2020/05/28

Thiamine & Oxythiamine



The Uremic Toxin Oxythiamine Causes Functional Thiamine Deficiency in End-Stage Renal Disease by Inhibiting Transketolase Activity
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27198804/
Kidney Int. 2016 Aug;90(2):396-403.  doi: 10.1016/j.kint.2016.03.010.  Epub 2016 May 16.


Thiamineも奥が深いな。

Thiamineはピルビン酸デヒドロゲナーゼとトランスケトラーゼ(ペントースリン酸回路の酵素)の補酵素として働く、透析患者ではこのトランスケトラーゼが阻害されていることが報告されており、その原因を探った実験。

実際の透析患者からの採血(n=48)を分析した。 

1) Thiamine濃度
なんとplasma thiamineは透析患者で高いという結果に、またoxythiamine(トランスケトラーゼの阻害作用を持つ)の濃度もhealth controlと比較して高かった。 

2) oxythiamine濃度が高いことがトランスケトラーゼの原因であると考えられるか?
しかし、この研究によると、oxythiamineは人体の中ではありえない環境でしか(PH 3以下、100度以上)thiamineからは変換されないということがわかっている。つまり摂取したthiamineがoxythiamineに変わったわけではなく、食物が酸や熱によって調理されている時に変換され、それを摂取し、それが体内に残ることで増加すると考えられる。

3) oxythamine とトランスケトラーゼ阻害は相関しているか?
していない。この理由としてoxythamineは透析で取り除かれるが、oxythamineがリン酸化されたOTPPは赤血球内にあるため、取り除かれない。このため、測定した濃度と阻害の程度はあまり相関しなかった。

結論としては、透析患者にthiamineを投与すると、oxithiamineによるトランスケトラーゼの阻害を上回る作用を示してくれるのではないか? と。





2020/05/17

Couples living far apart


Married but Living Far Apart

https://www.nytimes.com/2020/05/16/fashion/weddings/coronavirus-some-couples-reconsider-living-apart.html

まさに自分のことを書かれているようなNYTの記事。

広い米国では結婚しても10年以上離れて暮らすカップルも多いそう。

しかし今回のコロナウイルスの蔓延により、一緒に暮らすことを考える人も増えた。

・疾病罹患の不安(いつ死ぬかわからない)

・在宅勤務という職務形態(仕事場と近いところに住む必要がなくなった)

ということらしい。



海外で働くほとんどの人から、「家族と一緒にいった方がいい」と

お勧め(忠告に近い)されるのだが、私の主人は絶対に一緒には来てくれないし、

まあしょうがない。



2020/05/08

Hormesis (link)


古いけど読んでみたい論文

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6695170


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28944077


Hormesis is the phenomenon and estimation that molecules in the low concentration have different behavior in the cell compared to that of the high concentration. For example, Fe and Cu are dangerous substances creating antioxidant chemicals in the cell, but a low dose of those metals are mandatory for our body.
The threshold model, prevailing in toxicology, would be replaced by the hormesis theory if the mechanism of hormesis was proven molecularly.
Pre- and postconditioning were also explained by this theory.

I guess that it is the same concept of protein droplet or fifth folding and signaling system...


日本語でホルミシスと検索をかけるといかにも怪しい、インチキ臭いサイトや説明しか見当たらない。悲しいことだ。

2020/05/06

相分離生物学





別の本を買おうとしたら、アマゾンがおすすめしてくれたので、へぇと思って買った
本だったのだが、面白かった。

この発見は生物学のパラダイムシフトを起こすかもしれない。

この液ー液相分離を初めて発見した研究者は数年以内にノーベル賞を取るかもしれない。

そして私がこれから取り組もうとしている内容にも影響を与えてくれる。


熱い分野だと感じるとともに、なぜ今までこれに気づかなかったのか!という研究手法の制限からくる研究者の思い込みがいかに危険かという点も勉強になった。

Contact tracing is not necessary, is it?


We don't live in a perfect world but try to change better.


接触者追跡調査は意味がないのでは?という市中の疑問に対してNew York Timesに面白い記事が載っていた。完全に反駁していないように感じるところもあるが、追跡調査は必要なのだ。CDCの元ディレクターによるOpinion

https://www.nytimes.com/2020/05/05/opinion/coronavirus-contact-tracing.html


接触者追跡調査、Contact tracing は無意味であるという理由は4つ
1) 患者数がここまで増加したら無意味である。
2) 追跡調査は時間がかかり、患者を見つけるのには向いていない。
3) 無症状の患者が多いと無意味である
4) 人手と時間がかかるのに、公衆衛生部門にある資源は限られている(他の対策に費やすべき)

1) 患者数がここまで増加したら無意味である。
患者が増加したとしてもこれ以上増やさないためには追跡調査が必要である。
実際感染した患者の80%は二次感染を起こしていないが、20%の患者が拡散させている。この拡散している患者の行動を把握することでこれ以上の拡散を防ぐことができる。

2) 追跡調査は時間がかかり、患者を見つけるのには向いていない。
確かに追跡調査には時間がかかり、新規患者を見つけることに特化した方法ではない。しかし新たな感染を防ぐ、もしくは感染のリスクが高い人物を同定することでいち早く患者を同定することができる。

