2016/06/02

LVADにおけるvWFの細分化と出血傾向


LVAD装着時の易出血傾向について、vWFのフラグメント化が関与しているのではないかとする報告

Pathologic von Willebrand factor degradation with a left ventricular assist device occurs via two distinct mechanisms: mechanical demolition and enzymatic cleavage.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2015 Jan;149(1):281-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25439775

8人のLVAD装着患者の血液(装着前後)と、8人の健康成人男性の血液でvWFの量およびフラグメント化についての研究。

LVADでは高分子量vWFが減少し、低分子量vWFが増加することが知られている。
遠心ポンプによるせん断応力(shear stress)と、健康成人男性の血液を遠心分離機にかけた場合のせん断応力の違い、およびADAMETS13の発現量についてタンパク電気泳動を用いて測定した。
LVAD装着によりvWFの分子量は低下し、また遠心分離機でも分子量は低下していた。
ここでvWFのみを抽出し、ADAMET13を混ぜた群と混ぜなかった群で比較したところ、ADAMET13を混ぜた群んの方がよりフラグメントが細分化されていた。
せん断応力がかかるとvWFは伸ばされるが、それがさらにADMET13の存在下ではせん断されると考えられる。電気泳動でフラグメント化されたvWFの濃度をみると、せん断とADAMET13ではvWFを切る場所が異なることもわかった。またせん断応力が血液に加わることで血中のADAMET13の活性化が強くなることがわかった。

人工補助心臓においてADAMET13は大きな役割を果たしていないとの報告も過去にはあるが、今回の研究ではLVAD自体によるせん断応力とADAMET13の両方が出血傾向に寄与していると考えられた。

ADAMET13はメタロプロテアーゼの1種であるが、抗生物質のテトラサイクリンはメタロプロテアーゼの阻害作用を持つ。またドキシサイクリンはADAMET13を阻害するため、LVADで出血傾向にある患者の治療として使用できる可能性がある。

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2016年に同じ雑誌から、LVADのflowを落としても、vWFのフラグメント化の度合いは変わらなかったとの報告もある。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26971377

遠心力によるvWFのフラグメント化と、そもそも抗凝固薬による出血傾向およびその
微小出血に対しての血小板の使用による枯渇とではどっちの方が出血傾向に寄与している
んだろうか。