2018/12/29

ICU Haloperidol and Ziprasidone for Treatment of Delirium


NEJMより


アメリカからのRCT 
ICUに入室した患者1183人を対象。同意書を得て実施。
せん妄を発症した566人(48%)をハロペリドール群(20mgのボーラス)ジプラシドン群(最大40mgのボーラス)、プラセボ群に割付。

primary outcome 
介入後14日間における昏睡およびせん妄がない状態の日数

secondary outcome
30日、90日死亡率

結果として、primary outcomeの中央値は8.5であり、3群で差は認めなかった。
secondary outcomeについても差を認めなかった


ジプラシドンはもともと統合失調症の薬。日本では未発売。2019年に承認、2020年からの
販売の計画があるようだ。

2018/12/28

人工心肺離脱前にプロタミンが誤って投与された...


これは後輩たちに伝えよう。

http://www.med-safe.jp/mpreport/view/AC54EF98B1189CA09

自分の経験が浅い頃もそうだったが、心臓血管外科の手術は
術者が怖く、しかもだいたい麻酔科上級医がいない時に言ってくる。

「血が止まりにくい、こんなサラサラで止まるわけない」とか。

さらにマスクを二重にしていたりするので、聞き取りにくいことが多い。

別に麻酔科医をいじめようとしているわけではないと思う。
わかっていないやつに自分の手術の麻酔をして欲しくない、そりゃそうだろう。


来年の私の課題は教育体制です。

2018/12/16

帝王切開と麻酔 C/S 後のLVAD



帝王切開時のspinalでarrestし、VADを装着したというcase report
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26511992

特に何の既往もない妊娠39週の予定CS。
CS理由は産科的理由。
手術室でくも膜脊髄麻酔を実施した直後に徐脈から心停止(PEA)となったため、
CPRを開始。エピネフリン1mgと挿管を実施、2分後にはROSCしたが、血圧は不安定。
直ちにに児の娩出を行い、児に異常は認めず、Apgarは良好であった。
母親は閉傷後に鎮静挿管のままICUに移動。XPでは両側の肺水腫著明。
24時間低体温療法を実施。またImpellaを使用し、循環の回復を図った。
術後48時間後にはカテコラミン離脱でき、
さらに48時間後にImpellaからの離脱ができた
術後4日目に抜管、術後14日目に退院となった。

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spinal anesthesia後の心停止発生率は0.07%

今回のケースの鑑別として

spinal anesthesiaによる心停止
周産期心筋症
羊水塞栓症
肺塞栓症

が考えられるが、既往もなく、DICのような症状もなく、Dダイマーの上昇もなく後ろ
3つの可能性は低い(否定はできない)

Bezold-Jarisch 反射によるPEAが最も可能性としては高いか。

日本でも報告されているspinal anesthesiaに伴うPEA
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/32/5/32_781/_pdf/-char/ja


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日本の病院でImpellaを使用できる施設はかなり限られているし、
まずはPCPSを使用することになるんだろうか。

AVR後の心筋をスペックルトラッキングでみると


A&A 2017 2月号より

これ読まなきゃ。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26702865

日本心臓血管麻酔専門医試験 雑感


2018年度試験が11月にありました。

問題数は 80問 
試験時間は2時間 (13時ー15時)
100人くらい受験。コンピューターで目が疲れる。
何が出るというより一通り出る。結構難しい。ガイドラインを覚えているだけではダメかも。問題文がシンプルで選択肢が文章なので再現しにくい。
細かいところまで覚えていないと難しいなという感じ。 


