Clinical Implications and Risk Factors of Acute Pancreatitis after Cardiac Valve Surgery
Yonsei Med J 2013:54(1):154-159.
心臓手術後の急性膵炎の発生頻度およびリスク因子について、後ろ向きに調査した報告
研究デザイン:単施設後ろ向きコホート研究
対象患者:2005年から2010年に延世大学病院で人工心肺を用いた弁置換術を受けた患者986人中を対象とし、急性膵炎を発症した患者と発症しなかった患者におけるリスク因子を多変量ロジスティック回帰分析で分析した。
急性膵炎の診断:施設では全ての弁置換術を受けた患者に対してアミラーゼとリパーゼを術後検査しており、2POD以降にリパーゼが180 U/L以上もしくは腹部症状プラスリパーゼ60 U/L以上であった患者を急性膵炎と診断した。
結果:患者の平均年齢は56.9(SD 14.8)歳で2/3の患者が単弁置換、1/3の患者が複数の弁置換術を受けていた。院内死亡率は2.8%であった。58人(5.9%)が急性膵炎の診断となった。腹痛の症状を訴えたものはこのうち16人(22.4%)であり、吐き気、嘔吐が13人(22.4%)と続いた。胸水は17人(29.3%)で認められ、急性腎不全が15人(25.9%)で認められた。
2群間(急性膵炎発症群、非発症群)での単変量解析の結果、高血圧、術前のCKD、術中のノルアドレナリンの使用に有意差があり、多変量解析の結果でも高血圧、CKD、術中のノルアドレナリンの使用のORは2.26, 2.65, 6.0であった。
考察:先行研究よりも発生頻度が10倍以上高かった理由として、全例アミラーゼとリパーゼを測定しており、今までの研究では見落とされていたものも含まれているのではないかと推測している。CPB時間が平均132分と長く(先行研究では83分)、これも原因として考えられると考察している。また、先行研究では内臓虚血が急性膵炎の発症のリスクであるとされており、そのリスクがある場合は術後の鑑別として考える必要がある。
心臓手術後も急性膵炎でPubmedを検索すると、1990年代の論文が多い。CPBの改善によって減少してきているのかもしれない。1991年にNEJMで「CaCl2の投与が容量依存性に膵炎の増加と関連している」という論文も発表されていた。