2013/12/31

Management of SAH


Critical care management of patients following aneurysmal subarachnoid hemorrhage: recommendations from the Neurocritical Care Society's Multidisciplinary Consensus Conference.
Neurocrit Care. 2011 Sep;15(2):211-40. doi: 10.1007/s12028-011-9605-9.

SAHの治療管理についてはこの10年でかなりかわってきたらしい。
ガイドラインではないが、学会からのrecommendationが2011年にでていた。
ポイントは、vasospasmをいかに予防するか(というか、多かれ少なかれspasmは起きるがそれをischemiaにしないかが重要)と。
DCI(delayed cerebral ischemia 遅発性脳梗塞)

.
【再出血の予防管理】
・動脈瘤の治療は再出血をさけるために早期に行うべき
・治療前の抗線溶療法は短期間であれば考慮してもよい
・抗線溶療法を長期間(48時間以上)続けることは再出血のリスクは減らすが副作用(脳梗塞)のリスクが増大するため、さけるべきである。
・血栓症のリスクの高い患者では抗線溶療法は禁忌である。
・抗線溶療法をおこなう患者ではDVTをスクリーニングすべきである。
・抗線溶療法は動脈瘤の血管内治療を行う2時間前には中止すべきである。
・CTAやDSAが使える場合はCTAを優先的に撮影したほうがよい。
・極度の高血圧は動脈瘤の治療前には下げるベきであるが、平均血圧 < 110であれば治療の必要はない。低血圧はさけるべきである。

【けいれんの予防】
・SAHでは1-7%でけいれんがおきる。
・ルーチンでの抗痙攣薬の投与は推奨されない。(とくにフェニトインはよくない)
・もし抗痙攣薬を使用するとすれば3-7日の短期間が推奨される。
・痙攣をおこしてしまった患者では抗痙攣薬を状況に応じて続けるべきである。
その後痙攣がおこらなければ、3-6ヶ月で中止するべきである。
・持続的脳波の測定は神経学的改善のない重症SAHで考慮してもよい。(全例に行う意味はない)

【心肺の合併症と予防】
・SAHでは35%で不整脈がおこり、トロポニンTが上昇する。
・たこつぼ型心筋症、肺水腫がおきやすく、注意深いモニタリングを行う必要がある。
・COのモニタリングは役に立つかもしれない。
・肺水腫が起きた場合は過剰な輸液をさけてeuvolemiaに保つ。利尿薬の使用も検討。

【循環モニタリング】
・volumeのモニタリングは重要である。
・血管内volumeを評価することが第一となるが、特にディバイスとして推奨するものはない。
・volumeのモニタリング目的のみにCV挿入、SG挿入することは推奨されない

【循環管理】
・血管内volumeはeuvolemiaに保つべきである。脱水予防のための予防的輸液は行うべきではない。
・等張晶質液が望ましい。
・輸液を行ってもバランスがマイナスになる場合はフルドロコルチゾン、ハイドロコルチゾンを考慮する。

【血糖コントロール】
・高血糖、低血糖ともにvasospasmのリスクを上げる。
・血糖値は 80-200の間で調節する。

【体温管理】
・高熱は脳の酸素需要を増加させるため、体温のモニタリングを頻回におこなうべきである。
・DCIのリスクが高い時期にはとくに体温のモニタリングを行うべきである。虚血のリスクと相関する。
・アセトアミノフェンやNSAIDsは効果は弱いが、1st lineの薬剤として控除すべき。
・体表のクーリング、血管内冷却は体温が下がらない場合は行うべきである。
・冷却時にはシバリングに注意すべきである。

【DVTの予防】
・すべてSAH患者でDVTの予防治療は行われるべきである。
・連続圧迫装置はすべての患者で使用されるべきである。
・予防目的のヘパリン、低分子ヘパリンの使用は未治療動脈瘤や手術が予定されている患者ではさけるべきである。
・ヘパリンは手術後24時間から開始できる。
・ヘパリンと、低分子ヘパリンは血管内治療の前後24時間以内は使用すべきではない。
・DVT予防薬の投与期間は決まっていないが、患者のADLをもとに判断する。

【スタチン】
・MI、脳卒中を起こした患者がもともとスタチンを飲んでいた場合は飲み続けるべきである。
・スタチンを飲んでいなかった患者でスタチンを開始することが、DCIを減らすかについては、現在研究段階である。

