2014/02/17

2011 Blood conservation guideline by SCA

まず blood conservationをどう訳せばいいのか困った。輸血回避だけでもないし、血液保存とか、維持だとよくわからない。
訳ってむつかしい。

http://www.annalsthoracicsurgery.org/article/S0003-4975(10)02888-2/fulltext


【術前治療介入】
・P2Y12受容体阻害薬(チクロピジン&クロピドグレル)は可能であれば冠動脈再建術の前に中止すべきである。薬剤中止と手術までの間隔は薬剤動態によるが、少なくとも3日は休薬すべきである(IB)。
・Point of care試験で血小板のADP受容体の反応性を調べることで、早期に冠動脈再建を行うべきクロピドグレル無効患者を認識できる。これらの患者はクロピドグレル休薬後の待機時間を必要としない(IIbC)。
・CABG術後早期にルーチンにP2Y12阻害薬にアスピリンを追加することは再検査や再手術のリスクを増やす。ACC/AHAのガイドラインで二重抗血小板薬治療が推奨されている患者を除いて、アスピリンの追加を有効とするエビデンスはない。(ACC/AHAで膵症されている患者:ACSを呈している患者、DESを挿入した患者)(IIIB)
・術前に貧血のある患者やエホバの証人のような輸血を拒否する場合、術中に貧血となるリスクが高い患者では、心臓手術前の数日間に鉄とエリスロポエチンを投与してもよい。しかし慢性的なエリスロポエチンは腎不全患者での血栓性心血管イベントを増加させるあため、そのようなイベントのリスクのある患者では投与に注意を要する(IIaB)。
・遺伝子組み換えヒトエリスロポエチンは術前の自己血貯留を行った患者の赤血球を開腹させる。しかしこの製剤について心臓手術をうける患者を対象とした大規模な安全検証試験はなされていないので、血栓性心血管イベントのリスクとのバランスを考慮するべきである(IIbA)。

【術中に使用する薬剤】
・リシンアナログ(εアミノカプロン酸、トラネキサム酸)は出血量を減少させ、輸血を必要とする患者の数を減らす(IA)。
・高用量(600万KIU)、低用量(100万KIU)のアプロチニンは輸血を必要とする患者の数、全出血量、再検査率を共に減らすがリスクが利益を上回るためルーチンの血液保護療法として推奨されない。高用量のアプロチニン投与は30日死亡率を49%から53%に上昇させ、腎障害のリスクを47%増加させる。小児を含む若年者ではこのようなデータは存在しない(IIIA)。

【血液管理の手段】
・血小板輸血は多数もしくは単一の凝固因子が欠損している重症出血患者で安全な分画製剤が使用できないときに有効である(IIaB)。
・緊急のワーファリンリバースのためにPCC投与が望ましい。しかしPCC内に充分なVII因子がない場合は血漿輸血はが望ましい(IIaB)。
・相当な量の濃厚赤血球輸血を必要とする出血患者では大量輸血アルゴリズムに従って血漿輸血を行う(IIbB)。
・凝固障害がない心臓手術で予防的な血漿津血は勧められない。出血を減少させることはないし患者を同種血津血することで不必要なリスクにさらすことになる(IIIA)。
・血小板は出血していないワーファリンリバースには使用すべきでない(IIIA)
・XIII因子の使用はCPBを必要とする心臓手術後のclotを安定化させるために検討する(IIbC)。
・同種血輸血が必要な場合は白血球除去血が望ましい。白血球除去による恩恵は心臓手術患者ではより大きい(IIaB)
・十分な量の血小板が用意できるのであれば、術中の血小板・血漿交換はハイリスク患者に対する対処方法の1つである血液維持の戦略として妥当である(IIaA)。
・遺伝子組換VII因子はCPBを使用する心臓手術後のルーチン輸血・輸液療法に反応しない非手術性出血の管理として考慮する(IIbB)
・AT IIIはCPB前、ヘパリン抵抗性をもつ患者に対して血小板輸血量を減らす目的で導入する(IA)。
・AT IIIの投与はAT III欠損している高リスク患者や宗教上の理由から輸血を拒否している患者の集学的血液管理プロトコルとして確立したものではない(IIbC)。
・XI因子、もしくはXI因子を含む凝固因子複合体はヘモフィリアB患者や宗教上の理由で輸血を拒否している患者が心臓手術を受ける場合に考慮する(IIbC)

【血液回収方法】
・CPBを必要とする悪性疾患の患者でも、術野からの回収血液濃縮方法は考慮する。いくつかのデータが悪性疾患のない患者でのこの方法の有用性を支持しており、新しいエビデンスが悪性疾患の患者での同種血輸血による予後悪化を示している(IIbB)。
・ポンプで回収された血液を直接かえすのではなく遠心分離することはCPB後の同種血輸血を最小限にするため妥当である(IIaA)

【低侵襲手術】
・下降大動脈病変に対汁TEVARは出血と輸血を減らすことができるため、患者を選んで行うべきである(IB)
・OPCABGは血液維持のために望ましく、またon pump CABGに変更することはまれで、グラフト閉塞のリスクの増加はリスクとベネフィットを考慮して考えるべきである(IIaA)

【CPB管理】
・マイクロプレジアのルーチンでの使用は多様な血液維持方法の1つとして心保護液の用量を最小限にできるため考慮する。とくにうっ血性心不全のようにvolume過多であると考えられる場合に考慮する。
・HITをもつECMO導入患者では代替となる高凝固療法としてダナパロイドや直接トロンビン阻害薬を使用するべきである(IC)。
・ミニ回路(CPB回路を最小限にすることでプライム量をへらすことができる回路)は血液希釈を減らすので、血液維持のために有益である。とくに血液希釈による副作用が高い患者(小児やエホバの証人)では導入を検討する(IA)。
・陰圧吸引補助脱血法をミニ回路の併用は出血および輸血量を減らすために有効である(IIbC)。
・biocompatible CPBは輸血回避・血液維持法の1つとして考慮する。
・調整限外ろ過はCPBを使用した小児、成人の心臓手術の術後の出血を減少させる(IA)。
・ゼロバランスの限外ろ過(除水 0)のメリットは輸血回避・血液維持の観点からは確立していない(IIbA)。
・CPB回路に有効な白血球フィルタを設置することは周術期血液維持の観点から勧められず、CPB中に白血球が活性化するため使用すべきではない(IIIB)
【局所止血薬】
・局所圧迫や創部のシーリングといった局所止血方法は局所循環をもたらすため行うべきである(IIbC)
・抗線溶薬をCPB後の術野で使用することで、CPBを使用する心臓手術術後の輸血量をへらしチェストドレナージを制限するために有益である(IIaB)