2019/01/26

Afib in HFpEF reduces VO2 and increases NT-proBNP



Atrial Fibrillation in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction: Association With Exercise Capacity, Left Ventricular Filling Pressures, Natriuretic Peptides, and Left Atrial Volume.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28017355
JACC Heart Fail. 2017 Feb;5(2):92-98.


オランダからの研究。
HFpEFの患者において、その診断基準は心不全症状、EFは保たれていること、そして左室拡張能傷害があることがである。この左室拡張能傷害について、Afを合併している患者でも診断基準が同一となっているが、Afを合併している患者ではカットオフ値を変えたほうがいいんじゃないかという仮説のもとに行われた研究。

対象は94人のHFpEFの患者。そのうち32人がAfib、残り62人はsinusであった。これらの患者に対してまず心電図を確認した後でトレッドミルを実施(VO2を計測)、さらに心臓カテーテル検査と経胸壁心エコーを行い、LVEDP、LAVI、E/e'、TAPSE、NT-proBNP等を計測した。

結果、Afibを合併しているHFpEFの患者では、VO2が低値であり、NT-proBNPは高く、LAVIは大きく(左房の拡大)、PCWPは高く、LVEDPやより上昇していた。

これらの結果から、Afを合併するHFpEFの患者の拡張傷害を診断するときは、カットオフ値を変えたほうが良いのではないかと提言している。

結果はAfibが交絡因子であることを示しており、Afibがあると、よりHFpEFと診断されやすいということになるため、例えばNT-proBNPのカットオフ値はsinusであれば300pg/mlであるのに対してAfibがある場合はもっと高くすべきだろうと。現在研究によってバラバラではあるが、600-900をカットオフとしている研究がある。

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Afibの患者でE/e'をどうやってとったんだろう。平均したのか?
今の病院だと、E/AもE/e'もAfibがあると、poor studyという結果が返ってくる。

2019/01/21

Steroid for spinal cord injury



https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22258943

Methylprednisolone
bolus 30mg/kg administered over 15 minutes with a maintenance infusion of 5.4 mg/kg per hour infused for 23 hours


Methylprednisolone ソルメドロールで 50kgの人の場合、1500mgを15分かけてボーラス
その後 2700mgを23時間かけて投与。

多い...という印象。高血糖は必須だからインスリン併用だな。

Spinal Cord Protection in TAA


Spinal Cord Protection in Elective Thoracoabdominal Aortic Procedures.
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2019 Jan;33(1):200-208.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30032971


トロント大学病院麻酔科・心臓血管外科からのReview article
疫学
Thoracic aortic aneurysm(TAA) の発生率は10.4人/10万人/年である。発生率に性別差はないが女性の方が瘤の増大は速い。
TAAの外科的治療における30日死亡率は5-10%。主要合併症には、脳梗塞、透析を必要とする腎機能不全、麻痺である。Spinal cord injury (SCI)は合併症の中でももっとも予後を悪くするもの、発生率は5-20%である。またSCIを合併すると、30日死亡率は39%にまで上昇する。

SCIの発生機序、脊髄の栄養血管
脊椎・脊髄を栄養する脊椎動脈は、1) 椎骨・鎖骨下動脈、2)胸腹部大動脈、3)内腸骨動脈の各分節動脈から分岐し、前脊椎動脈1本と後脊椎動脈2本を作る。大動脈からでる最も太い根動脈をAdamkiewicz動脈といい、Th9-12、左から出ていることが多い。
術前にこれらの血管走行を画像検査することが発生率低下に繋がったというエビデンスはない。
SCIは2つの機序に発生する。1) 術中 大動脈クランプが長時間となり脊髄神経が虚血となる 2) 術後 永続的な血液供給の低下による。またこれらの機序とは別に、血栓が脊髄動脈に詰まり梗塞を引き起こすという研究も日本から報告されている。

臨床症状
麻痺の発生は3つの時期に分けられる。1)術中
 2) 術直後(術後数時間以内)3)遅発性(術後数日後)
麻痺を早期に発見すれば、介入治療が可能であるため、早期発見が重要である。術後24-48時間は1時間毎にチェックした方が良い
大腿屈曲、膝伸展、足関節背屈、底屈をチェックする。