<知識問題 40問>
1) HITが陽性となった。HIT抗体が消失するまでの期間はどのくらいか
 ・10日 ・1ヶ月 ・3ヶ月 ・6ヶ月
2) 冠動脈について正しいのはどれか。
 ・LADは前室間孔を通っている。
 ・LADは肺動脈をの全面を通っている など・・・
3)動脈グラフトのスパスム予防のために有効な薬剤でないものを選べ
 ・ニトロ ・プロプラノロール ・ペルジピン ・ミルリノン
4)脊髄を栄養する血管について正しいものを2つ選べ
 ・内頚動脈から栄養されている ・AKAはTh9-L2に多い ・下は外腸骨動脈からも栄養
 ・肋間動脈からの栄養は右からが多い など
5)心筋症についての知識問題 1つ選べ
 ・タコツボは元に戻るのに1年くらいかかる 
 ・ウイルス性心筋症はHOCMと似ている など
6)心アミロイドーシスについての知識問題  1つ選べ
 ・心筋は肥大する
 ・20-30代で多い
 ・予後は比較的良い
7)心臓の圧容量曲線。斜線の病態で正しいのはどれか (斜線は容積がかなり大きく、しかし圧は低い)
 ・仕事量は多い・ARの図である ・MRの図である  など
8)不整脈関連で正しいものを選べ 2つ
 ・TdPの急性期治療として硫酸Mgがある
 ・Vaughan Williams分類 の4群はβ遮断薬
 ・Sicilian Gambit 分類はイオン強度によって3つに分類している (← ちょっと意味不明。Naチャネルブロッカーを?何を?)
9)MSで正しいもの
 ・圧較差 > 10mHgは重症
   ・リウマチ熱後が多い。
10)RCRIに含まれないもの
 ・虚血性心疾患 ・心不全 ・糖尿病 ・脳虚血疾患 ・不整脈 ・中程度リスクの手術
11)トランサミンについて
 ・痙攣の原因にGABAが関与している ・20mg/kgで痙攣がおこる。
12)クリオプレシピテートと FFP、凝固製剤で正しいのは?
 ・クリオの方が凝固因子とフィブリノーゲンが多い。(微妙・・・) ・
   ・今販売されているフィビリノーゲン製剤のC肝感染はない
13)FFPが100ml中に300mgのフィブリノーゲンを含むとして、血液量 5000 血漿量 3000の人に Fib 10mg/dl
上昇させるのに、どれだけのFFPが必要か
 ・100ml ・200ml ・333ml ・400ml
14)血液製剤について正しいのはどれか
 ・血小板の使用期限は4日間
15)輸血で正しいのはどれか
 ・A型の人にABの血小板 ・O型の人にABの血液 など
16)TRALI TACOの病態一覧(血圧どうとか BNPどうとか)の穴埋め。
 ・TRALIではBNP上がらないし、心不全にもならない(初めは?)
17)DAPT 抗凝固の問題 正しいのはどれか
 ・プラスグレルはクロピドグレルよりも半減期が長いとか短い。・イダルシズマブはアビキサバンの拮抗薬 (間違い)など
18)心疾患合併妊娠 正しいのはどれか
 ・Eisemmengerも最近は成績良好・SpO2 85以下だと胎児の生存率は 50%  (本当は12%)
    ・妊娠後に循環血液量増えるから注意 など


