2016/07/06
TAVI TAVRについての知見 2016 review
TAVIについての最近の話をまとめたものが
2016年6月のJournal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia に乗っていたので読んでみた。
最近TAVIの麻酔をやらせてもらっているが、なんというか、ジェットコースターみたいな
麻酔だ。
これをlocal anesthesiaでやっている施設もあるとおもうと驚愕するが、案外localの方がうまくいくのかもしれない。
Transcatheter Aortic Valve Replacement: Recent Evidence from Pivotal Trials.
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2016 Jun;30(3):831-40.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27021178
2016年までに終了している3つのlandmark trialsについて解説しながら、TAVIについて説明。現在進行中のtrialについても言及。
3つのlandmark trialsとは以下の通り。
・PARTNER-1 trial SAPIEN(バルーン拡張型)を用いたhigh risk患者に対する手術との比較。n=3105。
・CoreValve trial CoreValve (自己拡張型)を用いたhigh risk患者と手術(SAVR)との比較。n=797。
・NOTION trial CoreValveを用いた low-middle risk患者と手術との比較。n=280
合併症について
1) 脳梗塞
PARTNER 1 trialでは5年間での脳梗塞発症率には差を認めなかったが、30日、1年の脳梗塞発症率はTAVI群で高い結果となった。 しかし次のPARTNER 2 trialでは差は認めなかった。
2) 弁逆流(PVR)
バルーン拡張型TAVIでは手術と比較して弁逆流が多い結果となった。しかし5年間の追跡調査でPVRが弁の耐久性を下げるという統計学的差はでていない。
自己拡張型TAVIでもPVRの発生率は高く、これによると考えられる術後1年の呼吸困難発生率も高い結果となっていた。
3) 血管合併症
血管合併症(出血など)はPARTNER 1 trialではTAVI群で高いという結果となった。しかしCoreValve trialでは手術群の方が高い割合で出血合併症を起こしていた。
4) 伝導障害、ペースメーカー挿入率
MR挿入率は自己拡張型TAVIのtrialにおいて、TAVI群の方が手術群と比較して高かった。
5) 術後心房細動
自己拡張型TAVI trialにおいて、術後の心房細動は手術群で高かった。
ではSapien(バルーン拡張型)とCoreValve(自己拡張型)ではどちらがよいか?
2014年にJAMAにCHOICE trialが発表された。ドイツからのRCT。結果としては死亡率や脳梗塞等には差を認めなかったが、Sapienが95%で成功しているのに対してCoreValveは77.5%と成功率が低く、また1回以上のdevice挿入率も高かった。つまりCoreValveの方が適切な位置へのdeployが難しいと言える。またCoreValveの方がPM挿入率が高かった。
現在SURTAVI trial (CoreValve vs SAVR in intermediate risk patients) とPARTNER 2 trialが進行中。
麻酔については全身麻酔より静脈麻酔(MAC)の方が合併症発生率が低かったとの報告も。
しかしPVRについてはMACの方が多く(TEEで確認できなからだろう)長期予後に差はなかったとの結論。
TAVIもいろいろなリスクあるね、と思うが、入院期間、再入院率などは軒並み減少。
PVRは初期のころによく発生したようであるが、これを防ぐためには術前の適切なサイジング、インプラントをより正確に行うことが必要であり、これによりかなり減少するようだ。あまりにも技術の進歩が早すぎて、こうしたtrialの結果だけで治療の判断してはいけないのかもしれない。
コストの問題が解決されれば、今後ますますTAVI率が増えてくるのだろう。
TAVIの麻酔より、SAVRの麻酔の方が好きなのだが、自分が手術を受けるとしたら、どっちにするか... 悩む。ペースメーカー入れたくないから今はまだSAVRかな...