2019/12/21

NaNO2 protects VILI?


Sodium nitrite mitigates ventilator-induced lung injury in rats.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22820847
Anesthesiology. 2012 Sep;117(3):592-601.


日本でも2015年より成人の心臓手術における肺高血圧症に対してのNO吸入療法の保険適応が認められているが、その効果(死亡率の改善)についての結論は出ていない。NOの吸入がARDSに対して効果があるかについては1993年から研究論文があるが、この結果も定まっておらず、2019年に出されたARDSの治療ガイドライン(1)ではNOの吸入は推奨されていない。損傷された肺組織に対してNOがどのような効果を持つのか、またその機序については不明である。NOは亜硝酸ナトリウムなどのNO2-からNitrite reductaseによりNOに変換される。特に低酸素下、アシドーシスにおいて反応は促進する。このNitrite reductaseの反応速度に影響を与えるものとしてヘモグロビン、ミオグロビン、xanthine oxidoreductase, aldehyde oxidaseが知られている。肺損傷の状態ではどの物質が最も影響を与えているかは不明である

目的:呼吸器誘発肺損傷のモデルラットを用いて硝酸ナトリウムが肺障害を軽減する機序を明らかにする。
方法:8通りの実験環境でのモデルラットを用いてそれぞれの実験群のラットの死亡率、肺のコンプライアンス、肺胞浸出液のタンパク、TNF-α、IL1-ß、MIP(macrophage inflammatory protein)-2の濃度を測定した。
8群の内訳:1) low TV 6ml/kg + PEEP 2 cmH2O, 2) high TV peak P 35 cmH2O 2h + PEEP 0, 3) high TV + 0.25 µmol/kg NaNO2, 4) high TV + 2.5 µmol/kg NaNO2, 5) high TV + 25 µmol/kg NaNO2, 6) high TV + NaNO2 + NO scavenger, 7) high TV + NaNO2 + NO synthase inhibition, 8) high TV + NaNO2 + xanthine oxidoreductase (XOR) inhibitor allopurinol 
統計:分散分析

結果:high TVのみを施行したグループ2では死亡率43%であったが、NaNO2を2.5 µmol/kg以上投与した群で死亡率は0となった。しかしグループ6) NO scavengerを追加した群とグループ8) XOR阻害を追加した群では死亡率が83%にまで上昇した。また酸素分圧についてみると、NaNO2の濃度が2.5で最も高く(low TVと同程度の酸素分圧)であったのに対して0.25 25の群ではそうした酸素分圧の改善は認めなかった。NaNO2の効果についてはU 字型をとった。

考察:NaNO2が肺保護に働くことがラットモデルで証明された。またその経路として複数の経路が複合的に働いており、XORも関与していることが示唆された。高濃度のNaNO2の結果が低濃度より悪化した理由としてNO2-が組織に増加しすぎると、peroxynitrite-medicated oxidantによる組織障害が起きると考えられる。
臨床への応用:肺障害を起こした肺ではNOへの感受性が1/12程度になる。肺障害への治療効果は証明されたが、臨床での投与量については検討しなければならない。