2019/02/24

敗血症における循環不良のモニタリング CRT vs Lactate



今週のJAMAの論文
Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock
The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2724361


南米の5カ国からの多国多施設のRCT
敗血症患者の循環障害を判断、また蘇生治療を行うためにLactateは指標としてはあまりよくないのではないかという疑問が数々の研究から明らかとなってきた(Lactateは嫌気性代謝のみではなく、代謝亢進と言ったそのほかの理由でも上昇するため)。
そこで、1981年に考案されたcapillary refill timeを評価基準として、輸液やカテコラミンを投与した方が、予後がよくなるのではないか?という仮説のもの。

確かにcapillary refill timeはなんの機械もいらないし、最も簡便に末梢循環を評価できる方法だ。

<対象と評価>
424人の重症敗血症患者を対象に、capillary refill timeを指標とした蘇生治療と、Lactateを指標とした蘇生治療で28日死亡率に差が出るのかを評価した。
2ndly outcomeは ICU入室後72時間の臓器障害の程度(SOFAスコア)、90日死亡とした。

<方法>
CRTおよびLactateを指標としたプロトコルについては、CRTは簡単なので、30分に1回測定。10秒間指を圧迫し、その後圧迫前と同じ色調に戻るまでの時間が3秒以上であれば循環障害と判断。lactateの評価は2時間ごとに実施、正常(正常値が書いてないんだが)値に戻るか、もしくは前値の20%減少させるまで1) Fluid challangeを行う 2) NADを投与し、MAP 80-85を保つ。3)それでもゴールに達しなければDOB or ミルリノンを使用する。

<結果>
28日死亡は43.3% vs 34.9% (Lactate vs CRT) で差は認めなかった。
さらに詳細な結果を見ると、
入院日数はCRT群で22.9 vs Lactate群で18.3 p = 0.05
ICU入院後8時間での輸液量はLactate群の方が多かった。


lactateも一つの指標となるが、乳酸値高値はイコール循環障害ではない。
しかしCRTも所詮は四肢末梢の循環をみているだけで、臓器(特に肝臓、腎臓、腸管)の循環を反映しているかというとそうでもないきがする。

しかし、敗血症になった場合には生体は重要臓器への血流を増加させ、末梢(特に骨格筋など)に対する循環を下げることで生命を維持しようとするのも事実である。
と考えると、末梢(というか骨格筋?)への循環が保たれていれば、それはすなわち重要臓器への循環もOKであろうということになろう。

ただし、器質的な原因での循環不全(血栓がとんだとか、コンパートメント症候群で圧迫されているとか)は末梢循環をみているだけではなかなか判別できない。



手術室でもLactateが測れるようにならないかな....(切実に願う)