場合に何を注意すべきかのreview from USA
Management of patients with implanted ventricular assist devices for noncardiac surgery: a clinical review.
Semin Cardiothorac Vasc Anesth. 2014 Mar;18(1):57-70
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24132353【現在の装着率と生存率】
2006年までにLVADを装着したひとは6561人に上る。このうち4644人は心移植までの橋渡し(bridge to transplantation BTT)、1834人(28%)は永久使用(destination therapy DT)であった。
2012年にはDTでLVADを挿入した患者は全体の44%にのぼり、移植を前提としない装着が増えている。2010年以降のDT目的のLVAD装着患者の全てがcontinuous flow型を使用している。1年生存率は80%、2年で70%、4年で47%。
【合併症】
LVAD装着後初期の1年間の合併症で最も多いのは出血であり、次に感染症、不整脈、呼吸不全と続く。出血の中でも消化管出血は頻度の高い合併症であり、発生率は1.6/患者/yearである。出血合併症を引き起こす病態として、抗凝固療法の他に線溶系の更新、血小板数/機能の減少、粘膜虚血、後天的von Willbrand症候群、動静脈形成異常が考えられている。
特にHeartMate II では出血のイベントが高い。
退院後の合併症で最も多いのは感染。またLVAD装着患者の死因として最も多いのは致死的不整脈(19%)であり、次に感染、中枢神経疾患(脳梗塞、脳出血など)が続く。
【HeartMate IIについて】
第二世代といわれるVADで広く普及している。今までに13000人近くに適応されており、ポンプの速度は平均9450 ± 490 rpm、pump flowは平均5.6 L/min。
Pulse index(PI 平均値 5.0)は自己心の拍出力(stroke volume)をしめしており、前負荷、自己の心機能、VADの出力によって左右される。PIが低いとVADのアシストが強く、PIが高いと自己の心機能高いことを示す。
HeartMate IIを装着した患者はバイアスピリンおよびワーファリンを内服しINR 1.5-2.5に保つことが推奨されている。
【非心臓手術の頻度】
VAD装着患者の約22%に、なんらかの非心臓手術を受ける必要がでる。通常はVAD装着を行った病院での予定手術となることが多いが、今までに13例の緊急手術が報告されており、VAD装着を行った病院ではない病院での手術を行わざるを得ない状態であった。
予定手術の死亡率は2%であるが、緊急手術では41%であった。
予定手術で多かったのは胆嚢摘出術、ヘルニア、大腸切除、腸閉塞解除術であった。
【術前評価と麻酔】
麻酔管理方法についての論文は、信頼性の高いものは少なく経験によるreportにとどまる。
continuous flowのVADが入っている患者では拍動流がないため、パルスオキシメーターやNIBPによる血圧測定が困難である。モニタリングについては、A-line、CVを入れることは有益であるが、PACは肺高血圧のリスクのある患者以外は特に有益ではない。
TEEはvolumeやVADの機能評価に有効である。
【術中管理】
LVADは前負荷に大きく依存している。前負荷が減少すると、suckdownを起こしVADの機能不全となるためvolumeに注意する。
CVPは10-12に保ち、Pulse indexは4-5となるようにvolumeを調整する。低いCVP&低いPIはvolume不足を意味し、高いCVP&低いPIは右室不全、低いCVPと高いPIは後負荷を示唆している。
術中の抗凝固療法について、HeartMate IIではワーファリンは手術3-5日前に止めてもよいとされている。またヘパリンへのブリッジは心房細動や血栓症の既往のあるハイリスク患者以外では不要である。
もともとVAD装着患者は不整脈のリスクが高いため、除細動器は必ず準備しておく。最近のVADは電気メスとの干渉はないが、古いタイプのものでは干渉することもあるため確認が必要。
VADに伴う致死的不整脈から心停止となるリスクも高い。VAD装着患者が心停止となった場合には胸骨圧迫はしてはいけない。腹部圧迫(これでも有効な拍出が得られる)、挿管、アドレナリンの投与、FF ECMOの装着が推奨されている。
cf: 心臓手術術後のCPAにおける蘇生
Guideline for resuscitation in cardiac arrest after cardiac surgery.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19297185
日本の補助人工心臓のガイドライン2014
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_kyo_h.pdf