが、個人でも組織でも国でも、成功体験は変化を嫌う方向に働く。その結果結局は柔軟性が失われていく。

常に危機感を持ち続けることの難しさ。


衰亡論や民主主義の破綻といったややネガティブなタイトルや思想は、それ自体が危機感を維持する仕掛けでもある。と同時に厭世感を生むリスクもある。そうした厭世観は衰亡を助長する。危機を乗り越えようとする体力が組織や国家に備わっているか。

エリートと呼ばれる国を動かしていく人々がその舵取りをうまくしていくことができるか。人間の寿命やフルに働く年数が短く有限である以上、そういった人が継続して出現し、かつ活躍できる土台、体力、そういったものを作るにはどうすれば良いのか、

別に国家を対象に考えるわけではないが、自分の所属する組織において、どのようにしていくのが良いのかを考えてしまう。


地に足がついていないものならではの生き方の模索。


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日本に帰ってきて、ニュースでやたら「丁寧な」という言葉が連発されていることに驚いた。「丁寧な対応」「丁寧な説明」。なんでも丁寧を付けたらやわらかくなり受け入れやすくなるという印象からそうしているのだろうか。

いかにも日本らしいなぁと思う。そもそも丁寧なという言葉の適切な訳が見当たらない。Carefully? 




2020/05/06

相分離生物学





別の本を買おうとしたら、アマゾンがおすすめしてくれたので、へぇと思って買った
本だったのだが、面白かった。

この発見は生物学のパラダイムシフトを起こすかもしれない。

この液ー液相分離を初めて発見した研究者は数年以内にノーベル賞を取るかもしれない。

そして私がこれから取り組もうとしている内容にも影響を与えてくれる。


熱い分野だと感じるとともに、なぜ今までこれに気づかなかったのか!という研究手法の制限からくる研究者の思い込みがいかに危険かという点も勉強になった。

2020/05/04

生命科学の実験デザイン




















https://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0950-8.html

もう一度実験デザインについて学び直そうと思って買った本。
独特の日本語を使っているところがとっつきにくいが(反復体とか)、

素晴らしい本だと思った。 一生ものの本かもしれない。

例題は全く公衆衛生的ではない。細胞生物学的でもなく、
どちらかというと、生態学とか自然科学よりな例題が多い。

2019/07/25

実証分析入門




著者は法学分野でのデータ分析を主にしている先生の様であるが、

因果とは何かについて考えさせてくれる。

初学者が陥りそうな R2を高めるために多変量にたくさん変数を
入れてみることに意味があまりないこととか、いろいろ面白い。





2019/03/17

兵法 三十六計


大学院での授業があり、4月から新しいことが始まるのだとしみじみ。

兵法 三十六計を読み終えた。(原文ではなく、総説)

孫子の兵法が、1つ1つの戦争というよりは、いかに自国を維持もしくは拡大するか、という長期的な視点で書かれているのに対して、
三十六計はもっと智謀策略の方法論的な話である。

面白かったが、孫子の兵法以上に「これは誤用すると、『策士策に溺れる』というやつだな」と感じた。

そもそも、三十六計あるが、全てはEmpilicalなものであり、Statisticなものではない。
三十六計の中には、窮鼠猫を嚙むから敵は追い詰めてはならず、逃げ道を作っておけという教訓があるかと思えば、将来の復讐されるのを防ぐために根絶やしにした方がいいという教訓があり、結局は状況に応じて(現実を見極めて)使い分ける事しかないのだ。

因子分析で、この36計の背景にある因子を探ることができるんではなかろうか
と考えたり。

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時間を見つけて、中国古典を読み続けようとは思うのだが、
次はもう少し穏やかな菜根譚にしようかな。

2019/03/10

The art of war


移動中などで細切れではあったが、孫子の兵法を読み終えた。

新訂-孫子-岩波文庫-金谷-治


塩野七海さんという小説家の作品が好きで、若い頃にマキャベリの君主論を読んだことが
あったが、それを思い出した。
戦争をどうするかという話と、統治をどうするかという話は少し論点が違うかもしれないが、「敵、味方を含めて人はどのようにしたら動くのか」という点を論じている点は似ているのかもしれない。

日々の仕事に役立つかは別の話だが、おもしろかった。

2019/02/12

Analects





40を超えて、論語を読むと、こんなにも身に沁みるのかと思った。

とはいえど、現代語訳であり、漢文そのものを読む能力はないのだが。


人生、一生修養。



現代語訳-論語-ちくま新書-齋藤-孝


英語でも聞ける。
https://www.youtube.com/watch?v=sBgXRE7HgZ0

2016/12/05

心筋保護法テキストブック



今年 2016年の2月に出された本。勉強になった。
虚血再灌流障害の生理学的機序とか、心筋保護の歴史が特に。


今では stone heartなんて本当にみない。
(stone heartの定義は不可逆的心筋の機能不全であり、気絶心筋のようにカテコラミンで改善するものではない)
でも心筋保護がうまくはいっていなくて、
ポンプ離脱になったらと考えると恐ろしい。

2016/05/01

Books R statistics



今まで読んだ統計の本は、何かしらの論文に使われている統計手法を解説していくという類のものだったが、これは、データがあり、それを元に統計手法を実際のRで使えるよう説明されている。
いわゆるあんちょこ本ではあるが、今の私には非常に勉強になった。

統計ソフトとしてRは素晴らしいと思っているので(ほかのソフトを使えないだけだが)
こういう本を足がかりにもっと学びたい。


2013/04/21

オピオイド 基礎を知って臨床で使いこなす



  • 出版社:
     克誠堂出版 (2012/06)
  • ISBN-10:
     4771903964
  • ISBN-13:
     978-4771903968
  • 発売日:
     2012/06



なぜセボフルランのMACはおおよそ1.7 なのに いつも使用するのは 1.0〜1.5なのか?
麻薬(オピオイド)と鎮静薬(吸入麻酔および静脈麻酔)の相互作用にはどういったものがあるのか?

といった疑問に明確に答えてくれた。






2013/03/12

トルコのもう一つの顔


「トルコのもう一つの顔」
小島剛一著 中公新書 1009

一気に読んでしまった。

トルコ、クルド人、民族問題、日本では概念としては知っていても実感しにくい。
しかし、現実には存在する。
知らないことは、「存在しないこと」になってしまいがちである。
そして、次第に「知りたくないこと」が「存在しないこと」としてしまう。

いずれ、続編も読みたい。