2019/04/29

Health behavior and behavioral economics



GWは10連休でもないし、特にどこに行く予定もないが、
やりたかったことや読みたかった本がたくさん読めてとても嬉しい。


日経新聞に、がん検診受診への行動変容のためのパンフレットが紹介されていた。
がんセンターが行動経済学を利用して進めているものらしい。
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO43946040Z10C19A4TCC000?channel=DF140920160921&style=1&n_cid=DSTPCS001

4月に入学した公衆衛生大学院で、この行動科学と医療のトピックがあり、
「医療現場の行動経済学」(2018年に出版されたばかり)
を読んでいる。とても面白い。


医療現場において、ナッジは時として押し付けや強制とも捉えかねないが、
国が社会保障として医療費の一部を負担している以上、国民の健康行動を
促進する義務はある程度正当化できる。

この本の中で面白かったのが、リスク回避型の人間は健康行動(体重管理、タバコを吸わない、歯を磨くなど)の遵守率が高いが、がん検診の受診率は平均より低いという事実。
がん検診自体が、痛み、煩わしさなどのリスクをはらんでいる場合、
現状バイアスによってリスク回避型の人間はこれを取らないということらしい。


ビジネススクールのように、様々な取り組みについて、
モデルケースのように症例分析が進んでいくと、何かが変わるかもしれない。




2019/04/25

JAMA 周術期予防抗菌薬


大学院に行ってよかったことは論文が読み放題。

Association of Duration and Type of Surgical Prophylaxis With Antimicrobial-Associated Adverse Events.
 JAMA Surg. 2019 Apr 24. doi: 10.1001/jamasurg.2019.0569. [Epub ahead of print]
https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2731307


【背景】
2017年にCDCから出されたSSI予防のガイドラインでは、心臓手術では術後48時間、その他の手術では24時間以内に予防的抗菌薬投与の中止が推奨されている。しかし遵守率またSSI発生率、抗菌薬投与による合併症(AKIおよびC. difficileによる偽膜性腸炎)の発生率は不明である。

【方法】
研究デザイン:米国退役軍人病院における後方視コホート研究
P: 2008年から2013年の間に米国退役軍人病院において手術を受けた患者
(心臓手術、大腸手術、THA、血管手術の4つの分野に限定)
I : 術後24h以内に抗菌薬が中止された群
C : 術後24h以上抗菌薬が継続された群
O: 術後SSI発生率、AKI発生率(AKIはCre 0.3mg/dl以上の上昇)、C. difficileによる偽膜性腸炎発生率

【結果】
期間中94,133人が手術を受け、SSIデータが残っていた79,058人を対象とした。SSIの発生はどの手術においても、24時間以上投与した群と24時間以内の群で差を認めなかったが、AKIおよびC. difficile 感染は抗菌薬投与日数が増加するほど、発生率が増加した。手術部位別にみると、SSIの発生は大腸手術で有意に高く(13.6 vs 1.4-8.1%)、AKIの発生率は心臓手術で有意に高かった(30.4 vs 11.6-17.2%)。投与された予防抗菌薬の種類ではVCMがAKIの発生率と関連があり、アミノグリコシドとの併用によりそのリスクは更に上がった。
抗菌薬の長期投与はSSIのリスクを0.6%減少させるが、AKIのリスクを6.0%上昇させた。個別解析では、心臓手術においてVCMの予防投与は有害作用よりもSSI予防の効果の方が強いという結構となった。

【考察】
抗生剤の長期使用は効果よりも有害作用の方が強いことが明らかとなった。周術期の抗菌薬投与について、ガイドラインを擁護する結果となった。

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この抗菌薬問題は、年配のDrになるほど、ドレーンが抜けるまで抗生物質を投与するとか、なかなか新しいガイドラインが出たからといってその行動は変わらない。
行動を変えるために何をすべきかというのは本当に難しい。





これはJAMAに乗っていた日本からのletter

opioid use after surgery
https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2731305