【マグネシウム】
・高Mgにすることは勧められない。現在RCT中。
・低Mgはさけるべきである。

【DCIの予防】
・DCIの定義:LabDataや電解質等の異常では説明できない1時間以上継続する神経学的悪化。
・神経学的悪化所見を注意深くモニタリングすべきである。
・ニモジピン( 60mgを4時間ごとにpo)をSAH発症後、21日間投与するべきである。
 ところが日本では未承認。
・。。。
 (脳外科の専門的な話が続く)

【DCI発症時の循環管理】
・いままで言われていたtriple Hはそれほど効果がなく、エビデンスレベルも低い。
・euvolemiaを保つべきである。
・虚血領域の血流を保つためには生食のボーラスを考慮する。
・DCIが疑われる患者では高血圧に保つようにする。
・昇圧薬の選択についてはその薬剤のもつ特性によって使い分ける。
・ニモジピンによる低血圧が起きた場合は用量を減らして頻回投与とする。
・血圧維持が昇圧薬で改善しない場合は強心薬を考慮する。
・b2アゴニストをもつ強心薬はMAPをさげるため、より多くの昇圧薬を必要とするかもしれない。
・IABPなどの補助装置も有効かもしれない。
・流動性を改善させるための血液希釈はすべきではない。

【貧血治療】
・通常の輸血基準はSAHの患者にはあてはまらない。
・Hbは 8-10g/dLとやや高めを維持するようにする。
・DCIのリスクのある患者にはより高いHb濃度が望ましい。

【低Naの管理】
・SAH患者では低Naになりやすい。CSWもしくはSIADHのリスク高いため。
・低Naにならないように注意をはらうべき。
・低Naの治療で輸液制限は行わない。
・hydrocortisone、 fludrocortisoneはNa尿、低Naの治療として使用できる。
・やや高い食塩水(3%程度?)は低Naの治療に使用できる。

【その他】
・SAHの患者はhigh volume center(多症例を扱う施設)で治療されるべきである。
・昇圧薬に反応しない患者では視床下部の機能障害を考えるべきである。
・急性期のSAHではステロイドの高用量投与は推奨されない。



Goal-Directed Intraoperative therapy; O2ER is useful?


最適輸液についてはいろいろと論文がでていますが、古いものから。
LIDCOとか、SVでの評価はあまり結果がでていない。
O2ERはこの論文でけっこう良い評価をされているので、
もう1回くらいしっかり評価されるべきではないか。

あと、ICUでも O2ERは簡単に算出できるので毎日評価してもいいのではないか。

Goal-directed intraoperative therapy reduces morbidity and length of hospital stay in high-risk surgical patients.
Chest. 2007 Dec;132(6):1817-24. Epub 2007 Oct 9.

イタリアの多施設研究。RCT
P:ASAII以上の腹部手術をうける患者130人(189人が除外診断で除外)
I:O2ER < 27 とするように輸液(膠質液 250-1000mlを投与)、ドブタミン、輸血(
Hb > 10g/dl となるように)
C:従来の方法で平均血圧、尿量、CVPをみて判断する
O:臓器不全、在院日数、院内死亡率

O2ERはVO2/DO2 * 100 で求められる。供給された酸素のうち何%を使用したかの指標。
O2ERの計算のためにScvO2、SaO2を使用している。

VO2 = CO * (CaO2 - CvO2) 
DO2 = CO * Hb * SaO2 * 1.34

結果として、臓器不全はO2ERを使用した群で少なかった。在院日数もO2ERを使用した群で少なかったが、院内死亡率では差がなかった。
輸液(膠質液)の使用は両軍で差は認められなかった。輸血に関しても差はなかった。
ドブタミンの使用についてはO2ER群で44%と多く、コントロール群では4.5%であった。

------
現在このプロトコルを適応しようとすると、いくつかの疑問がでてくる。
第一に膠質液を使用している点。理由を「それが当施設の標準治療であるから」としている。しかし、fluid challengeで常に膠質液を使用するだろうか。術中であればいいのか…
第二にScvO2を使用しなければ、O2ERがはかれないのか?というところ。
 現在普通の腹部手術にSGを入れることはなく、ScvO2をみるためだけに入れるというのも受け入れがたい。
第三になんでHbが10以上なんだろう。これだとかなり輸血してしまうが…

しかしO2ERをみながら、「体の中に酸素届けー」と祈りながら治療するのはいいことなのかもしれない。
cvO2じゃなくてもいい方法ないかなぁ。 


2013/12/30

CHDF memo first step

今日は休みです。たくさん論文を読もう。

CHDFの治療条件の設定。
CHDFはContinuous hemodiafiltration.
血液流量(Qb)がHDが500-1000ml/minであるのに対してCHDFは80-100ml/minであり、
循環動態が不安定な場合に用いやすい。 
ろ過液量、透析流量、補液量、(除水量)の設定を変更することで、「何を」「どれだけ」除去したいかを決定できる。

