脳圧亢進とか、悪夢とか、マイナスキーワードで覚えさせられた(国試レベルでは)ケタミンだが、きちんと使いこなしたい。
そもそも単回投与がいいのか、持続がいいのか? 硬膜外?
Subramaniam K, Subramaniam B, Steinbrook RA. Ketamine as adjuvant analgesic to
opioids: a quantitative and qualitative systematic review. Anesth Analg. 2004
Aug;99(2):482-95, table of contents. Review. PubMed PMID: 15271729.
強い痛みはNMDA受容体の刺激と後根神経節ニューロンの興奮を起こす。このことにより、wind-up現象と中枢性感作、痛みの記憶を作り出す。
ケタミンはNMDA受容体の非競合性アンタゴニストであり、末梢の痛覚刺激によっておこる中枢性感作を阻害する。
wind-up 現象
侵害受容体の刺激を繰り返し行うと、脊髄後角ニューロンのスパイク頻度が刺激ごとに増加する現象のこと。可逆性である。
ケタミンについて、今までに発表された論文を次の6つに分類、結果を分析した。
1) 術後のIV-PCA ケタミン+モルヒネ vs モルヒネ単独
2) 術中持続IVケタミン ケタミン vs オピオイド
3) 術中持続IVケタミン+Epi ケタミン + epi vs オピオイド + epi
4) 術中ボーラスIVケタミン ケタミンボーラス vs オピオイドボーラス
5) Epiケタミン epiにケタミン vs epiにオピオイド
6) 小児症例 ケタミン使用 vs オピオイド
1) 術後のIV-PCAへのケタミン ケタミン+モルヒネ vs モルヒネ単独
4 trials 合計で330人。ケタミン:モルヒネ = 1:0.75 ~ 1:2。VASは安静時、体動時ともに差を認めず。
CNS 副作用: 2群間で差を認めず。
PONV: 2つのtrialでケタミン使用群でPONVの低下を認めた。
掻痒感: ケタミン使用群で有意に低かった。
結論: IV-PCAにケタミンを使用することで、副作用もそれほど起きないが、術後疼痛は改善しない。ただし、腰椎手術に関しては疼痛軽減の効果があるかもしれない。
2) 術中持続IVケタミン ケタミン vs オピオイド
7 trials 合計で289 人 ケタミンの量は 0.12mg/kg/h~ 0.6mg/kg/h ケタミンの投与量によって疼痛が異なるかを調べた研究では5, 19, 20mg/hで疼痛に違いを認めなかった。
術後24時間のVASスコアでは研究によってまちまちであったが、ケタミン使用群でオピオイドの使用量が減っていた。
CNS副作用: 2群間で差を認めず。
PONV: 差を認めず。
3) 術中持続IVケタミン+Epi ケタミン + epi vs オピオイド + epi
4 trials 合計213人 ケタミンの量は 0.5mg/kg/h (10mg/hの設定も)
ケタミン投与群では周術期の疼痛の改善を認めた。
CNS副作用: ケタミン群で有意に多かった。
PONV、掻痒感: ケタミン群で有意に少なかった。
結論: ケタミン投与群の方が術後疼痛の改善が認められた。
4) 術中IVケタミンボーラス ケタミンボーラス vs オピオイドボーラス
11 trials 合計855人 ケタミン投与は 0.15~0.4 mg/kgをボーラス投与。投与タイミングは研究によって様々。 preope or postopeに投与。対象はフェンタニルのボーラスが多い。
ケタミンの投与によって術後のVASは有意に改善していた。
CNS副作用に差を認めなかった。
PONV: ケタミン投与群で少なかった。
5) Epiケタミン epiにケタミン vs epiにオピオイド
8 trials 合計513人 epiに投与するケタミンは2 trialsでボーラス、 6 trialsで持続投与
6/8の研究で術後のVASの改善を認めた。
PONV、掻痒感については差を認めなかった。
硬膜外に投与するケタミンは術後疼痛を改善させる。
6) 小児症例 ケタミン使用 vs オピオイド
4 trials 合計230人 ケタミンは 0.1-0.5mg/kgをボーラス (preope)
術後鎮痛に効果があったとする報告もあるが、全体として疼痛コントロールにケタミンを使用してほうが良いという結論にはいたらず。
副作用に差は認めなかった。
