2020/08/31

To have a clear goal

 

とある研究者の本を読んでいて、アメリカでは学生、大学院生が明確なゴールを持っていて、それに向かって無駄のないキャリアの選択をすることが多い。これに対してイギリスや他のヨーロッパの国ではそこまでゴールのためのパスを描いている学生は多くないと。

日本はどうだろうか? 最近の若い人たちは安定志向と言われているが、それは別としてゴールは持っている気がする。決して高望みではないゴール設定をする。冒険はしない。


自分の人生を見ると、今の若い人たちって本当に安定志向だとつくづく思う。

それはそれでいいのかもしれない。

では自分はどうかという話なのだが、ゴールは持っているのか?と問われると明確なゴールは持っていない。好奇心とチャンスにフラフラとしながら生きている。

それが咎められるとは思っていないのだが、リスクのある生き方には間違いない。


ゴールを明確に持った人生は楽しいのだろうか? 

自分の描いた目標通りの人生を歩むことで、人生幸せだったと思うのだろうか?


将来何が起こるかわからない方がワクワクすると思うのはおかしいのかもしれないが...

どうなのだろう?


persistent paint in ICU patients

 

内野先生のブログを見ていて面白そうだなぁと思った論文。

Mäkinen OJ, Bäcklund ME, Liisanantti J, Peltomaa M, Karlsson S, Kalliomäki ML. Persistent pain in intensive care survivors: a systematic review. Br J Anaesth. 2020;125(2):149-158. doi:10.1016/j.bja.2020.04.084

https://bjanaesthesia.org/article/S0007-0912(20)30338-X/fulltext


ICUにいると痛みを訴える患者さんがかなり多い。手術後だから仕方ないというのは過去の話で痛みはせん妄のリスクにもなるし、ICUシンドローム、PTSDの原因にもなる。

そして手術部位の痛みはまあ大体取れていたとしても、多くの人が痛がるのが肩と腰だ。

The incidence of persistent pain after intensive care varied from 28% to 77%.

なんとかしてあげたい。





2020/08/16

Happiness

 Very cynical footage!!

https://www.youtube.com/watch?v=e9dZQelULDk


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Anesthesiology の9月号はそれほど惹かれる記事がなかったけど、8月は面白そうだった。

Electroencephalogram Burst-suppression during Cardiopulmonary Bypass in Elderly Patients Mediates Postoperative Delirium

https://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2765105


Ephedrine versus Phenylephrine Effect on Cerebral Blood Flow and Oxygen Consumption in Anesthetized Brain Tumor Patients: A Randomized Clinical Trial

https://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2766104


Enhanced Recovery after Lumbar Spine Fusion: A Randomized Controlled Trial to Assess the Quality of Patient Recovery

https://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2766013


Dorsal Root Ganglion Stimulation Alleviates Pain-related Behaviors in Rats with Nerve Injury and Osteoarthritis

https://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2766014



2020/08/09

Sunday

上野公園

緑は多いが暑い。

 

Early molecular oxidative stress biomarkers of ischemic penumbra in acute stroke

 

Lorenzano S, Rost NS, Khan M, et al. Early molecular oxidative stress biomarkers of ischemic penumbra in acute stroke. Neurology. 2019;93(13):e1288-e1298. doi:10.1212/WNL.0000000000008158

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31455665/


脳梗塞を起こした患者216人のデータから、ペナンプラと酸化ストレスバイオマーカーの関連を示した論文。

統計方法はシンプルで単変量解析からステップワイズで多変量解析を行い、これらののバイオマーカーがペナンプラの有り無しで差があるかを見ている。バイオマーカーは病院到着時と9時間後の2回測定しており、tPA治療を交絡因子として多変量解析している。

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ペナンプラをどのように同定するか。 

 MRI で PWI - DWI mismatch 

このpenumbra の大きさとoxidative stress biomakers が相関しているという話。

ミスマッチが20%以上の群ではF2-isoPs 及びORACpcaが高かったと。

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この研究によって何が得られるかということなのだが、まだ助かる可能性のあるpenumbra領域の大きさをバイオマーカーによって推定できる可能性があるということと、これが後々の治療可能性につながるかという点だろうか。またラクナ梗塞のような分水嶺領域の高速に関してはミスマッチでペナンプラの有無を判断するのは適していないとのこと。確かに。

8-oxo-7,8-dihydro-2'-deoxyguoanosine(8-OHdG) :先行研究で使用されているミトコンドリアDNAの損傷を示すバイオマーカー

ORAC oxygen radical absorbance capacity assay は細胞全体の損傷を示すものであると。

しかしこの引用文献、どっちも1998年だ(しかも同一人物)

Cao G, Giovanoni M, Prior RL. Antioxidant capacity in different tissues of young and old rats. Proc Soc Exp Biol Med 1996;211:359–365.