3) 無症状の患者が多いと無意味である
無症状の患者が多いことだけで接触者追跡調査が無意味ということにはならない。
検査体制の充実と並行して接触者追跡調査を行うことでこのような無症状患者が疾患を拡散させることを予防することができる。

4) 人手と時間がかかるのに、公衆衛生部門にある資源は限られている
追跡調査は確かに時間と人件費がかかる。というのも追跡調査は決して患者を犯罪者のように追跡するものではなく、むしろ患者とその周囲の人を守る目的があるのだが、それを理解してもらい、患者から信頼をえるためには医学的な知識やコミュニケーション技術が必要である。そしてだからこそ、資源が限られていたとしても追跡調査は患者と地域を守るために必要である。(他の方法より患者を守る方法として優れていると)


資源が潤沢にあれば追跡調査ももちろん行うべきなのだが、優先順位として他の対策(検査拡充や行動制限など)と競合する場合に追跡調査をとるべきとまでの強い根拠はない。同時並行が可能であれば、追跡調査は行うべきであるというのが骨子。資源が限られている中で何を優先させるかというのは難しい。


日本は追跡調査にとても重点をおいた政策をとっている。今回のアウトブレイク以前に麻疹など多くの感染症においてこの追跡調査、隔離がうまく機能していた歴史がある。追跡調査がOutbreakにどの程度寄与しているのかを比較することは重要なテーマかもしれない。





2020/05/04

生命科学の実験デザイン




















https://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0950-8.html

もう一度実験デザインについて学び直そうと思って買った本。
独特の日本語を使っているところがとっつきにくいが(反復体とか)、

素晴らしい本だと思った。 一生ものの本かもしれない。

例題は全く公衆衛生的ではない。細胞生物学的でもなく、
どちらかというと、生態学とか自然科学よりな例題が多い。

Miss Sloane


GW 基礎の論文も読んではいるものの、なかなかまとまらない。
(基礎の論文は本当に1つでこれというものではなく、集合体で結論が出るようなものだ)

公衆衛生の授業で紹介されたMiss Sloaneという映画をみた。政治に対するロビー活動であるとか、アドボカシーという概念が日本では普及していないが、アメリカではこんな感じですよという紹介。

あらすじとしては、敏腕のロビイストが銃規制の修正第2法を議会で通すためにロビー活動において自分の人生をかけるというサスペンス要素を含んだ映画。

制作費用が興行収入を上回っており映画自体の評価はあまり振るわなかったようだ。
それもロビー活動のせいかもしれない(現実世界の)

この映画を見ての感想は、私はこの主人公の女性に共感するが、
この人は世間では受け入れられないのでは?というものだ。
もしこういった人物が世間で評価されるのではれば、この世界はもっと違うはずである。

実際、いろいろなレビューを読んでみると、主人公に共感できない、主人公のような女が嫌いなので映画が面白くなかったというコメントもあった。どの程度の人がそのように思ったかは不明だが、この主人公のような仕事の仕方ややり方に嫌悪感を持つ人はいるだろう。

また、主人公が犯罪歴を持つほどにまで自分をリスクにさらし、やりたかったことは何か? 銃規制に強い思い入れがあったとも思えない(そうなのかもしれないが、そういう風には書かれていない)。銃規制の修正第2法が通ることは銃規制において小さな一歩に過ぎず、それによってアメリカの銃社会が大きく変わるとも思えない。ロビー活動に勝つこと(弁護士の勝敗にも似ている)に大きな情熱を持っていたとも思えない。もちろんそれによる報酬に執着していた訳でもない。
なぜ彼女はそこまでして(自分や周りを危険にさらしてまで)、このロビー活動を行なったのか。

それに共感できないと、この映画を見ても、この人何のためにこんなことやっているの?と感じる。釈然とない、もやっとした思いが消えない。
ストーリー自体は完結して楽しめるけど。

この映画を評した他の方のコメントの中で彼女の原動力は「腐敗した政治への怒り」と書いていたものがあった。そうかもしれない。が、そんなところに怒りを持っている人間はそもそもロビー活動家にはならなさそうだし、彼女にそんな正義感があったとも思えない。

彼女は、ロビー活動を通して人々の美辞麗句や長いものに巻かれる弱さに対して怒っていたのではないかと。人間のエゴや利権への執着、その他諸々。それはどの党というわけではなく、全ての人において、そして自分にもある弱さに対しても。

こういう主人公が好きだが、こんな人間ばかりでは世の中は暗くなってしまう。


変な女性という点では、「ピアニスト」という映画に出てくる主人公のピアニストも
変である。
https://eiga.com/movie/1597/

この作品は2001年のカンヌでグランプリをとったということなのだが、
中年ピアニストの恋愛を描いた映画である。もどかしくも苦しい。

観た時はこんなストーリーの映画の発想はすごいなと思ったが、
年齢を重ねた女の中にはこういう側面があり、社会的には嫌われると
いう点では、Miss Sloaneと似ているのかもしれない。


こういう作品に関心を持つほど、私もおばさんになったのだ。


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それにしても、今のコロナに関する社会の考え方や大統領選挙を見ていても、アメリカという国の多様性に驚く。それぞれの国の政府が何に最も重きをおいているか、今回の世界的なパンデミックはその政策の違いを浮き彫りにしている。