2014/10/13

Intracranial hemorrhage after PCI


PCI後の脳出血にどう対応するか。この分野は最近エビデンスの更新があったのだろうか?

Anesthesiology,2014;121(3):644–653
Case Scenario: A Patient on Dual Antiplatelet Therapy with an Intracranial Hemorrhage after Percutaneous Coronary Intervention

Case: 59歳男性が、脳出血で救急搬送。2週間前に冠動脈狭窄に対してPCIを施行しDESを挿入されていた。GCSは15で問題なし。左小脳に29*18mmの脳出血を認める。アスピリンを継続し、クロピドグレルを中止してモニタリングを開始。12時間後のCTで血腫の増大はなく、1週間後にクロピドグレルを再開した。

ステント血栓の 発生頻度
BMSで 0.6% DESでは 3.6 % 。早期( < 30days)と晩期(30days - 1yr)のリスクは変わらないが、長期(1年以上 )の血栓のリスクはDESの方が高い。
このためPCI for ACSでは12ヶ月間はDAPT療法を継続することとなっている。
non ACSでのPCIではBMSで 1ヶ月、DESでは 1yrは継続することを勧告されている。

DAPT内服患者の外科手術のタイミング
BMSでは90日後が心合併症もおこらずbestとされている。この場合、アスピリンを継続しての施行が望ましい。
バルーン拡張術のみであれば、2週間後には手術可能であるが、アスピリンを継続しての施行が望ましい。

脳出血のリスク
大出血のリスクはアスピリン単独、アスピリン-チクロピジン、アスピリン-クロピドグレルでそれぞれ 1.8% 5.5% 6.2%となっている。最近注目されているチカグレロー(日本未承認)は、クロピドグレルと比較して大出血のリスクは変わらなかったものの、脳出血のリスクが高いとされた(0.34% vs 0.19%)。
脳出血のリスク自体は 0.3%程度と低いものであるが、55%が致死的な結果となるため予後は悪い。発生から最初の24時間で30%に血腫拡大が認められる。血腫の拡大による脳実質の圧迫による虚血、脳ヘルニアが危機的な状況を作る。

PCI後脳出血の管理
神経モニタリングと脳出血の広がりを防ぐことである。
・血圧管理 (sBP < 140)
・CTで血腫の広がりをチェック
・アスピリン、P2Y阻害薬の中止と循環器内科、脳外科、麻酔科への相談
・血糖管理 (BS < 180
・痙攣予防(全例に必要ではない)
・ICPモニタリング(GCS < 8の場合) 
抗血小板薬に対して血小板の輸血はすべきか
ガイドラインでは Class IIb とくに結果を変えたというRCTはない。急いで行う治療ではない

手術の適応と麻酔
出血がテント上でかつ 30ml以上の場合は手術を考慮する。
吸入麻酔薬は脳血管の拡張を を引き起こし頭蓋内圧を高めるが、1MAC以下の使用であれば問題ないとされている。しかしできれば吸入麻酔薬はさけるべき。

DAPTの再開
タイミングは個々の患者、症例によって異なるため、これと決められたものはない。