2015/01/28

Consciousness and anesthesia

麻酔中の意識と記憶に乖離があるという論文を読んだら、
もう少し文献をあさってみたくなった。

The ability of bispectral index to detect intra-operative wakefulness during total intravenous anaesthesia compared with the isolated forearm technique.
Anaesthesia 2013, 68, 502–511   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23521699
この論文では、婦人科手術をうける患者22名について、BIS 55-60を目標にTIVA-TCIのコントロールを行い、意識と記憶の状態を評価した。
isolated forearm technique(IFT)を用いており、16/22名でIFTで反応があった。
また2名の患者は反応したことをかすかに覚えていた。BIS 55-60では「意識があるが記憶がない状態」の患者が多く、意識と記憶は麻酔深度によって差を認めていた。

意識と記憶が脳に於いても物理的に別の場所で管理されていることを思うと、
麻酔における「意識のなさ」と「記憶のなさ」が乖離していることも至極当然の
ようにも思う。

・1MACで50%が皮膚切開を加えても動かないとされるが…
吸入麻酔のMACという概念は脊髄の運動ニューロンの抑制の指標であり、脳ではない。
脳にのみ薬剤を投与し、麻酔中の痛み刺激への反応抑制を得ようとすると、約2倍量が必要となる(動物実験)

・麻酔薬で意識が消失するメカニズムは、脳の様々な部位の情報・刺激を統合する能力を抑制することによるものらしい。

・麻酔中の覚醒状態にはノルアドレナリン系の神経シグナルが関与している。
Eur Neurosci 2011:34;1018-1022

・プロポフォールとミダゾラムは記憶形成過程を抑制する。
ミダゾラムに逆行性健忘があるといわれているが、これはミダゾラムが海馬や扁桃体に分布するGABAa受容体に作用するからとされている。

・少し古いがScienceに乗った麻酔と意識についての総説
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2743249/

参考:日本臨床麻酔学会会誌 2015:35