SCIを予防するストラテジー
1) 大動脈遮断時間を短くすることが最も重要である。Stepwise, staged sequential clamping(分節的遮断法)などの工夫がある。術式をハイブリッド形式にすることも。2)左心バイパスを用いる。ただし脳虚血のリスクもあり、循環動態の安定が必須。3)ハイリスク患者にはスパイナルドレナージを挿入し、予防目的に使用する。


術中管理:術中の脊髄圧を8-12cmH2Oとする。MAPを80-100とする。MEPをモニタリングする。貧血を避ける(Hb > 10g/dl) 低体温とする
術後管理:術中の脊髄圧を8-12cmH2Oとする。MAPを80-100とする。1時間毎に下肢の所見をとる。
麻痺が起きなければ、24時間後スパイナルドレナージをクランプする。48時間後に抜去する。
麻痺が起きた場合 ドレナージを続ける max 25ml/h (多すぎる気がする...) スパイナルドレナージが入っていない場合は挿入する。MAPを80-100とする。貧血避ける (Hb > 10)。 酸素化 (SpO2 > 92%)。 硬膜外血腫の可能性を否定するために脊髄のCT・MRI


その他の予防や治療法
プレコンディショニング、ポストコンディショニングについても少数サンプルでの報告ある。高圧酸素療法によるプレコンディショニングが動物実験で結果が出ているが、人間では不明。

2019/01/20

臨床指導医講習会 雑感


金曜日の午後から土日と、臨床指導医講習会を受けた。

別に自ら希望したわけでもなく、どちらかというと行きたくないと思っていたのだが、
実際受けてみて、この研修は確かに意味があると感じた。

研修医をどう育てるかと考えるプロセスの中で、指導医が育たなければ
ならないということを感じさせる内容だったからだ。


会社員である夫とも話したのだが、最近は企業も座学の講習会はほとんどないそう。
課題について、グループで話し合う、いわゆるアクティブラーニングが主流。
そこで参加者自身が問題に気づけるように、仕向けていくのだ。

この方法はおそらく数年前までは全くうまくいかなかったに違いない。
アクティブラーニングだと、日本では発言をためらったり、その時間がすぎることをひたすら待つような人も多い。実際この講習会、10年前はすこぶる評判が悪かったらしい。スタッフのせいではなく、参加者のせいだろう
私の医学部時代のグループ学習も、全く機能せず、一人で勉強したほうがどれほど効率的かとよく思った。


この研修方式ができるようになってきたこと自体が、日本人も変わってきたと思う。


しかし良い指導医を増やすのには時間がかかるなー。
今回の臨床指導医講習会の参加者は40人。 指導医として講習を受けた方が良い人は10000人くらいか...
となると何回すればいいんだ。 


2019/01/13

無気肺を防ぐ最適PEEPは人によってかなり異なるらしい。


Individual Positive End-expiratory Pressure Settings Optimize Intraoperative Mechanical Ventilation and Reduce Postoperative Atelectasis.
Anesthesiology. 2018 Dec;129(6):1070-1081
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30260897


ブラジルからの報告
最適PEEPに個人差がどれだけあるか?それを最適化するためにelectrical impedance tomography-guided PEEPが有用であるか?を見た研究。

n=40なので、数が少なくていい研究ができないよ。。。という言い訳はできないな。

この研究で明らかとしたいことは
1) 個々人の最適PEEPを明確にすること
2) electrical impedance tomography(EIT)-guided PEEPの有用性を明らかにすること

40人の内訳は20人がラパロ、20人が開腹手術の患者。
麻酔導入後、BASEでPEEP 4 その後EITで決定されたPEEPとリクルートメントを行い(ここまではみんな同じ)、その後それぞれをramdomにPEEP 4で管理する群とPEEP-EITで管理する群に分けた。

EIT-PEEPを計測するためにはEITベルトを胸部に巻いて、インピーダンスを計測するようだ。
EITに関する記事
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/23/6/23_675/_pdf
https://kenkyuukai.m3.com/journal/FilePreview_Journal.asp?path=sys%5Cjournal%5C20120523133926-83CF7C8E825B618D9952752533B88098BD6A3BF7882B9ECF91A465E38EAC56CE.pdf&sid=507&id=202&sub_id=2558&cid=471

結果、EITで計測した最適PEEPは6-16 (median 12) cmH2Oで EIT-PEEP群では有意に術後の無気肺が少なかった。
また、 EIT-PEEP群では血液酸素含有量が多かった。血圧には差を認めなかった。


PEEPを最適化するのに、もっと簡便な方法はないかしら。
EIT巻くのは外科医の協力が不可欠だけど....