・ろ過液量はQb + 1/5が上限となる。これ以上上げると膜が詰まりやすくなる。
 真のろ過量(実際にろ過されている量)はろ過液量-透析液量の差分。
・ろ過液量+透析液量を増やす設定を行うと小分子が除去できる。拡散しやすくなるため。
・ろ過液量に対して透析液量を少なくすると中分子が除去できる。圧格差が大きくなるため。

例)高K、高UAなどではろ過液量6000(最大設定値)、透析液量5500に設定(除水の設定は0-500で調節)除きやすい。
例)Mbなどの除去ではろ過液量1500、透析液量500に設定(除水は0から1000で調節。如水したくない場合は補液1000となる)すると、除きやすい。

いつCHDFを開始するか、またいつやめるかについては議論も多く、
まとまっているものではないみたいだが… 調べてみよう。




2013/12/21

Anesthesia of tracheotomy

ICUにおける気管切開の麻酔 メモ

0. 気管切開方法は1)外科的気管切開 2)経皮的気管切開 の2つに分けられる。
この2つで麻酔管理方法が異なるのでどちらを行うのか、必ず確認する。
術施行の前にかならずCTで気管、甲状腺、血管の走行を確認する。

1. 一般的に予定されている気管切開では全身麻酔で行う。局所麻酔は緊急性がある場合を除いては行わない(特にこの病院では…)
筋弛緩薬を使用するかどうかは患者状態や術者によって異なるためこれも相談。
鎮痛にはフェンタニルを使用する(4ug/kg程度。もともとフェンタが入っている場合は少なめ)
鎮静は循環動態が許せばプロポフォールで。200-300mg/hくらいでしっかり鎮静。

2. 外科的気管切開の場合
酸素100%は禁忌! 電気メスの使用により、引火、重篤な熱傷の報告があるため
http://www.hosp.med.osaka-cu.ac.jp/facility/18/doc/kikansekkai_guideline.pdf
FiO2を上げずに管理する。

3. 経皮的気管切開の場合
電気メスは使用しないので、酸素化を行う(行ってもよい)
またガイドワイヤー、ダイレーターによる気管後壁損傷が多いので、必ずファイバーで確認を行う。

外科的気管切開と経皮的気管切開では周術期の合併症は経皮の方が多いが、術後合併症は外科的の方が多い(感染症など)。そもそも傷も経皮の方が半分程度であるため、ICUでの気管切開は経皮が好まれる傾向にある。

参考文献:
INTENSIVIST 呼吸器離脱 

2013/12/20

JB-POT合格


JB-POT 合格したーーーーーーー!!! 
やった!

モニターワールド、そろそろ復活しないかな。
http://www.monitorworld.jp/index.html

2013/12/16

Blood transfusion in Cardiovascular surgery


Guideline for blood transfusion

http://www.annalsthoracicsurgery.org/article/S0003-4975(10)02888-2/fulltext

術中はHb 6以下で輸血、周術期(術後)は7以下で輸血することを
推奨しているが、エビデンスレベルは低いようだ。

このtable 1は読もう。

2013/12/13

Mortality in anesthesia

ブラジルからの systematic review

Mortality in anesthesia: a systematic review.
Clinics (Sao Paulo). 2009;64(10):999-1006.

33個のtrialを分析。
国、研究方法によっても死亡率は異なるが、1950-60年台は6.4/10,000であったが2000年ごろには 0.5-1.0/10,000となった。この20年で1/10に減少している。
病態要因:外傷、肝不全、肝移植、心臓手術、大量出血が関与
患者要因:新生児、乳児 (高齢者については議論がある)
手術要因:全身麻酔、心臓麻酔、大血管手術、消化器、小児外科、耳鼻科手術

日本の研究も含まれていて2003年と2004年にそれぞれ術後7日目までの死亡率を算出
 周術期死亡率は 4.05-6.85/10,000   麻酔関連死亡率は 0.21-0.1/10,000 


麻酔関連死亡はゼロにしなければならないものであるが、ゼロとするための手段として何があるかについても議論。
この20年での死亡率低下に寄与しているのは、SpO2のモニタリング、EtCO2のモニタリングであろうとしているが、関係性について調べられたものはない。
また事故を防ぐためにはsimpleな麻酔管理、チェックリストの整備、トラブルシューティングできる麻酔科医の配置、ERへの麻酔科医の配置、筋弛緩のモニタリングやリバースの準備といったことが挙げられている。


