2018年12月のAnesthesiologyに掲載されていたPCCのReview
http://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2698978
PCCに関する423の英語論文から周術期に関する36論文を中心としたnarative review
PCC
PCCはVitK依存性凝固因子 II VII IX Xを補充する血液製剤である。PCCには3-factorと 4-factor製剤があり、違いは3-factorにはVII因子が含まれていない(実際にはわずかに含まれているが少ない)。製品としては世界中で8製品存在する。
疫学
USでワーファリンによる治療を受けている患者は300万人。VitK拮抗薬(主にはワーファリン)の最も重大な合併症は出血であり、AfでVitK拮抗薬内服している患者の年間重症出血イベント発生率は1.0-7.4% (内服していない患者では0.1-2.5%)。特に脳出血は致命的になることがあり、ワーファリン関連出血による死亡数の88%は頭蓋内出血である。
VitK拮抗薬内服患者のMajor bleedingの死亡率は10-25%とされており、頭蓋内出血に限ると43.5%であった。
ガイドライン
USと欧州で若干異なる点もある。
周術期、VitK拮抗薬を内服している患者が手術を受ける場合は5日前に中止することが推奨。緊急手術の場合はPCCがFFPよりも推奨。
Major bleedingでは 25-50U/kgのPCCをVitKと共に投与することが推奨。
この様なガイドラインの推奨にもかかわらず、FFPも現場では多く使用されている。
FFPはVolumeを必要とする様な大量出血の際には有効であろうが、デメリットとして、血液型照合まで投与できない、解凍時間を必要とする。輸液過多となるリスク、感染、TRALIのリスクなどがある。
※日本でのPCC
2018年現在日本で使用できるPCC製剤は次の2製剤のみ。
・PPSB-HT静注用「ニチヤク」
・ケイセントラ
ケイセントラ(Kcentra)はヨーロッパでは異なる商品名で販売されている(beriplex) 。
PCC vs FFP
3つのRCTと1つの後向き研究。PCC群では55%が30分以内にINRが1.3以下まで低下下が、FFP群では1.5%であった。投与量も40-100mlであり、投与時間は平均21分とそれに該当するFFPは141分である。またPCC投与群の方が手術時間も短くなった。手術開始までの時間もPCCの方が短いと。
止血効果はというと、PCC群で90%、FFP群で75%に止血効果が得られた。(止血効果ってどうやって測るんだ?)
死亡率には差を認めないとのメタアナリシス(13論文)がある。
PCC vs FVIIa
FVIIa も凝固因子の補充として使用されるが、PCCとFVIIa ではINRの正常化までにかかる時間に差なかった。PCCとFVIIa の併用とPCC単独を比較すると、併用群ではDVTのリスクが増えた。またINRのリバウンド、脳出血の場合の血腫の増大傾向はFVIIa 群で多かった。
手術別
頭蓋内出血:RCTではPCC群とFFP群で死亡率は変わらず(17.9 vs 14.3%)という報告とPCC群の方が神経後遺症が少なかったとの報告あり。
心臓手術(特に心臓移植):PCC群の方がFFP群より早くINRを正常化、術後出血を減らすことはできるが、出血yによる再開胸止血術の頻度や死亡率には差はなし。閉胸にかかる時間はPCC群の方が短い。
外傷:外傷による大量出血ではRBC:FFP:PLT = 1:1:1の輸血により救命率が上昇したという報告があり、輸血は必須。ただ、外傷により凝固障害は起きる。ワーファリンを内服した患者の外傷例26例の後向き症例方向ではPCC使用によりINR 5.7から1.5まで改善が認められ、2日間維持された。
合併症(主に血栓症)
血栓症には差を認めないとの報告が多い。
その他
andexanet alfa
抗Xa製剤の中和材。USで2018年5月にFDA承認を受けたばかりでまだ使用できる施設も限られている様。
外傷患者に対して、4-factor PCCの方が有用という論文。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30074978
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読んで思った感想は、
・PCCは時間が売り!少量でも致命的になる様な出血では早急にINRを戻せる
・死亡率や再出血率は変わらず、FFPに完全にとって代わる薬ではない。
・大量出血ではVolumeも必要なのでFFPがいいのではないか?