2016/05/06

Rosuvastatin doesn't prevent Afib after cardiac surgery

NEJMにRosuvastatin(クレストール)の論文が載っていた。
結果としてはNegative dataだったわけだが、いろいろと勉強になった。
統計を勉強し出すと、どんな統計手法をつかっているのかに興味がわく。

Perioperative Rosuvastatin in Cardiac Surgery
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1507750

心臓手術後の心房細動の予防として、スタチン製剤であるRosuvastatinが効果があるか?を他施設で行ったRCT。 STICS trial

P: 予定された心臓手術を受ける患者 1922人
I : 手術の1w前からRosuvastatin 20mg/dayを内服する
C: placeboの内服
O: 術後5日目までの心房細動の発生率、心筋ダメージ(トロポニンTの測定)
 2ndly outcomeとして入院期間中の死亡(原因を問わず)、入院日数、ICU滞在日数、入院期間中の心房細動の診断、退院時のEF、腎機能障害とした。

そもそも心臓手術後の患者は35%で心房細動が起こるが、この原因として炎症反応があることがわかっている。スタチンは抗炎症作用があることがわかっており、その効果により心房細動が予防できるかを調べた。
サンプル数の決定:心房細動の発生率の差を25%、トロポニンTのAUCの面積差を15%だすことを想定してpower 0.8でサンプル数を求めたところ、1000人の患者が必要であった。
このため2000人をエントリーさせることを目標として研究を行った。

対象患者の86-87%がCABGであり、残りがAVRであった。(on/off pumpは 50:50程度)

結論としては、Afibの発生率には差は認められず、トロポニンTの値にも差はなかった。
しかしRosuvastatin投与群ではクレアチニンレベルが上昇しており、AKIの基準を満たすため、Rosuvastatin投与によりAKIが増加する可能性があるとの結論となった。

これより前におこなわれていたスタチンの研究ではAtorvastatinが効果があったとのRCTがあるが(ARMYDA-3 trial)が、それ以外で明確な効果を示す大規模研究はない。
また本研究では年齢が比較的若く(平均年齢 60歳)、術前のEFも良い状態(EF 60程度)であったことから、差がでなかった可能性もある。より重篤で高齢者の場合は差がでるかもしれない(とまでは言っていない。)。

ここでつかっていた統計手法
ANCOVA 分析 共分散分析 トロポニンTのAUC分析に使用している。
 共分散分析については後で勉強しよう。
欠損値の補完のための手法はRubin's method を使用。このRubin氏は統計における欠損データの取り扱いの手法を築いた先生。
multiple imputation多重代入法という方法で欠損データを補完している。これはRでもできるのかな。→もちろんできた。