2019/02/28

重症患者における挿管時のマスク換気の有用性



今週のNEJMに面白そうな記事が載っていた

重症患者における挿管時のマスク換気の有用性について

2019/02/25

peripheral perfusion indexに関わる論文 あれこれ



PPIのカットオフ値を決定した論文
Use of a peripheral perfusion index derived from the pulse oximetry signal as a noninvasive indicator of perfusion.
Crit Care Med. 2002 Jun;30(6):1210-3.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12072670


手術中の体位によってperfusion indexがどの程度変化するかをみた論文
The effect of patient positions on perfusion index.
BMC Anesthesiol. 2018 Aug 17;18(1):111.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30115011

どうなるのかなと思ったら、トレンデンブルク体位だとPPIは高くなり、座位だとPPIは低くなるらしい。健康なボランティアによる研究結果。
面白いな。

末梢循環灌流モニタリング Review


末梢循環灌流モニタリングについて。
Monitoring peripheral perfusion in critically ill patients at the bedside.
Curr Opin Crit Care. 2012 Jun;18(3):273-9.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22517401

末梢循環灌流は集中治療における循環障害のモニタリングとして重要である。
しかし、"末梢(peripheral)"循環が"体(systemic)"循環を本当に反映しているのかについては議論があり、単に末梢血管の血管運動神経緊張度(vasomotor tone)を表しているに過ぎないとの主張もある。
体循環が維持されていても、末梢循環や臓器の循環不良が持続することもあり、その評価がイコールではないことは留意すべきである。

ここにいくつかの末梢循環モニタ方法をreviewする。

1) 皮膚の触診 cold/warm

2) CRT capillary refill time  4.5秒以上で循環障害

3) Mottle score  4-5で循環不全

なんやこれ・・・ 聞いたことないわと思ったら斑状皮膚(いわゆるリベド)のことで、この範囲をスコアリングしたものをMottling scoreというらしい。
http://www.scancrit.com/2014/04/19/mottling-score/


4) 温度差 前腕 vs finger  4度以上の乖離

5) 温度差 中枢温 vs つま先   7度以上の乖離

6) NIRO/ INVOS   < 70-75%

7) PPI   cut off 1.4%


2019/02/24

敗血症における循環不良のモニタリング CRT vs Lactate



今週のJAMAの論文
Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock
The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2724361


南米の5カ国からの多国多施設のRCT
敗血症患者の循環障害を判断、また蘇生治療を行うためにLactateは指標としてはあまりよくないのではないかという疑問が数々の研究から明らかとなってきた(Lactateは嫌気性代謝のみではなく、代謝亢進と言ったそのほかの理由でも上昇するため)。
そこで、1981年に考案されたcapillary refill timeを評価基準として、輸液やカテコラミンを投与した方が、予後がよくなるのではないか?という仮説のもの。

確かにcapillary refill timeはなんの機械もいらないし、最も簡便に末梢循環を評価できる方法だ。

<対象と評価>
424人の重症敗血症患者を対象に、capillary refill timeを指標とした蘇生治療と、Lactateを指標とした蘇生治療で28日死亡率に差が出るのかを評価した。
2ndly outcomeは ICU入室後72時間の臓器障害の程度(SOFAスコア)、90日死亡とした。

<方法>
CRTおよびLactateを指標としたプロトコルについては、CRTは簡単なので、30分に1回測定。10秒間指を圧迫し、その後圧迫前と同じ色調に戻るまでの時間が3秒以上であれば循環障害と判断。lactateの評価は2時間ごとに実施、正常(正常値が書いてないんだが)値に戻るか、もしくは前値の20%減少させるまで1) Fluid challangeを行う 2) NADを投与し、MAP 80-85を保つ。3)それでもゴールに達しなければDOB or ミルリノンを使用する。

