2017/05/23

TKAに対する術後鎮痛


Anesthesiology 2017 June にTKAの術後鎮痛についてのRCTの論文が載っていた。
http://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=2608336

Anesthesiologyはpodcastも配信。でも英語がNEJMより格段に聞き取りにくい。

TKAを受ける患者165人を3群に分けて術後鎮痛効果を比較した。
1) 大腿神経ブロック(持続も行う)+坐骨神経ブロック
2) 局所関節麻酔 ropibacaine (体重によってグループ分けされているが最低でも200mg)
3) 局所関節麻酔 liposomal bupivacaine (同じく最低でも266mg)

そしてPOD0,1,2の疼痛評価では差を認めなかったと。

硬膜外からブロックへの流れがあったが、
これからはブロックから局所麻酔の流れとなるんだろうか。いや、それは限定的かな。

2017/05/20

LOS after cardiac surgery


2017年の JCVAのreview
Low-Cardiac-Output Syndrome After Cardiac Surgery
http://www.jcvaonline.com/article/S1053-0770(16)30151-3/fulltext

LOS: Low output syndrome

<定義>
CI < 2.0、 sBP < 90 、臓器低灌流(末梢冷感、Lactate上昇など)
心臓手術後の最も頻度の高い合併症である。
LOSとなってしまった場合の死亡率は20%に達する。
特徴としては心臓のポンプ機能の低下とそれに伴う組織低酸素である。

<リスク>
LVEF < 50%  (<35%はhigh risk)、age > 65、on pump CABG、DM、CKD
 CPBが長時間となる、HB低下、TLC(total lymphocyte count) < 2000、BNP NT-proBNP上昇、hFABP
hFABP heart fatty acid binding protein  = 周術期の心筋障害の早期マーカーである。

<病態>
LOSはLVの収縮不全、拡張不全、RVの収縮不全の3つが関与している。
それぞれに対するアプローチが必要。

<心臓手術での戦略>
DO2 (酸素供給)とVO2 (酸素需要)のバランスを適切にすることが最終目標である。
・モニタリング
エコーは有用である。TEE TTEともに有用である。最近の新しいdeviceとしてhTEE (TEEよりかなり細いdevice ディスポで3日間使用可能)、USCOM(経胸壁でCOを計測する)なども開発されている。
SG、PAPについては年々使用が減ってきている。high riskの患者では有用とされているが、PAPが入っている患者ではICUの滞在期間増加し、人工呼吸器依存期間も長いと。
PiCCO LiDOCO、FlowTracについても有用であり、PACに変わるdeviceとして活用され始めている。LiDOCOは心臓手術の患者には信頼性低い。

<Goal Directed Hemodynamic Therapy>
2012年にはICTS 2013年にはBJAで心臓手術後のGoal Directed therapyについてのメタアナリシスが掲載された。
その"Goal"は、ScvO2 > 60% 、CI > 2、MAP、HRを適切値、intrathoracic blood volume index 850-1000(この項目はよく分からない)であり、このGoalにむけて輸液とカテコラミンを調節した群のほうが入院期間は短く ICU滞在期間も短かった。
また、Goal Directed Hemodynamic Therapyを行った群のほうが輸液量が多く、またカテコラミンの調節回数が多かった。
このGoalを目指して輸液とカテコラミン、輸血を行った群でLOSも減らすことができたとしている。

<LOSの予防>
心筋保護では左派認めなかった。しかし、暖かいblood plegiaでは中枢神経合併症が増加したと。
吸入麻酔薬は静脈麻酔と比較して周術期心筋虚血を防ぐとのエビデンスあり、推奨はIIa エビデンスレベル A である。
予防的IABPの挿入については1つの論文でその有用性が示されたが、サンプル数が少なく有用とまでは言えない。またlow riskの症例では合併症増やすのみで意味ない。
triiodothyronineについてもLOSを防ぐのではとの研究がされているが、結論はまだ。

<LOSの治療>
まずはボリューム状態を適切にする。前負荷を適切にし、カテコラミンで収縮力を改善する。カテコラミンのみを使用しても収縮力は上がるが、酸素需要も増加させるため、結局死亡率は増加する。


論文の後半はカテコラミンの各論と循環補助装置(IABP ECMO VAD)についていろいろと。カテコラミンについてはやはりDOAよりDOBという流れのよう。というかそれよりレボシメンダンが推奨。酸素需要が増えないらしい。あとGIK療法(GIにカリウム追加する)も効果があるそうな。でもインスリンを中止するとhyperKとなる。

レボシメンダン早く日本でも使えるようになってほしい。


最新号のINTENSIVISTもボリューム管理だったし、輸液っていつまでたっても古くて新しいトピックだ。

2017/05/01

TropT and 30-day mortality after non cardiac surgery


JAMAにのってた論文。
非心臓手術で、術後3日目のTroponin Tが上昇した患者では、
虚血の症状の有無にかぎらず、死亡率が増加すると。
http://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2620089

サンプル数が2万人超えと巨大。
しかし、Troponin Tは虚血以外の要因でも上昇するし、
どうやって予防すればいいのか。

大学や研究センターだと簡単に論文を入手できたのに、新しい勤務先では難しいな。