Cao G, Prior RL. Measurement of oxygen radical absorbance capacity in biological samples. Meth Enzymol 1999;299:50–62.

なぜバイオマーカーをこれにしたんだろうか?

F2-isoPs

MMP

hs-CRP


この論文では予後との関連は示しておらず、今後の課題であるとしている。

何かこのペナンプラに対して保護的に働く因子があれば、そしてその治療効果がバイオマーカーによって同定できれば治療薬としての可能性が見えてくるだろう。


2020/08/05

Nasal high Flow for overweight patients



Maury E, Alves M, Bigé N. High-flow nasal cannula oxygen therapy: more than a higher amount of oxygen delivery. J Thorac Dis. 2016;8(10):E1296-E1300. doi:10.21037/jtd.2016.10.86


Editorialなのだが、BMI > 30 の肥満患者に対してNHFをつけることをルーチンにしたが、
それによって無気肺や酸素化の改善は認めなかったという論文へのコメント。

そうなんですよね。ICUでも太っているからというだけでNFH必要かな?と思って
抜管しても、特に酸素化は問題ないし、NHFを必要とする人はそこまで多くない。
呼吸機能の問題の方がより大きいし、NH Fの貢献度が高いのかもしれない。


Stéphan F, Bérard L, Rézaiguia-Delclaux S, Amaru P; BiPOP Study Group. High-Flow Nasal Cannula Therapy Versus Intermittent Noninvasive Ventilation in Obese Subjects After Cardiothoracic Surgery. Respir Care. 2017;62(9):1193-1202. doi:10.4187/respcare.05473

これは肥満患者 BMI > 30 が心臓手術を受けた後に、NHFと間欠的非侵襲呼吸補助(NPPV)でどっちがいいのだ?というRCT。 
元々組まれていたObese patientsに対するRCTのposthoc analysis 
830人程度を対象としている。 
NHFを用いた群はNPPV群と比較して皮膚の損傷が少なかったが、治療不成功(=挿管)となる割合については差を認めなかった。

このスタディのNHFの設定は結構強い。FiO2 50%でFlow 50L。
カプランマイヤーのプロットで治療不成功となる場合を求めているが、肥満でも治療不成功となる可能性は結構少ないのだなと。


肥満だからってNHFは必要なさそうだが、NPPVよりは良さそう。




2020/08/01

Intraoperative Oxidative stress causes postoperative delirium


Lopez MG, Hughes CG, DeMatteo A, et al. Intraoperative Oxidative Damage and Delirium after Cardiac Surgery. Anesthesiology. 2020;132(3):551-561. doi:10.1097/ALN.0000000000003016

周術期せん妄のリスクとなる因子は主にもともとの既往(過去のせん妄歴や脳梗塞など)が原因と考えられていたが、周術期、特に術中の酸化ストレスが術後せん妄のリスクになるという報告。

もともとスタチンがAKIやせん妄を減らすのではないかとして実施されたコホート研究の採血データから酸化ストレス因子を計測してその関連性も分析している。

分析対象は400人。
せん妄の発生頻度は27.5% (多いなーという印象だが、確かにこんなものかもしれない)
せん妄の評価はリサーチナースにより1日に2回行うというもの。
測定している項目は
F2 isoprostanes and isodurans  (酸化ストレスのマーカー)
S100 calcium-binding protein B (BBB障害のマーカー)
ubiquitin carboxyl-terminal hydrolase isozyme L1 (神経に特異的な酵素。神経障害のマーカー)

せん妄の有無についてはロジスティック回帰分析を実施。(多変量)
そしてubiquitin carboxyl-terminal hydrolase isozyme L1についてもアウトカムとしていて、術後のubiquitin carboxyl-terminal hydrolase isozyme L1が術中のF2 isoprostanes and isodurans の上昇と関係しているか、またそこにBBBの障害が相互作用として関与しているかについての研究

結論としてはF2 isoprostanes and isoduransが術中に高くなった患者ほどせん妄を起こしやすい。
Odds ratio = 3.7 
ubiquitin carboxyl-terminal hydrolase isozyme L1 の上昇については、F2 isoprostanes and isoduransとS100 calcium-binding protein Bの間に相互作用がある。

non-liner spline modelを使っていてテーブルの読み方に??と思ったがnon-liner ならではの書き方をしている。


面白いな。


腹部手術にアセトアミノフェン



JAMAに掲載されたRCT

腹部手術を受ける患者580人を対象としたRCT 
アセトアミノフェンの投与の有無で術後のオピオイド の使用量、酸素化の改善があったかを比較したもの。

そして結果差はなかったと。

これ自体はアセトアミノフェンの投与の無意味さを示すものではないのだが、
腹部手術はやっぱりアセトアミノフェンだけで差を出せるような痛みではないのだなと