<結果>
28日死亡は43.3% vs 34.9% (Lactate vs CRT) で差は認めなかった。
さらに詳細な結果を見ると、
入院日数はCRT群で22.9 vs Lactate群で18.3 p = 0.05
ICU入院後8時間での輸液量はLactate群の方が多かった。


lactateも一つの指標となるが、乳酸値高値はイコール循環障害ではない。
しかしCRTも所詮は四肢末梢の循環をみているだけで、臓器(特に肝臓、腎臓、腸管)の循環を反映しているかというとそうでもないきがする。

しかし、敗血症になった場合には生体は重要臓器への血流を増加させ、末梢(特に骨格筋など)に対する循環を下げることで生命を維持しようとするのも事実である。
と考えると、末梢(というか骨格筋?)への循環が保たれていれば、それはすなわち重要臓器への循環もOKであろうということになろう。

ただし、器質的な原因での循環不全(血栓がとんだとか、コンパートメント症候群で圧迫されているとか)は末梢循環をみているだけではなかなか判別できない。



手術室でもLactateが測れるようにならないかな....(切実に願う)

2019/02/23

英語論文のAccept


1年くらいほったらかしにして、
その後、「やらないの?」と上司に励まされ(怒られ)、
submitしたものの、4回くらいreviseを繰り返して6ヶ月、
論文がやっと受領された...

初めての英語論文でわかったことは、
論文を書くのは本当に大変だということ。

初めの草稿を完成させてsubmitするのは、論文が受領されるまでのプロセスで
いうと、3合目あたりでしかないということ。

=================
以下、次の時のためのメモ

Acceptされると、出版会社(今回はSpringer)から、「お金出せばこういうサービスが」
という広告が来る。 

基本的に何も出さなかったが、
紙ベースの論文冊子 20部から、€50くらい。
ポスター      
などを作ってくれるサービスがあるらしい。
初めて知った。

2019/02/18

COPD患者には区域麻酔の方がいい?(できれば)



Regional versus general anesthesia in surgical patients with chronic obstructive pulmonary disease: does avoiding general anesthesia reduce the risk of postoperative complications?
Anesth Analg. 2015 Jun;120(6):1405-12.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25526396

COPDのある患者を対象として、全身麻酔で手術を受けた2500人と区域麻酔を受けた患者2500についての比較。術後の肺合併症率、再挿管率、人工呼吸器依存延長(?区域麻酔群ではそもそも挿管していないのに延長?)について比較した。

肺合併症率  3.3 vs 2.3  95%CI  [0.09, 1.88]
人工呼吸器依存延長 2.1 vs 0.9  95%CI  [0.51, 1.84]
複合合併症 15.4 vs 12.6  95%CI [0.93, 4.67]

そして30日死亡率には差がなかったと。

あれ、95%CIが全て1をまたいでいるけど、これっていいのだろうか。
どれも差が非常に微妙である。

結論としては区域麻酔の方が良いということなのだが、区域麻酔が絶対的に良いと言うことはできないような...

=====

区域麻酔併用か、全身麻酔単独か?のメタアナリシス
Neuraxial and Combined Neuraxial/General Anesthesia Compared to General Anesthesia for Major Truncal and Lower Limb Surgery: A Systematic Review and Meta-analysis.
Anesth Analg. 2017 Dec;125(6):1931-1945.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28537970


2019/02/17

血小板からのセロトニンが心筋障害を悪化させる



Platelet Serotonin Aggravates Myocardial Ischemia/Reperfusion Injury via Neutrophil Degranulation
Circulation. 2018;139:918–931
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.118.033942


血小板の中にセロトニンって含まれているんだ。と教科書を見直してみたら、確かに。

2019/02/16

重炭酸を重症アシデミアで投与すべきか?



