2015/01/31

Spontaneous intracranial hypotension


anesthesiology の2014.12のCase scenario  

麻酔と関係ない気もするが、ペイン外来にはやってきそう。
日本語では日本頭痛学会がまとめておられた。
https://www.jhsnet.org/GUIDELINE/1/1-19.htm

Case report 36yo F
1週間前から続く頭痛、肩から首にかけての放散痛を主訴にERを受信した36歳女性。
頭痛は体位によって変化し、座位や歩行で悪化。悪心を認めるが、羞明や頸部硬直、発熱はなし。 CTとMRI、MRAを撮影したが、この時点では異常なし、髄液検査では初圧9cmH2O以外は異常なし
診断的治療としてblaad patchをL4/5より17ml実施したところ、直ちに頭痛は消失。精査のため造影MRIを用いたところ、髄膜の肥厚と変性、硬膜外静脈洞の拡張を認めた。
脊椎MRIではC7-T1にかけて椎体の隆起を認めこの部分で硬膜外静脈の拡張もあり、CSFの隆起が疑われた。C7-T1の椎体部分切除術を施行し、3日後に退院。術後2週間での外来でも首の回旋制限以外に特に後遺症はなく、頭痛も起きなかった。


Spontaneous intracranial hypotension 特発性低髄液圧性頭痛
発症頻度は5/10万人 40−50台の女性に多い。原因としては特発性ではあるが、1/3の患者でなんらかの軽度外傷が報告されている。
症状は後頭部の頭痛。痛覚のあるどの静脈が「引っ張られているか」によって部位が決まる。頭痛の性質は電撃的なのものから徐々に悪化するもの、体位によるものからよらないものまで様々である。首の痛みは半分の患者が訴える。
髄膜が刺激されるため、羞明や頸部硬直、嘔吐といった症状も認められる。脳神経や下垂体、脳幹は脳が下垂することで影響を受ける。 この結果複視や視野欠損、味覚障害、顔面神経まひを訴えることもある。脳下垂がひどくなると、運動障害がおきることもある。
ある研究は 338人のSIHの患者の6%に、頭痛発症時にミエロパチー、神経根障害がおきたとしている。
診断はCT myelography とガドリニウム造影MRIがよい。 Dynamic CT myelographyがリークの場所の特定に最も優れている。 Gd MRMは CTMよりも小さくて流れの遅いリークに対して感度がよいが、撮影はより複雑である。
そして未だにSIHを疑う患者の半分においてこれらの検査はCSFリークを特定できない。
結局診断は臨床症状と画像診断を複合させて考えるしかない。
国際頭痛学会はSIHの診断基準を作っているが、制限がかかりすぎている。

A. 頭部全体 および・または 鈍い頭痛で,座位または立位をとると 15 分以内に増悪し,以下のうち少なくとも 1 項目を満たし,かつ D を満たす
 1. 項部硬直
 2. 耳鳴
 3. 聴力低下
 4. 羞明
 5. 悪心
B. 少なくとも以下の 1 項目を満たす
 1. 低髄液圧を MRI で認める ( eg 硬膜の増強など )
 2. 髄液漏出を脊髄造影、CTM、または脳槽造影で認める
 3. 座位髄液初圧は 60mmH2O未満
C. 硬膜穿刺その他髄液瘻の原因となる既往がない
D. 硬膜外血液パッチ後, 72 時間以内に頭痛が消失する

硬膜外自己血パッチを行うと、SIHの患者で治療後数分で症状が軽快する。このため診断的治療にも用いられている。この早期効果は脳脊髄におけるCFSの流れの変化によるものと考えられている。治療の効果はCSFリーク部位と硬膜外に入れた血液の広がりによって決定され、治療効果は55-77%とされているが、施術前にトレンデンブルク位を1時間とり、さらにパッチ後24時間その姿勢を保持すること、アセタゾラミド内服を併用することで90%の患者に効果があったとする報告がある。
(アセタゾラミドはCSF産生を抑制する効果があり、自己血によるリーク部位をシールする時間を長く保てるためと考えられている。)
自己血パッチでも症状が改善しない場合は外科的治療でリーク部位を閉じる。

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自己血パッチ、やったことないなー