2014/07/29

DDAVP and Platelet activity


今日読んだ「心臓手術の麻酔」で心臓手術時の血小板減少にデスモプレシンが効果があるという記載があった。

そういえば国試の時に、von willebrand病でデスモプレシンが1st choiceと覚えた。
デスモプレシンはvon willebrand factorの放出を促進するため、 VIII因子が増加する。

しかし、von willebrand病以外でも効果はあるらしい。

脳出血患者において、デスモプレシンの有効性を調べたpaper
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25005444


心臓手術においてのpaper   1993年!
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8431122
2008年にreviewもあった。

止血効果を目的としたデスモプレシンの使用方法について
http://www.jsth.org/publications/pdf/tokusyu/20_3.289.2009.pdf
0.2-0.4mcg/kgを生食 100mlに溶解し、1時間程度かけて滴下。4−8時間の止血効果を得られると。静注用のデスモプレシンは1Aあたり4mcgなので、50kgだと3A12mcg程度投与することとなるのか。

日本では全くの適応外だが。

2016年追記
心臓手術術後にデスモプレシンが効くかのRCT
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/aas.12740/abstract;jsessionid=ADD1125403F38BA007E179E87DA765B7.f04t03


2014/07/17

peripartum cardiomyopathy


Case 22-2014  NEJM  July 17, 2014
今日発行されたNEJMのCase Issueがperipartum cardiomyopathyだった。 
NEJMは数年前にもCaseでこの疾患を取り上げている。

原因は不明であるが、プロラクチンが何らかの影響を与えていると考えられている。
(ブロモクリプチンが治療薬として効果があるため)妊娠および産褥期におこる心血管の損傷が引き金となって引き起こされるとする説がある。
定義としては、妊娠前には心不全がなかったものが、妊娠および出産後に突然の心拡大、心機能低下をきたすもの。EF < 45%となる。90%の症例が産後1週間以内に発症している。
罹患率は 1/300-1/3000妊娠。ハイチやナイジェリアでは罹患率高い。
鑑別疾患には ACS、解離、肺塞栓、心タンポナーデがある。

治療はpreload, afterloadを減らすこと。利尿薬、NTGの使用を考慮する。ブロモクリプチンの投与が効果があったとするRCTがある。 
予後は 50%が回復し、25%が心不全状態が慢性化する。25%は移植もしくは死に至る。


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これともう一つ、sepsis induced cardiomyopathyという概念もあり、これも妊娠中のsepsisでおこりやすいらしいが…

2014/07/16

Monitoring エントロピー


外勤先で  GEのエントロピーがあった。

エントロピー
脳波と筋電図を複合的に評価している。 
アルゴリズムの公開されている。
 SEとREで評価。
SE: state entropy  0-91の値をとる。 脳波の値を反映している。
RE: response entropy  0-100の値をとる。 脳波と筋電図を複合した値をとる。

 SEとREが解離している場合、鎮痛が不足しているとも考えられるが、筋弛緩に影響を受ける。
値は 40-55が推奨される。


呼吸機能の評価 From H-J criteria to mMRC


術前の呼吸機能評価。
日本では H-J分類がよく使われているが、世界的には mMRCを使用している。
もともと 0-5段階であった British Medical Research Council Dyspnoea Scaleをさらに改変したので、 modifiedがついている。modified Medical Research Council(mMRC) Dyspnoea Scale

0 “I only get breathless with strenuous exercise”
1 “I get short of breath when hurrying on the level or walking up a slight hill”
2 “I walk slower than people of the same age on the level because of breathlessness or have to stop for breath when walking at my own pace on the level”
3 “I stop for breath after walking about 100 yards or after a few minutes on the level”
4 “I am too breathless to leave the house” or “I am breathless when dressing”

COPDの重症度分類に使用。




2014/07/08

AKI and CKD


Acute Kidney Injury and Chronic Kidney Disease as Interconnected Syndromes
N Engl J Med 2014; 371:58-66July 3, 2014

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1214243

AKI後にCKDになるリスク高いし、CKDの人はAKIになるリスク高い。
でも病態として何が関与しているのかというところになるとまだまだわかっていない点が多いんだと。

しかもAKIから可逆性に腎機能が戻ったとしても、長期的には予後不良。
ダメージを受けた部位の線維かが進んでいくことが原因か?

そして適切な治療方法についてもわかっていない。

Reviewだけど、「わかっていないことだらけ」という印象。

術後AKIの予防大事だ。 そしてCKDの人は術後AKIになりやすい。
前にもブログでこれ読みたいと書いていたけど、よんでいない論文:

http://bja.oxfordjournals.org/content/101/3/296.full.pdf

PROVHILO trial: Intraoperative high PEEP is harmful?


Lancetに麻酔関連の論文がでていた(1ヶ月前だけど)

The PROVE Network Investigators; for the Clinical Trial Network of the European Society of Anaesthesiology. High versus low positive end-expiratory pressure during general anaesthesia for open abdominal surgery (PROVHILO trial):  a multicentre randomised controlled trial.
Lancet. 2014 May 30. pii:S0140-6736(14)60416-5.