オロジーで麻酔関連合併症・死亡の原因についての後ろ向き研究
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15681938



CAT study: epinechrine vs norepinephrine in ICU

ICMより 
SSCG2012の元になった論文なのか…

A comparison of epinephrine and norepinephrine in critically ill patients.
Intensive Care Med. 2008 Dec;34(12):2226-34.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18654759

オーストラリアの多施設RCT。
ICUに入室した患者において、エピネフリン(以下E)とノルエピネフリン(NA)を比較したもの。どっちを使うべきかについてのRCTがなく、Eの方がコストが安いことからも使用されることが多かった。
P: 2004年〜2006年にオーストラリアのICUに入院した患者。ただし、心停止、アナフィラキシー、褐色細胞腫、副腎不全患者は除外。636人の患者のうち、280人を2グループに分けて調査。各群140人
I: NAを使用してMAP > 70mmHg もしくは病態によってそれ以上保つ。補液等の他の治療についての制限はなし。
C: Eを使用して同様に行ったグループ
O: 薬剤が不要となるまでの期間、28日死亡率と90日死亡率

結果として薬剤中止となるまでの期間、28日死亡率、90日死亡率ともに差を認めなかった。しかしE群では18人が治療者の判断でRCT介入中止となっている。中止の理由として乳酸アシドーシスの進行、頻脈、目標達成不可能であった。PSVTの発生率等はかわらなかった。乳酸の上昇はE群の方が有意に上昇していたが、だからといって臓器障害が多いという結果ではなかった。

エピネフリン使用における乳酸上昇は解糖系における乳酸増加によるもので、臓器障害の指標を表しているものではないという研究結果もある。


-----
差はないといわれても、やはり乳酸値が上昇するエピネフリンはなかなか使いたくはないもの。
だいたいカテコラミンは35~50時間くらい(2日間)が平均のようだ。




2013/12/12

Ventilator-Induced Lung injury

NEJM より

Ventilator-Induced Lung injury
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMra1208707

人工呼吸器患者の目標は、「いかに肺損傷を最小限としてガス交換を行うか」
人工呼吸器は治療ではなく、対処療法であるという考え方。
ポリオの流行から人工呼吸器の歴史は始まったが、それは肺損傷というジレンマとの戦い。
肺の伸展と胸郭圧の関係は様々な条件で異なる。
 自発呼吸では吸気終末には胸郭圧 -8 肺胞圧 0 で大気は 0-(-8) = 8cmH2Oで引き込まれる。
 陽圧換気では胸郭圧は1 程度、肺胞圧が 9 とすると 9-1 = 8cmH2Oで押し込まれる。
 胸郭が血胸などで固くなっている場合、胸郭圧 25 肺胞圧 30 でも 30-25 = 5 cmH2O
 呼吸不全の患者では呼吸筋努力が強く、胸郭圧 -15 さらに肺胞圧として 10をNPPV
 などで押し込むと、10-(-15) = 25cmH2Oの圧となる。

歴史上、圧をかけると肺水腫になることが初めに明らかとなった(1974年)
その後換気量(volume)が肺損傷のリスクであることが明らかとなった(1988年)
肺損傷の種類
 barotrauma 圧損傷
 volutrauma 換気量による損傷
 atelectrauma 無気肺による損傷
 biotrauma  炎症性物質による損傷 direct indirectともに。

人工呼吸器の設定戦略
低換気量、高いPEEP、リクルートメント手技(これについては効果はまだ確定していない)
HFOは成人ではARDSに対する効果を証明できなかったが、原理としては効果を期待できる患者もいるかも。
Prone positionはメタアナリシスでPF ratio < 100の群で10%死亡率を下げるとの結果がでた。
ECMOなどの補助循環はまだまだエビデンスが不足している。
筋弛緩薬はARDS後48時間以内の使用でbiotraumaを防ぐのではないかとされているが、正確なメカニズムは不明。
その他、Stem cells治療などもあるが研究段階。

その他pointと感じた点
assistモードでは、調節呼吸よりも大きなtidal supportをしていいこと。(自分でやってみても確かに楽)
胸郭圧が高い場合は肺胞内圧が 30を超える設定でも実際にかかっている圧は低い。


結論:
呼吸器設定ばかりをみて全体をみないと良くないことがおきる。




2013/12/01

staphylococcus lugdunensis


1988年にフランスで同定。lugdunensisはリヨンのラテン語名から名付けられたらしい。
CNSでありながら、S.aureusと同じ強い病原性を持つ。

これ読まなきゃ。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2668335/
J Clin Microbiol. 2009 April; 47(4): 946–950.

12月からICU勤務がはじまった。