Case report リードレスペースメーカー装着患者のCABG


Anesthetic Management of a Patient With a Leadless Pacemaker Undergoing Cardiac Surgery
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2019 Jan;33(1):176-180
https://www.jcvaonline.com/article/S1053-0770(18)30367-7/fulltext


そのうち日本でもこういう患者さんが現れるのだろうか。

米国で現在承認されているリードレスPMは二種類。

TPS Micra Transcatheter Pacing system (メドトロ)
Nanostim leadless cardiac pacemaker (アボット)

今回のCase Reportでは3ヶ月前にNanostimの挿入術を受けた患者がCABGを受けることになったため、その麻酔管理についての報告。

その前に リードレスPMの適応
・Afib with 2nd or 3rd AVB or bifascicular bundle branch block
・Sinus with 2nd or 3rd AVB or bifascicular bundle branch block
・Sinus brady with infrequent pauses
・>= 18 years old
・at least 1-year life expectancy
禁忌
・T弁置換されている、IVCフィルタが装着され知恵る
・心内膜にPMリードがすでに装着されちえる
・経皮のICDが装着されている。
・大腿静脈がアクセスに適さない もしくは血栓がある
・肺高血圧症がある
・治癒されていない肺疾患がある(肺癌など)
・肥満 (体外からのPMへのシグナルが不安定となるため)
・30日以内の心臓手術
・一度リードレスPMを装着している
・dexamethasone sodium phosphateへのアレルギー (どうもこの薬剤がPMに塗られていて、PM自体に血栓ができることを防いでいるようだ)

Caseは71歳の男性、PCI歴がある。3ヶ月前に徐脈に2nd AVBを併発し、失神症状があったためNanostimの挿入がされた。今回冠動脈再狭窄を認めたため、OPCABGとなった。
サクションカップを使用して心臓を脱転させたが、PM自体には問題はなかった。
PMの外れなどがないことはTEEで確認しながら行った。PMに関する合併症はなかったと。

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認可されている2つの機種で色々なことが異なるようだ。
リードレスPMの重さは2g。
MicraのほうがDeviceをoffにでき、遠隔モニタリングが可能。
Nanostimはマグネットモードへの変更が可能。
耐用年数はNanostimが9.8年に対してMicraは4.7年
どちらもMRIは条件付きでOK (どんな条件や?)

DCが必要な場合はどちらの機種でもそのまま行ってOK。
心臓手術の場合は外れていないかを都度TEEで確認する必要がある。




2019/01/04

Type of anesthesia was not associated with cancer recurrence.


In the latest Anesthesiology, the topic about IV anesthesia and cancer recurrence risk.

Total Intravenous Anesthesia versus Inhalation Anesthesia for Breast Cancer Surgery: A Retrospective Cohort Study
Anesthesiology 2019;1: Vol.130, 31-40
http://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2712483

韓国から。
もともと吸入麻酔薬に免疫抑制の副作用があり、その結果癌の再発がTIVAよりも多くなるのではないかという報告があったのだが、sampleサイズが小さく、結論としてはどうなんだというところで、nを7678と膨大にして行った後ろ向き研究。

2005年から2013年までに片側の乳がんに罹患し手術を受けた患者を対象に、
TIVAもしくは吸入麻酔で2郡にわけ、再発までの期間、生存率を比較した。

TIVA群3085人、吸入薬群 2246人
propensity matchingでマッチングを行い、各群1766人が対象となった。
結果、再発率、生存率にはさを認めなかった。

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methodのところの
The sample size was based on the available data from all patients who had breast cancer surgery at our institution from January 2005 to December 2013. No statistical power calculation was performed before the study.

が潔くって面白い。え、そんな言い切ってしまっていいの〜!と思った。

オピオイドの使用と癌の再発についてもdiscussionで述べられていたが、
最も再発、生存に関係するのは全て取り除けたか、そしてがん細胞の遺伝子型であることはこの論文でも言及されている。
麻酔方法を担癌であるかどうかで変更する必要はないという結論で良いのではないかと
思うのだが...