NEJM より
Ventilator-Induced Lung injury
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMra1208707
人工呼吸器患者の目標は、「いかに肺損傷を最小限としてガス交換を行うか」
人工呼吸器は治療ではなく、対処療法であるという考え方。
ポリオの流行から人工呼吸器の歴史は始まったが、それは肺損傷というジレンマとの戦い。
肺の伸展と胸郭圧の関係は様々な条件で異なる。
自発呼吸では吸気終末には胸郭圧 -8 肺胞圧 0 で大気は 0-(-8) = 8cmH2Oで引き込まれる。
陽圧換気では胸郭圧は1 程度、肺胞圧が 9 とすると 9-1 = 8cmH2Oで押し込まれる。
胸郭が血胸などで固くなっている場合、胸郭圧 25 肺胞圧 30 でも 30-25 = 5 cmH2O
呼吸不全の患者では呼吸筋努力が強く、胸郭圧 -15 さらに肺胞圧として 10をNPPV
などで押し込むと、10-(-15) = 25cmH2Oの圧となる。
歴史上、圧をかけると肺水腫になることが初めに明らかとなった(1974年)
その後換気量(volume)が肺損傷のリスクであることが明らかとなった(1988年)
肺損傷の種類
barotrauma 圧損傷
volutrauma 換気量による損傷
atelectrauma 無気肺による損傷
biotrauma 炎症性物質による損傷 direct indirectともに。
人工呼吸器の設定戦略
低換気量、高いPEEP、リクルートメント手技(これについては効果はまだ確定していない)
HFOは成人ではARDSに対する効果を証明できなかったが、原理としては効果を期待できる患者もいるかも。
Prone positionはメタアナリシスでPF ratio < 100の群で10%死亡率を下げるとの結果がでた。
ECMOなどの補助循環はまだまだエビデンスが不足している。
筋弛緩薬はARDS後48時間以内の使用でbiotraumaを防ぐのではないかとされているが、正確なメカニズムは不明。
その他、Stem cells治療などもあるが研究段階。
その他pointと感じた点
assistモードでは、調節呼吸よりも大きなtidal supportをしていいこと。(自分でやってみても確かに楽)
胸郭圧が高い場合は肺胞内圧が 30を超える設定でも実際にかかっている圧は低い。
結論:
呼吸器設定ばかりをみて全体をみないと良くないことがおきる。