2016/04/06

術後新規のAfibの管理 review

4月から新しい病院にうつり、関東から関西へ移動。
いろいろと慣れない。 医者はいつまで転勤が続くんだろうか。
もうあと2回くらいにしたい。

心臓手術術後の新規Afibの病態、管理についてのreview
New-Onset Atrial Fibrillation After Cardiac Surgery: Pathophysiology, Prophylaxis, and Treatment.
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2016 Jan;30(1):200-16.
http://www.jcvaonline.com/article/S1053-0770(15)00748-X/abstract

【疫学・原因】
術後のAifb(POAF postoperative Afib)は2日目に起こることが最も多い。発生頻度は30-50%。POAFは死亡率、合併症率を増加させ、医療費も増加させる。具体的にはCAGB後10年生存率がnon-Afibの患者が70%であるのに対してAfibを合併した患者は55%である。
術後にAfibが起こる機序としては第一には肺静脈への侵襲的な刺激がある。一度起こったAfibが持続するメカニズムには3つの説がある。1)再流入 re-entrantの確立、2)心房における1つ以上のシンクロしない速い刺激点の存在、3)リエントリー経路の存在である。
Afibが発生するメカニズムには自律神経系も大きく関与している。またPOAFに関しては局所の炎症、人工心肺による全身性の炎症、さらに手術侵襲によるストレスが発生に関与しているの説がある。
また心臓術後Afibの発生には、酸化ストレス、volumeの変化(hypo、hyperともに)が関連しているとの論文もある。

【管理】
術後48時間はECGによるモニタリングを行うべきである(AHAのCABGにおける推奨)
また術後7日目までは間欠的にモニタするよりも、連続モニタの方が優れているとの報告もある。埋め込み型のAfibモニタリングも現在2機種存在し、Afibの発見率は98.5%である。
(埋め込み型はアブレーション術後に胸骨近位の皮下に埋め込む)
ICM : メドトロはこんな商品も出している。
 http://www.medtronicdiagnostics.com/us/cardiac-monitors/Reveal-XT-ICM-Device/index.htm

【予防】
基本はβブロッカーである。BLOS studyでは術後ICUに入った時点でメトプロロール100mg/dayを投与した患者ではAfibの発症を39%から30%に減少させることができた。また初期のPOAFではメトプロロールと比較してカルベジロールの方が合併症が少ないとの報告もある。エスモロールを投与した研究では41%で低血圧などの合併症が発生し経口βブロッカーと比較しての優位性はないとしている。
ソタロールは合併症が増えるため、アミオダロンやMgを比較しての優位性を見出せなかった。
アミオダロンがPOAFの予防に効果があるとの報告もあるが、麻酔後に投与を開始しても効果は少なく、術前6日前から飲み始めるひつようが あるとの結論となった。
QT延長やskin rashなどの合併症も有意に多く、注意が必要である。
不飽和脂肪酸はPOAFの発生予防には効果がないとの結論であった。
スタチンは抗炎症作用をもつことからPOAFに対しても予防効果を認めた。
ステロイドはDECS studyでPOAFに対する予防効果が調べられたが、予防効果はないとの結論となった。
Mgも術後の低MgはPOAFの発生と関連しているとの報告があるが、Mgの投与自体には予防効果はなかった。
コルヒチンは痛風の治療薬であり術後の心膜切開後症候群に効果があるとの研究があるが、(COPPS trial)、Afibの腰部に関しては効果は認めなかった。
その他ボツリヌス毒素の投与、Caブロッカーも検討されているが、結論はでていない。

予防としての心房ペーシングは有効である。両心房ペーシングを行うことでAibdの発生率はかなり低下する。左もしくは右だけのペーシングの効果は明らかではない。
後心外膜の切除はCABG後のPOAFの発生予防に効果があるとされている。
またCABGにおいて、on-pumpに比べてoff-pumpの方がPOAFの発生率は低い。off-pumpを選択することもAfibの予防につながる。
また術式においては、迷走神経が心臓周囲のfat padの中に入り込んでいることから、こうした脂肪を温存した方がAfibの発生は予防できるとしている。

現在研究されている薬剤としては、レボシメンダンがAfibの予防に効果があるかもしれないと期待されている。NSAIDsに関しては抗炎症作用の観点からAfib予防に効果があるかもと期待されたが、naproxenを使用したtrialでは腎機能悪化が投与群で多く認められたため、trial自体が中止となっている。Afib予防目的のNSAIDsの使用には結論が出ていない。

【治療】
rate controlが第一である。最もよく使用されるのはβブロッカーであり、CCBと続く。循環動態が安定しているのであれば、症状がない場合は rate < 110 症状がある場合は rate < 80を目標とする。循環動態が不安定な場合はDCを直ちに行う。循環動態が安定しているが、rateを下げても症状が続く場合は薬剤によるrythmeコントロールへと進み、それでも症状改善しない場合にDCを行う。DCは発生後48時間いないであれば行う。それ以降はエコーで血栓がないことの確認と抗凝固薬の使用後に行うべきである。
治療としてのアミオダロンやソタロールも、副作用が多く1st choiceではない。
抗凝固については、CHADsスコアなどが用いられてきた経緯があるが2014年のガイドラインでは48時間以上続くAdibではすべての患者で抗凝固を開始すべきとしている。
また、48時間以内の患者でも脳梗塞のリスクが高い(CHADS2VASc > 1)では抗凝固を考慮すべきであり、CABGによる再灌流後でCHADS2VASc > 2の患者では抗凝固に追加してクロピドグレルを投与することを検討すべきであるとしている。