<臨床問題 40問>
TAVI、小児、LAVADの問題が多い。普通の心臓麻酔の問題はほとんど聞かれない。

1)LVAD装着後、ポンプ離脱後に左室がペタンコになった。何が考えられるか。
 ・質問忘れました。
2)LVAD装着後にRVADが必要となる初見はどれか。
 ・右室拡大 ・左房拡大 ・左室べちゃんこ ・
2)VSDでPH強い8ヶ月くらいの子にVAD修復術。麻酔導入しようとしたら血圧下がってSpO2も85くらいどうするか。
 ・PEEPかける ・さっさと気管挿管する ・酸素をあげる 
3)Glen術後に酸素化が悪くなった。してはいけないのはどれか?
 ・頭部挙上する ・輸液負荷 ・酸素UP ・過換気 
4)VSDあったけど、特に未治療で妊娠した。現在14週。エコーでは特にフローが確認できない。適切なものはどれか
 ・利尿薬が必要かもしれないと説明しておく。
 ・ワーファリンを飲みましょうという。
 ・Eisenmengerしているので中絶しましょうという。など
5)10年前にMVRで機会弁入れている。今回AS見つかってTAVIになるが、2ヶ月前に冠動脈狭窄見つかりDES PCIされている。
 抗血小板薬、抗凝固薬はどうする?
 ・ワーファリン ヘパリン化 アスピリン 止める クロピドグレル TAVI 6日前に止める
 (以下組み合わせで5種類)
6)ワーファリン飲んでいる患者の脳出血。PT-INR 5.5 まずすべきことは?
 ・PCCの投与 ・FFPの投与 など
7)DES留置後2ヶ月。胃の良性腫瘍(GIST?)だけど、腹部膨満感が強くて早くラパでOpeしたいらしい。どうする?
 ・DAPT止めて今すぐ手術 ・DES継続で今すぐ手術 ・6ヶ月後にクロピドグレル止めて手術 など
8)胸腹部置換の術中。spinal dranageしていて上肢OK 下肢のMEP振幅下がった。何をするか スパドレからは10ml/h引いている
     体温は 35.0
 ・血圧上げる ・もっとスパドレから引く ・体温上げる など
9)TEVAR術後。スパドレ入れていて、5時間で72mlひいている。意識がおかしくなってきた。足の動きは指示がはいらず確認できない。
 何をするか 2個選べ
 ・頭部CT取りにいく ・頭部MRIとりにいく ・脊髄液の性状を確認する など


とりあえず合格できてよかったです。別にこれに合格したからといって何も変わらないけど。


今日受験した日本麻酔科学会専門医試験を受験した友人や後輩達が良い結果であることを祈ってます。

2018/12/09

Postoperative management of patients after cardiac surgery



わかっているのと、教えられるのはまた別だと思うこの頃。
教えられないということは、わかっていないということか。

Crit Care Med. 2005 Sep;33(9):2082-93.
Hemodynamic management of patients in the first 24 hours after cardiac surgery.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16148484



2018/12/07

ICUでのPPI (RCT in Europe)


ICUでPPIの予防的使用が消化管出血を減らすか?

Pantoprazole in Patients at Risk for Gastrointestinal Bleeding in the ICU
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1714919?query=featured_home


ヨーロッパの多国他施設(33 のICU)の研究。

n= 3298
ICUに緊急入室した患者を対象。少なくとも1つ以上の消化管出血リスクを持つ緊急ICU入室患者。予定ICU入室患者は含まれず。もともとPPIを内服している患者は除外。
消化管出血リスク:ショック、抗凝固製剤の内服、RRT、人工呼吸、肝疾患の既往、凝固障害の既往、ステロイドの使用など。
2群に割付。プラセボ群 パントプラゾール投与群
パントプラゾールは40mgをIV投与。

結果
患者背景では、30-34%が緊急手術患者、予定手術後に予定外のICU入室になった患者が9%、残り60%程度が内科疾患。SOFAスコアは平均9点だった

結果は90日死亡率は31.1 vs 30.4%で差はなかった(primary outcome)。
パントプラゾール群の臨床的消化管出血は2.5%の患者、プラセボ群は4.2%でRRは0.58
(ただしこれは2nd outcomeなのでP valueを提示せず)多重比較をしていないので、この値については観察研究の域を出ないとその評価には消極的。
PPI関連合併症(感染症の増加、MIのリスク増加)についても差がなかったと。


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この論文のRCT参加のICを取るプロセスについての記述がいまいちよくわからなかった。
withdrawした後に分析に加えてもいいかを依頼している?
そもそも患者さんはみんなemergency admission to ICUなので、ICUに入室後 15時間程度でRCTがなされている。
この15時間にはPPIはどうしていたんだろうか。


この論文だけで、PPI意味ないよという結論にはならないな。。。SOFAの平均が9というかなり重症な患者群と対象としているので、PPIが患者の予後を改善することはないのかもしれないけど、だからと言って投与が意味がないとは言えないだろう。

でもDiscussionで述べられていたけど、最近のメタアナリシスでもPPI否定的みたいだ。


2018/12/04

維持透析患者の心臓手術



1998-2015年の136人の透析患者の開心術の予後の報告
EUROScore Baseで2倍の死亡率であると。
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/14017431.2017.1384565?journalCode=icdv20