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)60416-5/fulltext

去年、NEJMからIMPROVE study が出されて、術中も low tidal volumeがいいよ
という結論が出た訳だが、今回は PEEPはどうなんだ? という話。

PICO
P:  900人の開腹opeを受ける患者(ラパロは除く)tidal volumeは 8ml/kgで統一
I:   12cmH2O PEEP +リクルートメント
C:  0-2 cmH2O PEEP
O:  5PODまでの肺合併症、 2nd outcomeは肺以外の合併症、術中カテコラミン、長期予後

結果としては5PODまでの肺合併症に差は認めなかった。
そもそも手術全体の5PODまでの合併症は消化器不全が最も多く、半数で見られた(「消化器不全」の定義が3POD以内に食事始められないというものだから、多くなったのかもしれない)
術中の低酸素は low PEEP群の方が多かった。
術中の低血圧、カテコラミン使用についてはhigh PEEP群の方が多かった。

高いPEEPは肺合併症を防ぐのでは?という仮説のものに行われた研究ではあるが、全く結果がでなかったというもの。でも面白い〜

どのくらいPEEP使うかなぁ。普通の人は基本的に 5-6  obesityがあれば、8-10?
バイタルと相談しながらだが。

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論文としても非常に読みやすくて、自分が論文を書くときのお手本にしたいと感じた。


2014/07/03

Ketamin again


脳圧亢進とか、悪夢とか、マイナスキーワードで覚えさせられた(国試レベルでは)ケタミンだが、きちんと使いこなしたい。 
そもそも単回投与がいいのか、持続がいいのか? 硬膜外?

Subramaniam K, Subramaniam B, Steinbrook RA. Ketamine as adjuvant analgesic to
opioids: a quantitative and qualitative systematic review. Anesth Analg. 2004
Aug;99(2):482-95, table of contents. Review. PubMed PMID: 15271729.


強い痛みはNMDA受容体の刺激と後根神経節ニューロンの興奮を起こす。このことにより、wind-up現象と中枢性感作、痛みの記憶を作り出す。
ケタミンはNMDA受容体の非競合性アンタゴニストであり、末梢の痛覚刺激によっておこる中枢性感作を阻害する。

wind-up 現象
 侵害受容体の刺激を繰り返し行うと、脊髄後角ニューロンのスパイク頻度が刺激ごとに増加する現象のこと。可逆性である。

ケタミンについて、今までに発表された論文を次の6つに分類、結果を分析した。
1) 術後のIV-PCA     ケタミン+モルヒネ vs モルヒネ単独
2) 術中持続IVケタミン    ケタミン vs オピオイド
3) 術中持続IVケタミン+Epi  ケタミン + epi   vs オピオイド + epi
4) 術中ボーラスIVケタミン  ケタミンボーラス vs オピオイドボーラス 
5) Epiケタミン    epiにケタミン vs epiにオピオイド
6) 小児症例     ケタミン使用 vs オピオイド


1) 術後のIV-PCAへのケタミン    ケタミン+モルヒネ vs モルヒネ単独
4 trials 合計で330人。ケタミン:モルヒネ = 1:0.75 ~ 1:2。VASは安静時、体動時ともに差を認めず。
CNS 副作用: 2群間で差を認めず。
PONV: 2つのtrialでケタミン使用群でPONVの低下を認めた。
掻痒感: ケタミン使用群で有意に低かった。
結論: IV-PCAにケタミンを使用することで、副作用もそれほど起きないが、術後疼痛は改善しない。ただし、腰椎手術に関しては疼痛軽減の効果があるかもしれない。

2) 術中持続IVケタミン    ケタミン vs オピオイド
7 trials 合計で289 人 ケタミンの量は 0.12mg/kg/h~ 0.6mg/kg/h  ケタミンの投与量によって疼痛が異なるかを調べた研究では5, 19, 20mg/hで疼痛に違いを認めなかった。
術後24時間のVASスコアでは研究によってまちまちであったが、ケタミン使用群でオピオイドの使用量が減っていた。
CNS副作用: 2群間で差を認めず。
PONV: 差を認めず。

3) 術中持続IVケタミン+Epi  ケタミン + epi   vs オピオイド + epi
4 trials 合計213人 ケタミンの量は 0.5mg/kg/h (10mg/hの設定も) 
ケタミン投与群では周術期の疼痛の改善を認めた。
CNS副作用: ケタミン群で有意に多かった。
PONV、掻痒感: ケタミン群で有意に少なかった。
結論: ケタミン投与群の方が術後疼痛の改善が認められた。

4) 術中IVケタミンボーラス  ケタミンボーラス vs オピオイドボーラス
11 trials 合計855人 ケタミン投与は 0.15~0.4 mg/kgをボーラス投与。投与タイミングは研究によって様々。 preope or postopeに投与。対象はフェンタニルのボーラスが多い。
ケタミンの投与によって術後のVASは有意に改善していた。
CNS副作用に差を認めなかった。
PONV: ケタミン投与群で少なかった。

5) Epiケタミン    epiにケタミン vs epiにオピオイド
8 trials 合計513人 epiに投与するケタミンは2 trialsでボーラス、 6 trialsで持続投与
6/8の研究で術後のVASの改善を認めた。
PONV、掻痒感については差を認めなかった。
硬膜外に投与するケタミンは術後疼痛を改善させる。 

6) 小児症例     ケタミン使用 vs オピオイド
4 trials 合計230人 ケタミンは 0.1-0.5mg/kgをボーラス (preope)
術後鎮痛に効果があったとする報告もあるが、全体として疼痛コントロールにケタミンを使用してほうが良いという結論にはいたらず。
副作用に差は認めなかった。

結論としては手術を選べば効果はあるが、すべての手術で必要ではない。ケタミンが有効と考えられる手術としては創部の大きい腹部手術や胸部手術、痛みの強い脊椎手術等である。
ボーラス投与でケタミンを使用すると総量が多くなるため、持続の方が望ましい。
また癌性疼痛をあわせもつ患者の手術においてはこれから研究の余地がある