2015/10/18

Anesthesia of intestinal obstruction

腸閉塞の麻酔管理

1. 腹痛の痛みのメカニズム:腹痛は3つの痛みに分けられる。
 1) visceral pain:自律神経系の疼痛でC fiberを介したもの。鈍い痛みを引き起こす。
 2) somatic pain:体性痛。A-δ fiberを介したもの。壁側腹膜の疼痛で鋭い痛み。
 3) referred pain:放散痛
 腹痛自体の診断としては非特異性(41%)が多い。
 次に虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞、尿管結石と続く。緊急腹部手術の死亡率15-34%

2. 閉塞の部位
 小腸閉塞の原因の75%は手術後の癒着である。小腸は長く、絞扼性(strangulation)になりやすい。
 大腸閉塞の原因の最多は腫瘍によるものであり、捻転を除くと緩徐に進行することが多い。
 捻転の場合は破裂するリスクを伴うため、注意が必要。

3. 症状
 間欠痛:上腹部ほど間隔が短く(4-5min)、閉塞が下位にいくほど間隔が長くなる(15-20min)
 疼痛と嘔吐、便秘、腹部膨満が4大症状。

3. 体液移動と循環動態バランス 
 そもそも1日に唾液を含めた全腸管より7-9 Lのfluidが分泌されている。
 分泌液の中で最もKの割合が高いのは唾液である。その次が胃液。
 このうち小腸からの分泌は1000-2000mlである。
 腸閉塞となると、プロスタグランジンにより腸液の分泌が促進され、
 閉塞部位よりも上部でfluidとgasがたまる。
 腸管内の圧が20mmHgをこえると再吸収もされなくなる。
 体液移動の目安:
  小腸閉塞の初期:1500ml
  嘔吐が始まる頃:3000ml
  血圧低下を伴う:6000ml
 補液は晶質液でよい。

4. 全身への影響
 1) 循環動態の変化:体液移動に伴う
 2) 電解質異常: 低Na (血圧低下を助長する)、低K
 3) アシドーシス:脱水の影響が大きい
 絞扼性となった場合は血管内膜透過性の破綻により血性腹水となる。輸血が必要となることも。

5. 減圧処置
 腹壁にtensionがかかると、逆流性の蠕動運動が起きるとともに手術においては深い麻酔が必要となる。このため腸管内の減圧が必要である。 

6. 誤嚥の予防
 導入時の誤嚥は予防しなければならない。誤嚥の頻度は5/10000麻酔(0.05%)
 H2ブロッカー等の制酸薬で胃液のPHを下げておくことは誤嚥した場合の重症度の軽減に
 繋がるが、実際に投与してもそれほどPHが下がるわけではなく、効果は薄い。
 挿管時の体位はhead up positionがよいとされているが、議論の余地あり。
 cricoid pressureは効果がないとも主張もあるが(食道は気管の下にはないとか、
 逆に気管が見えにくくなるとか)、行う場合は挿管後呼吸音を確認するまで行う。

Yao's anesthesiology 7th edition 2012
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この2ヶ月くらい、本当にガスの抜けた炭酸水のような生活をしていたので、
気持ちをいれかえた。