透析患者開心術のOutcome review
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3867031/pdf/ivt407.pdf


Heart surgery in patients on chronic dialysis: is there still room for improvement in early and long-term outcome?
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00380-010-0024-1


Heart disease in chronic kidney disease – review of the mechanisms and the role of dialysis access
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29192719


海外は透析のデータが少ない。
そもそも透析と心臓疾患の関連について復習せねば。

2018/12/02

脳出血患者におけるトランサミン



今年の5月に出たLancetの論文

Tranexamic acid for hyperacute primary IntraCerebral Haemorrhage (TICH-2): an international randomised, placebo-controlled, phase 3 superiority trial
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31033-X/fulltext

頭蓋内出血後のトランサミン使用が予後に影響を与えるかについてのRCT
多施設・多国による大規模RCT

n= 2325人の頭蓋内出血発症した成人患者

トランサミン群:診断時に1gのトランサミンを100mlの生食に溶解し10分かけてdiv。その後1さらに1gのトランサミンを250mlの生食に溶解し8時間かけて投与。
プラセボ群:生食のみをトランサミン群と同様に投与。

primary outcome 発症90日後の身体機能 (modified Rankin scaleで評価)
2nd outcome  day2 day7 のNIHSS、退院or院内死亡

サンプルサイズの決定ではOddsを0.79として2000人と計算した。

結果
死亡退院は16-18%。自宅退院は
90日後のmodified Rankin scaleに差を認めなかったが、day7での死亡率、24時間以内の血腫増大患者数はトランサミン群の方が少なかった。

血腫のサイズという点ではトランサミン群では1.37ml少なかったが、これが機能的予後に与える影響は少ないだろうと。

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最近PCCが使用できる様になったが、ワーファリン内服している患者さんの脳出血でトランサミンとPCCの併用に関する研究は全くない。

FVIIa製剤の脳出血患者への使用のtrialは予後改善をしなかったみたいだ。2008年のNEJM。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0707534





2018/12/01

左手のピアニスト


2年前、大阪で勤務していたときに、NHKラジオで知ったワンハンドピアノ。


左手だけで演奏するピアノ演奏曲。

本当に素晴らしい。左手のために作曲された曲は本当に完成されていて

全くワンハンドであるとは思えないくらい深く多彩な音色だ。

もともとバッハのシャコンヌが好きだったのだが、

この左手だけで弾くシャコンヌは中でも一番の好きかもしれない。


大阪にいた時に左手のアーカイブから購入し、いまでも聞いています。

左手のアーカイブ
http://www.lefthandpianomusic.jp





transcatheter mitral valve repair in patients with heart failure


2018年9月のNEJMより。

Transcatheter mitral valve repair in patients with heart failure
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1806640


この論文、かなり注目されているんだろう。Googleアシスタントが mitral valve repairと入れただけで、この論文のリンクを持ってきてくれた。

現在のTranscatheter mitral valve repair の適応基準はEF > 30%であるが、EFの低い患者に対しても内科的治療(薬物療法)と比較して予後を改善するのではないか?というRCT

方法・患者
EFが20-50%でsevere MRのある患者を対象とした。
患者数:614人 介入群 302 対照群 312 に割付。患者の平均年齢は 71%  mean EF は31.3%
NYHAは II 35-42% IIIが54-51%  IVが6.0-10.6
 (RCTではあるが、対照群の方が若干NYHAが高い)
虚血が原因の心不全が60.7%を占めた。

結果
介入群では退院時のエコーで82.3%がMR Iもしくはそれ以下となっていた。
治療開始後1年の入院率は 介入群35.8%に対して対照群では67.5%
1年以内の死亡率は 29.1% vs 46.1%   30日以内死亡のみで見ると介入群2.3% vs 対照群 0.7%

LowEF + MRでは2年以内に2/3の患者が死亡率とされている。
LowEF + MRの患者で、手術はClass 1の適応ではないが、内科的治療 + 手術とTranscatheter mitral valve repairでの比較はどうでしょうか。