2016/06/12

Anesthesia and pediatric neurocognitive outcomes


JAMAに麻酔の話ってめずらしい。
でも小児麻酔の神経毒性についてはNEJMとかLancetとか、けっこう大きな雑誌に取り上げられている。小児領域でも関心のあるところなのだろう。

PANDA study
Association Between a Single General Anesthesia Exposure Before Age 36 Months and Neurocognitive Outcomes in Later Childhood
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2526640

36ヶ月(3歳)未満で鼠径ヘルニア根治手術を受けた小児105人と手術を受けていない小児(入院歴あり)105人を対象に、8-15歳での神経学的認知機能の評価を行った。

もともとの母体数(鼠径ヘルニア根治術施行患者数)は9038人であったが、手術回数(1回)、年齢(36ヶ月未満)等の基準をみたし、同意が得られた患者は105名であった。

統計にはR statisticを使用。ANOVAでIQの違い、麻酔暴露期間の違い、暴露時間の違いによって比較を行った。

結果として、神経学的認知機能(IQテストの結果)には0.2 pointの差を認めたが、これは有意な差とは認められなかった。最も差を認めた項目はBehavior のinternalizing behavior(内面行動?)であった。

2015年にLancetにGAS trialが発表されているが、このトライアルでは神経学的認知機能の評価を5歳で行なっている。PANDA studyでは認知機能がはっきりと評価できる8-15歳で評価している点が異なる。

またこのPANDA studyでは参加した子供の両親の学歴や年収、持ち家区分、加入している保険の種類まで調査しており、経済状況が児のIQと相関していることも指摘している。
この経済状況のbiasを取り除く必要があり、このstudyではそれができていると。


------
この論文で鼠径ヘルニア手術くらいの麻酔では特に問題ないですよ、と自信をもって言えるようになったのだろうか。

Lancet のGAS trial
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)00608-X/abstract