妊婦の虫垂炎手術の麻酔管理
1. 疫学
虫垂炎は妊娠中緊急手術で最も多く1/350- 1/10000 。妊娠中緊急手術の25%を占める。
ただし妊婦が非妊娠女性と比較して虫垂炎になる確率は低いが、診断が遅れる
ことがあり、壊疽性虫垂炎は多い。
穿孔の確率は15%。このうち30%は妊娠6ヶ月未満におこり、70%は6ヶ月以降。
妊娠中に手術となる確率は0.75-2.2%
2. 麻酔が胎児と妊婦に与える影響
1) 催奇形性について
動物実験では幾つかの麻酔薬で催奇形性が指摘されているが、人間を対象として
麻酔薬の催奇形性を報告している論文はない。
FDAは1975年に妊婦に使用できる薬剤をカテゴリー化したが、最近このカテゴリーを
外そうとする方針らしい。吸入麻酔薬、局所麻酔薬等、使用できない薬剤はない。
NO2はメチオニン合成酵素を阻害してDMA合成に影響を与えるので妊娠3ヶ月まで避ける
麻薬ではフェンタニル、モルヒネ、ケタミンも少量(0.25mg/kg iv)であれば使用できる
2) 妊婦への影響
吸入麻酔薬のMACは低下する
局所麻酔薬の感受性は増加する
硬膜外麻酔で必要となる薬剤の量は減少する。硬膜外腔のスペースが減っているので
酸素消費量は20%増加している。
粘膜浮腫が強いため、経鼻胃管やnesal airwayは避ける。
3. 麻酔の注意
出産後に延期できる手術は延期する
妊娠3ヶ月までの手術は避ける
可能な限り区域麻酔を用いる
すべての妊婦の全身麻酔はcrash inductionで行う。細い気管チューブで行う。
4. その他
ラパロの場合はCO2の蓄積により胎児が呼吸性アシドーシスを起こす可能性があるため
注意する。 EtCO2で32程度に保つようにする。
胎児死亡/流産は手術や麻酔の影響よりも手術にいたる疾患の重症度の影響が大きい
(敗血症は腹膜炎などが大きな影響を与える)
24-36Wに手術をした妊婦では22%が正期産であった。
Yao's anesthesia より