2019/08/26

Risk score of dysphagia after cardiac surgery


ロジスティック回帰分析を勉強していたら、うーむこれでいいんかという
論文に。

心臓手術術後の嚥下障害のリスクスコアリング分析

A Novel Risk Score to Predict Dysphagia After Cardiac Surgery Procedures.
Ann Thorac Surg. 2015 Aug;100(2):568-74.

心臓手術を受けた1314人 (2011−2012年)を対象。
嚥下障害のコンサルトがあった患者の中で実際に透視によって嚥下障害と確認された患者は115人であった。

そこでこの115人と残りの患者で、ロジスティック回帰分析を用いてリスク因子を洗い出し、新しいリスクスコアを作成したというのがこの論文の主旨。

図表から見ていくと
Table1 患者属性 2群間で差があるかを検定している。COPDについては嚥下障害群の方が高かった。
Table2 術中と術後因子 これも同じように2軍間で差があるかを検定している。CPB時間や挿管時間、そして肺炎発生やAKI発生についても2群での差を認めた。

でここからどうするのかしら?と思っていたら
Table 3 多変量ロジスティック回帰分析 (いきなりー!)Table 1とTable 2で差を認めた項目+生理学的にリスク因子と考えられている項目で基準を満たしたものが11個あり、そのうち9個を使って多変量を行なっている。削られたのは高血圧と灌流時間(CPB time?) 

Figureは書かれていないが、ROC分析でもAUC 0.75と予測性能は良いと本文には書かれている。

table 4  Table 3で分析した9個の項目から7個に減少し、それぞれにスコアリングをつけた。年齢とNYHAが削られた。
このスコアリングはどうやって計算したのか???? 本文には
 Scores were assigned based on the relative odds ratio of each inde- pendent predictor (p < 0.05) in the multivariable model.
としか書かれていない。そりゃあORをもとに出したんでしょうけど、どうやって計算したのでしょうか。

Table 5 Table 4で作成したスコアリングシステム(RODICS)をこの1314人に当てはめて、当てはまりの良さを検証している。項目は incidence of cohort, incidence of dysphagia, and OR 

コンサルトされたうち307人中、170人は嚥下障害がなく、その170人の患者のリスクスコアが低いことから、まずはこのリスクスコアを使用することがいいとの結論。

しかし、妥当性を検証するのであれば、別の集団(national database)とかで検証しないと、deviation setと同じsetをvalidation setとして使ってリスクスコアを評価するのはどうなんでしょうか。

そしてリスクスコアの中に、VAD placement or heart transplantが入っているのだが、この生理学的理由がよくわからない。procedureとしては、弓部置換のような頸部、特に反回神経損傷のリスクのある手術の方がリスクが高いように思い、他のリスクスコア(低体温期間とか)との多重共線性があるように感じる。
多重共線性がないという証明も必要ではなかろうか。 


ロジスティック回帰分析できちんとした予測モデルを考えるのは本当に大変だ。