2020/07/24

ICUせん妄への介入


7月に渡米が決まっていたのが、期限未定の延期になって今後の人生をどういうふうに
生きるかについてもう一度考え直すきっかけになった。

結局好奇心のままに未知なことを解明しようとするプロセスが好きなのかもしれない。
でもそれを遂行できるだけの体力と気力が年齢とともに衰えていく。

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Shelton KT, Qu J, Bilotta F, et al. Minimizing ICU Neurological Dysfunction with Dexmedetomidine-induced Sleep (MINDDS): protocol for a randomised, double-blind, parallel-arm, placebo-controlled trial. BMJ Open. 2018;8(4):e020316. Published 2018 Apr 20. doi:10.1136/bmjopen-2017-020316

心臓手術後のICUせん妄に対してデクスメデトミジンを使用した睡眠コントロールに治療効果があるかを検証したRCTのプロトコール公開。
デザイン:370-patient block-randomised, placebo-controlled, double-blinded, single-site, parallel-arm superiority trial
対象:60歳以上の予定心臓手術を受ける患者
180日までの認知機能を電話調査で確認するので、長期的な予後についても評価するところが新規性の1つかもしれない。

2016年にLancetに非心臓手術でのデクスメデトミジンのせん妄予防効果についての論文があり、ここでは少なくとも術後7日目までのせん妄発生予防効果が認められている。

Occurrence of hypotension and bradycardia did not differ between groups.
DEXを使っても徐脈のエピソードが増えないのであれば良いことだ。


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Lee A, Mu JL, Joynt GM, et al. Risk prediction models for delirium in the intensive care unit after cardiac surgery: a systematic review and independent external validation. Br J Anaesth. 2017;118(3):391-399. doi:10.1093/bja/aew476

術後せん妄のリスク予測モデルのメタアナリシス。論文を精査したら結局3本の論文しか残らなかったので、その3本について評価をしている。
3本の論文のそれぞれのリスク因子は結構似通っているのだが、
1)RBC transfusion >5 units, perioperative IABP sup- port, preoperative de- pression, preoperative creatinine >150 mmol litre􏰀1, age 􏰂60 yr, com- bined CABG/valvular surgery, preoperative statin use
2)Age, APACHE II score, coma, admission category, infection, metabolic acidosis, morphine use, sedation, urea, urgent admission
3)Age, APACHE II score, coma, admission category, infection, metabolic acidosis, morphine use, sedation, urea, urgent admission

あれ、2本目と3本目の論文、リスク因子全て同じではないか?と思ったら、研究者が全く同じだった。同じ施設で2回studyを行っている。リスク評価をROC曲線で分析していてより当てはまりが良いという結果。
それぞれの論文ともせん妄の発生率は20-30%と(自分が)思っていたよりも少なかった。

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Yasuda Y, Nishikimi M, Nishida K, et al. Relationship Between Serum Norepinephrine Levels at ICU Admission and the Risk of ICU-Acquired Delirium: Secondary Analysis of the Melatonin Evaluation of Lowered Inflammation of ICU Trial. Crit Care Explor. 2020;2(2):e0082. Published 2020 Feb 24. doi:10.1097/CCE.0000000000000082

こういう研究面白い。 
The serum levels of norepinephrine measured at ICU admission were significantly associated with the risk of ICU-acquired delirium in the Ex(-) group (odds ratio, 2.58; 95% CI, 1.02-6.52; p = 0.046), but not in the Ex(+) group (odds ratio, 1.02; 95% CI, 0.88-1.18; p = 0.823).

薬剤として投与されたカテコラミン(特にノルアドレナリン)の血中濃度はせん妄とは関係なかったが、カテコラミンを投与されていない、内在性のカテコラミンが分泌されている患者ではせん妄の発生と濃度の間に関連があったと。
しかしこの場合、カテコラミン血中濃度は脳が受けるストレスを反映しているのかもしれない。
代理マーカーであり本質の原因はなんだろうか。