結論としては手術を選べば効果はあるが、すべての手術で必要ではない。ケタミンが有効と考えられる手術としては創部の大きい腹部手術や胸部手術、痛みの強い脊椎手術等である。
ボーラス投与でケタミンを使用すると総量が多くなるため、持続の方が望ましい。
また癌性疼痛をあわせもつ患者の手術においてはこれから研究の余地がある
強い痛みはNMDA受容体の刺激と後根神経節ニューロンの興奮を起こす。このことにより、wind-up現象と中枢性感作、痛みの記憶を作り出す。
ケタミンはNMDA受容体の非競合性アンタゴニストであり、末梢の痛覚刺激によっておこる中枢性感作を阻害する。
wind-up 現象
侵害受容体の刺激を繰り返し行うと、脊髄後角ニューロンのスパイク頻度が刺激ごとに増加する現象のこと。可逆性である。
ケタミンについて、今までに発表された論文を次の6つに分類、結果を分析した。
1) 術後のIV-PCA ケタミン+モルヒネ vs モルヒネ単独
2) 術中持続IVケタミン ケタミン vs オピオイド
3) 術中持続IVケタミン+Epi ケタミン + epi vs オピオイド + epi
4) 術中ボーラスIVケタミン ケタミンボーラス vs オピオイドボーラス
5) Epiケタミン epiにケタミン vs epiにオピオイド
6) 小児症例 ケタミン使用 vs オピオイド
1) 術後のIV-PCAへのケタミン ケタミン+モルヒネ vs モルヒネ単独
4 trials 合計で330人。ケタミン:モルヒネ = 1:0.75 ~ 1:2。VASは安静時、体動時ともに差を認めず。
CNS 副作用: 2群間で差を認めず。
PONV: 2つのtrialでケタミン使用群でPONVの低下を認めた。
掻痒感: ケタミン使用群で有意に低かった。
結論: IV-PCAにケタミンを使用することで、副作用もそれほど起きないが、術後疼痛は改善しない。ただし、腰椎手術に関しては疼痛軽減の効果があるかもしれない。
2) 術中持続IVケタミン ケタミン vs オピオイド
7 trials 合計で289 人 ケタミンの量は 0.12mg/kg/h~ 0.6mg/kg/h ケタミンの投与量によって疼痛が異なるかを調べた研究では5, 19, 20mg/hで疼痛に違いを認めなかった。
術後24時間のVASスコアでは研究によってまちまちであったが、ケタミン使用群でオピオイドの使用量が減っていた。
CNS副作用: 2群間で差を認めず。
PONV: 差を認めず。
3) 術中持続IVケタミン+Epi ケタミン + epi vs オピオイド + epi
4 trials 合計213人 ケタミンの量は 0.5mg/kg/h (10mg/hの設定も)
ケタミン投与群では周術期の疼痛の改善を認めた。
CNS副作用: ケタミン群で有意に多かった。
PONV、掻痒感: ケタミン群で有意に少なかった。
結論: ケタミン投与群の方が術後疼痛の改善が認められた。
4) 術中IVケタミンボーラス ケタミンボーラス vs オピオイドボーラス
11 trials 合計855人 ケタミン投与は 0.15~0.4 mg/kgをボーラス投与。投与タイミングは研究によって様々。 preope or postopeに投与。対象はフェンタニルのボーラスが多い。
ケタミンの投与によって術後のVASは有意に改善していた。
CNS副作用に差を認めなかった。
PONV: ケタミン投与群で少なかった。
5) Epiケタミン epiにケタミン vs epiにオピオイド
8 trials 合計513人 epiに投与するケタミンは2 trialsでボーラス、 6 trialsで持続投与
6/8の研究で術後のVASの改善を認めた。
PONV、掻痒感については差を認めなかった。
硬膜外に投与するケタミンは術後疼痛を改善させる。
6) 小児症例 ケタミン使用 vs オピオイド
4 trials 合計230人 ケタミンは 0.1-0.5mg/kgをボーラス (preope)
術後鎮痛に効果があったとする報告もあるが、全体として疼痛コントロールにケタミンを使用してほうが良いという結論にはいたらず。
副作用に差は認めなかった。
結論としては手術を選べば効果はあるが、すべての手術で必要ではない。ケタミンが有効と考えられる手術としては創部の大きい腹部手術や胸部手術、痛みの強い脊椎手術等である。
ボーラス投与でケタミンを使用すると総量が多くなるため、持続の方が望ましい。
また癌性疼痛をあわせもつ患者の手術においてはこれから研究の余地がある