2015/07/26

大血管手術と凝固障害


いろいろな文献からとりとめもなくメモ

解離性大動脈瘤や慢性大動脈解離では、慢性的に凝固因子が消費されており、5.7%で消費性凝固障害をきたしている。しかしこの論文1967年にだされて以降、特に新しく発表されているような関連論文がない。
人工弁に関しては大動脈弁位より僧帽弁位に置換されたものの方が血栓の発生率が2-3倍高い。
INTENSIVIST 2015 Vol.7 No.2


ECMO使用中でもVII因子製剤は問題なく使用でき、出血を止めることができたとのこと。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25908783

one lung ventilationではI:E 1:1がよいとの論文。 2012年だけど。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23194211

2015/07/13

Anesthesia of tracheobronchial foreign bodies


小児の気管異物の麻酔について
自発呼吸がよいのか、それとも調節呼吸がよいのか、
TIVAがよいのか、それとも吸入麻酔薬がよいのか?

今の自分の技量からすると、調節呼吸で吸入麻酔薬を使用する。より安全で確実。

調節呼吸がよいか、自発呼吸がよいかのメタアナリシス
結局差はないとの結論だが、調節呼吸の方が管理はしやすい。
慣れてなければ安全だと思う。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24975102


A&Aに小児の気管異物のreviewが出ていた。2010年とちょっと古いけど。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20802055

30編の論文のレビュー。27編がretrospective、3編がprospectiveに解析されており、合計患者数は12979人。
頻度:患者は3歳以下に多く、ほとんどの論文で平均年齢は1~2歳の間であった。誤飲物質の多く(81%)は天然物(ナッツ、ひまわりの種、スイカの種など)であり、続いて歯の誤飲であった。トルコではスカーフのピンの報告が多い。誤飲された物質の88%が気管支まで到達しており、52%が右気管支、33%が左気管支であった。
症状:咳、呼吸不全、ウィーズ、チアノーゼ、stridorであるが、感度・特異度ともに優れている指標はない(咳は感度が高いが特異度低い。チアノーゼやstridorは特異度高いが感度低い)。目撃者がいない場合は診断までに時間がかかることもある。
胸部Xp・CT:Xpで異物が確認できたのは11%にとどまり、患者の17%ではXp所見がなかった。気管異物のXp所見の典型的なものは局所の肺気腫、air trapping像、無気肺、浸潤影、縦隔偏移である。7編の論文では気胸、縦隔気腫の報告があった。Xpでは異物の発見に至らないことがあり、胸部CTの有用性が取り上げられている。胸部CTでは第6-7気管支分岐まで判別することが可能であり、異物の位置確認に役立つ。しかし、Xpの被曝量が0.1mSvであるのに対してCTは7mSvの被曝となり、コストやアクセスの問題からも使用は限られる。CTから再構成したvirtual bronchscopyで異物がなければ、異物の可能性は低く気管支鏡を行わないことを推奨する論文もある。
治療:ほとんどの論文で硬性気管支鏡が治療として用いられていたが、4編で気管支ファイバーも用いられていた。硬性気管支鏡を使用する場合は患者は全身麻酔を行う必要があるが、気管支ファイバーを指標する場合は鎮静のみもしくはバランス麻酔で行えると報告されている。硬性気管支鏡を使用する治療において、自発呼吸を残して行うと低酸素をおこしやすいとの報告がある。予防的抗菌薬の投与についての結論は出ていない。
硬性気管支鏡と気管支ファイバーの使い分けについては、硬性気管支鏡の方が挿入できる器具が多く、多くの施設で使用されている。しかし硬性気管支鏡と比較して気管支ファイバーは合併症が少ない。気管支ファイバーでの異物除去の成功率は91.3%であったとする報告もある。結論としては、急性の窒息所見、Xp上で確認できる異物の存在、閉塞性肺気腫像など、確実に気管支異物がある場合にのみ硬性気管支鏡を使用すべきであるとしている。
治療合併症:主要合併症は喉頭浮腫、気管支攣縮(気管切開、再挿管を必要とした報告もあった)、気胸、縦隔気腫、心停止、低酸素による脳損傷等があり、全体の0.96%でが発生していた。心停止は11症例が報告されており、麻酔導入中の低酸素(1症例)、気管支鏡操作中の低酸素(5症例)、出血(2症例)、原因不明(5症例)であった。その他の合併症として感染、気管支鏡による除去困難による気管切開、出血であった。死亡率は0.21-0.88%と報告されている。
麻酔管理:術前評価として、異物誤飲の時期(時間がたつほど気道浮腫、感染により摘出がより困難となる)、最終食事摂取時間を評価する。しかし手術のタイミングについては、患者の状態が安定している場合は、日中(定時の手術時間)まで遅らせても死亡率や合併症の発生頻度は増えなかったとの報告もあり、緊急性については個々の症例で検討が必要である。
麻酔に関わる大きな問題は3つあり、①導入方法、②気管支鏡使用時の呼吸管理、③麻酔維持の方法である。
①導入方法:導入方法は異物が気管支の完全閉塞であるか、部分閉塞であるかで異なる。部分閉塞の場合は陽圧換気により異物が移動する可能性が考えられるため、自発を残しての導入がよいとされており、多くの麻酔科医が異物が気管支にある場合は吸入麻酔薬によるを好んでいた。IVでの導入でも自発を残すことは可能であるが、今回の論文では少なかった。
②呼吸管理:自発呼吸は近位部の異物除去には適しているが人工呼吸とした方が無呼吸時間を少なくできる傾向にあった。自発呼吸と人工呼吸では合併症発生率に差はないとする論文と、人工呼吸の方がより効果的であったとする論文があり、結論はでていない。jet ventilationを正常気管支の方に使用することで低酸素のリスクを減らすことができる。
③麻酔維持の方法:昔から用いられていたのは吸入麻酔薬であり、小児麻酔においてはTIVAよりも普及している。TIVAで自発呼吸を残して行う方法としては、プロポフォール 200-400γとレミフェンタニル 0.05-0.2γにリドカイン1mg/kgの声帯への直接投与が紹介されている。また3歳以下の小児ではさらにレミフェンタニルの量を増やしても自発呼吸が残るとされている。TIVAでの麻酔の利点は呼吸状態に左右されず麻酔深度を維持できるところであるが、吸入麻酔と比較して体動が多いこと、また喉頭痙攣の発生頻度が多いことが挙げられる。
異物除去後は浮腫とガス交換機能に注意を払いながら覚醒する。
気管支ファイバーを用いた除去では鎮静で行うこともある。アトロピン0.01-0.02mg/kgとドルミカム0.1-0.15mg/kgの筋注により約1000人の患者に気管支ファイバーで異物除去を行ったとの報告もある。全身麻酔で行う場合、4.5mm以上のチューブサイズであれば3.6mmの気管支ファイバーを通すことが可能である。LMAの場合はsize 2以上で可能である。




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土日に東京麻酔専門医会のリフレッシャーセミナーにでて、
今日はNBEのPTEExamを受けてきた。
欲張りすぎだな。 

PTEExamは Clinical Manual and Review of Transesophageal Echocardiography, Second Edition という青い本だけをひたすらやれば受かると感じた。
Chapter 15までしかできなかった…

リフレッシャーセミナーは昨年より今年の方が良かった。面白かった。