Lancetから。
Sodium bicarbonate therapy for patients with severe metabolic acidaemia in the intensive care unit (BICAR-ICU): a multicentre, open-label, randomised controlled, phase 3 trial.
Lancet. 2018 Jul 7;392(10141):31-40.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29910040


重症アシデミア(pH < 7.2)で重炭酸を投与するというのは長年されていたことではあるが、数年前から、それって意味なくない?という風潮になってきた。
その根拠となったのが、後ろ向き研究で重炭酸を投与した群での予後が全く変わらず、カテコラミンの使用量も全く変わらなかったという結果であり、これを受けて、最新の敗血症治療戦略SSCG2016でも、重炭酸をしようすべきpHレベルはよくわからないとなっている。また、重炭酸を投与すると、細胞内アシドーシス(CO2の貯留による)と、低Ca血症を招くこと、循環器系への効果が何もないことも、重炭酸に対する根強い反対がある理由である。
そうは言っても、早期にpHを是正することで、腎臓に対する保護効果はあるのではないか?透析を遅らせることができるのではないかと考え、前向きのRCTを組んだのが本研究である。

仮説は、「早期に重炭酸投与は重症代謝性アシデミアのある患者の28日死亡率をへらす」

フランスの26施設のICUを対象にサンプル数を400人と見積もって(28日死亡率を45% vs 30%で計算)重炭酸投与群とコントロール群に分けて評価した。

primary outcomeは28日死亡、7日目の1以上の臓器障害の有無
重炭酸投与群ではpHが7.3以上になるように4.2%重炭酸を投与した(1日投与量の上限は1000ml)

結果は、primary outcomeには差を認めなかった。腎代替療法の導入は重炭酸投与群で少なかった。
またサブグループ解析では、腎機能障害AKIN 2-3の群において、腎代替療法がへり、また腎代替療法の導入時期も遅らせることができた。


うーん。腎臓を守ることを考えて投与するのはありなのかもしれない。

姫路赤十字病院のアシドーシスおよびAGギャップ、BEあたりの話がまとまっていて
とても勉強になった。
http://himeji.jrc.or.jp/category/diagnosis/naika/pdf/2015/20150716.pdf


=======

じゃあ心臓血管外科の手術後はどうなんだという話。

A perioperative infusion of sodium bicarbonate does not improve renal function in cardiac surgery patients: a prospective observational cohort study.
Crit Care. 2012 Aug 16;16(4):R156. doi: 10.1186/cc11476.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22898367

心臓血管外科手術に関連したAKIに対して、周術期の重炭酸は意味がないという結論の論文。
これが2012年に出たのに対して、2015年に疑問視する論文が出ている。

Does sodium bicarbonate infusion really have no effect on the incidence of acute kidney injury after cardiac surgery? A prospective observational trial
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4470026/

AKIになるリスクの低い患者に対しては、重炭酸が効果があると。なんかちょっと疑問。。。ハイリスクの患者で効果があって然るべきだと思うのだが、まだ中身を読んでないのでなんとも言えない。

この分野でもRCTが進むといいな。というか自分でもやりたいな....



Fluid volume in abdominal laparoscopic surgery


消化器外科の輸液について 特に腹腔鏡下肝切について

SVVのカットオフを20程度として、輸液を絞るのが良い(合併症も増えないし、術野としてもプリングルが行いやすい)との結論が多い。

SVV 13以上で輸液を行うというのが定説となっているが、13-20での輸液反応性については個人差があるようだ


Asian J Endosc Surg. 2015 May;8(2):164-70. doi: 10.1111/ases.12158. Epub 2014 Dec 3.
Intraoperative circulatory management using the FloTrac™ system in laparoscopic liver resection.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25470208


Ann Surg Oncol. 2014 Feb;21(2):473-8. doi: 10.1245/s10434-013-3323-9. Epub 2013 Oct 23.
Stroke volume variation in hepatic resection: a replacement for standard central venous pressure monitoring.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24150192


2019/02/12

Analects





40を超えて、論語を読むと、こんなにも身に沁みるのかと思った。

とはいえど、現代語訳であり、漢文そのものを読む能力はないのだが。


人生、一生修養。



現代語訳-論語-ちくま新書-齋藤-孝


英語でも聞ける。
https://www.youtube.com/watch?v=sBgXRE7HgZ0