2017/12/06

JAMA 2017 prevention of SSI


JAMA に2017年論文ランキング(JAMAに掲載された論文のみが対象)があった。
1位が2017年7−8月にCDCから出されたSSIの予防に関する論文
https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2623725

Core Section
【静注抗生剤の投与】
・皮膚切開時に非経口抗生剤が行われるべき 1B
・術前で上記以外のタイミングでの抗生剤の投与は推奨されない。
・帝王切開であっても、皮膚切開前に抗生剤を投与する 1A
・成人においては抗生剤の投与量は体重によって変わらない。
 たのRCTでは薬物動態に基づいて抗生剤の投与量を変更すべきとしているが、結論は出ていない。
・術中の抗生剤の追加投与について、術中の抗生剤の追加についてはそれがSSIを防いだとのエビデンスはない。薬物動態に基づいて追加投与すべきとしている団体もあるが、結論は出ていない(一番驚いた)
・術後にはたとえドレーンが入っていたとしても抗生剤を追加する必要はない。

【非静注抗生剤による予防】
・腹腔内の抗生剤溶解液での洗浄の効果と副作用はトレードオフであり、結論は出ていない。
・インプラント製剤を抗生剤溶解液にひたすことでSSIが予防できたとするRCTはない。
・抗生剤入りの軟膏やパウダーを使用することは意味がない。1B
・autologous platelet rich plasma(自己血高濃度血小板血漿)はSSIの予防のためには不必要である。 II
・triclosan coated sutureの使用を検討する。(バイクリルプラスとか。)
triclosan coated sutureのSSI予防に関するメタアナリシス
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29043582
・antimicrobial dressing の使用は検討しても良いかもしれない。

【血糖コントロール】
・術中の血糖値は200mg/dlを超えないようにする 1A
・SSIを予防できる最適A1Cについての研究は今の所ない。

【体温管理】
・normothemiaを保つ 1A

【酸素化】
・FiO2をあげることによるリスクベネフィットはトレードオフである。
・呼吸機能が正常な人であれば、FiO2をあげることはSSIの予防に繋がるかも。
・気管挿管をしない患者で、術中に酸素マスクを使用して酸素を投与することにはリスクベネフィットがありトレードオフである。
・呼吸機能が正常な人に術後に酸素マスクを使用して酸素を投与することにはリスクベネフィットがありトレードオフである。
・SSIを予防するための術後の酸素投与量、期間については結論は出ていない。

【消毒】
・手術を受ける患者は前日の夜か当日にシャワーに入り、石鹸で体を洗うべき。
・クロールヘキシジン入りの石鹸や消毒液でのシャワー、バスの使用については議論があり、トレードオフ。
・禁忌がなければアルコール入りの消毒液で術前に消毒すべき
・SSI予防のためのシーリング剤をしようすべき
・plastic adhesive drapes(ヨードを塗ったうすーいシートなど)はSSI予防には不必要。
・閉創前に皮膚に消毒をし直すことはリスクベネフィットのトレードオフである。

【その他】
・TKAが人工関節のなかで最も感染が多い。
・SSIの予防のために輸血を制限することはない
・ステロイドの全身投与はリスクベネフィットでトレードオフの関係。
 (=ステロイドの全身投与がSSIのリスクを増やしているとの結論は出ていない)
・創部へのステロイド投与もリスクベネフィットはトレードオフ。



-----------
なかなか昔の習慣を廃止するのは厄介だと思う。
術後も抗生剤をドレーンが抜けるまで投与し続ける施設のなんと多いことか。

WHOガイドラインのようにFiO2 80%にすべきとか無茶なことを言わないのはCDCのいいところだと思う。