1. Millerの適応基準
絶対的禁忌として、1)患者の拒否、2)皮膚穿刺部位の観戦、3)全身性重症感染症、4)凝固障害、5)頭蓋内圧亢進がある。
相対的禁忌として、1)循環血液量減少、2)中枢神経系疾患、3)慢性腰痛症がある。
2. 血小板減少と硬膜外麻酔
1988年の論文(1)では硬膜外麻酔は血小板10万以下ではするべきではないとされていた。しかし2010年のBJH (2)では硬膜外麻酔では血小板数8万以上、腰椎穿刺では血小板4万以上あれば「安全」に行うことができるとしている。硬膜外麻酔は5万以下ではするべきではないが、5-8万では患者個別に検討するべきである。一般的に(肝切を含めて)血小板8万以上を適応基準としているものが多い(文献多数)。
2015年の10月のA&Aに血小板減少妊婦に対するEpiについてのretro-cohort studyが掲載された(3)。102人の血小板<10万の患者で71人に硬膜外麻酔が施行。血腫の合併症は0であった。しかしそもそも大規模studyで血腫の合併症発生率は1/18-19万件という割合(4,5)。小規模studyでは血小板減少がこの割合にどの程度影響を与えるかは結論をだせないだろう。
血小板減少といえばITPがあるが、ITPの患者でも血小板が8万あれば硬膜外麻酔をさしてよいとのガイドラインがでている(6)。産科麻酔科医は5万あれば十分と考えているとことも紹介されている(7)。ITP妊婦の経腟分娩はPLT 3万以上であればよい。
肝硬変患者では術後2日目をピークに血小板が下がる(8)。このため肝硬変患者では硬膜外カテーテルを抜去するのは5-7日後がよいとされている。
3. 小児での硬膜外麻酔の適応は何歳から?
教科書では1歳以上から可能ではあるが、6歳以上からの施行が望ましいとしている。しかし2014年のPediatr Anesthに新生児および乳児におけるneuraxial blockのreview(9)では、新生児からやっている施設もある。0.5-0.8mg/kgの0.25%bupivacaineの単回投与が多い。
4. 硬膜外麻酔でなければいけない症例
硬膜外麻酔がなければだめ!!というような状況というのは本当に少ないような気がしてきた。しかし、産科麻酔の分野ではくも膜下麻酔はできないが、硬膜外麻酔でC-sectionを乗りきったという文献があり、こういう時には硬膜外麻酔が有用であったと思うのであろう。
透析施行妊婦のC-section (10)
脊椎小脳変性症妊婦のC-section(11)
参考文献
1) Obstet Gynecol. 1988 Jun;71:918-20.
2) Br J Haematol. 2010 Jan;148(1):15-25.
3) Anesth Analg. 2015 Oct;121(4):988-91.
4) Can J Anaesth. 1996 Dec;43(12):1260-71. 一般外科における硬膜外麻酔
5) Anesthesiology. 2006 Aug;105(2):394-9. 帝王切開における硬膜外麻酔
6) 「妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド」臨床血液 2014 ;55(8):934-947
このガイドラインの中でA&A2009: 09(2):648-60という論文が引用されているがこの論文が2009年までの先天性凝固異常に対するreviewとして優れている。中には妊婦でPLT 2万だったがepiをさした(L/Dに気がつかずに)が合併症なかったというような論文もあった(Anaesthesia. 1989 Sep;44(9):775-7)。
7) Blood. 2010 Jan 14;115(2):168-86.
8) J Anesth. 2014 Aug;28(4):554-8.
9) Paediatr Anaesth. 2014 Jun;24(6):553-60
10) Can J Anaesth. 2007 Jul;54(7):556-60.
11) Can J Anaesth. 2007 Jun;54(6):467-70.