2014/09/29

Burn injury and fluid therapy

熱傷患者の輸液療法(とくに早期手術において)

◎日本皮膚科学会「熱傷診療ガイドライン」(2009年)では
 「初期輸液には、等張電解質輸液を使用することを推奨する.(B)」
 「コロイドの併用とhypertonic lactated saline(HLS)を初期輸液の選択肢の1つとして推奨する(C1)」
◎American Burn AssociationによるAdvanced Burn Life Support(ABLS)では
 「受傷後24時間以内は晶質液を用いる。TBSA 40%を超える患者では、受傷後24-48時間で膠質液を検討」

1. 早期手術とは
受傷後48時間以内 超早期切除術 熱傷ショック期 
                  Non functional ECFの増加。12時間で最大
受傷後5-7日以内 早期切除術 Refilling期から感染期
7日より後 晩期切除術 感染期から回復期

2. 晶質液輸液(アルブミン悪人説)の根拠となったエビデンス
1998年のメタアナリシスで晶質液とアルブミンを比較した結果、アルブミン使用群で死亡率が高かった。(BMJ. 1998 Jul 25;317(7153):235-40.)
このメタアナリシスの中に熱傷患者が対象のRCTが3編あり、アルブミン群で死亡率が高いという結論になった(Relative risk 2.40, CI 1.11-5.19)。しかしサンプル数はそれぞれ14,79,70。
発表も1978,1983,1995年と古い。1995年の論文は19歳以下の熱傷患者を対象に血清Albを2.5-3.5に維持するようAlbを投与した群 vs 1.5以下でAlb投与した群で死亡率、その他合併症にも差がなかった。(J Trauma. 1995 Jul;39(1):67-73; discussion 73-4.)
1983年の論文は平均28歳の熱傷患者を対象にAlb投与群と非投与群にわけたもので、Alb投与群の方で胸水が多かった。Albはすべて12時間以内に投与されている。(Ann Surg. May 1983; 197(5): 520–531.)

3. アルブミンおよび輸液量の検討
熱傷患者の低Alb ( < 2.0 g/dl)は死亡率と相関しているという後ろ向き研究。(Clinics (Sao Paulo). Jul 2013; 68(7): 940–945.)
大量輸液はFluid creep(輸液による組織変性)を起こす。(Ann Burns Fire Disasters. Jun 30, 2012; 25(2): 59–65.)
従来の輸液算定式( 4 ml/kg/%TBSA) は見直すべきではないか?という流れを受けて、2010年のABLS guidlineでは 2-4ml/kg/%TBSAとやや幅をもたせた設定となっている。
熱傷面積が広い場合は輸液量が多くならざるを得ない。
輸液の目標として日本皮膚科学会ガイドラインは尿量 0.5ml/kg/h (小児では1ml/kg/h )を目標としている。0.5ml/kg/h 以上ではない。0.5ml/kg/h以上であれば、輸液が多すぎる。

2013年のCochraneのReviewでは、HESよりアルブミンの方が死亡率のリスク比が少ない。今のところ使用するのならアルブミン。(Cochrane Database Syst Rev. 2013 Feb 28;2.)

hypertonic lactated saline(HLS) は熱傷面積 40%超える患者で効果を認めるが、管理が複雑


4. 輸血
日本の熱傷ガイドガイドラインでは触れていない。ABLSでは早期輸液療法には使用すべきでないが、no reliable guide と。
熱傷患者での輸血に関する後ろ向き研究。輸血は死亡率と感染率を増加させる。(Crit Care Med 2006; 34:1602–1607)よく読むと、手術中の輸血に関しては有意差なく、ICUでの輸血が死亡率と関連しているとしている。

熱傷施設へのインタビュー形式の調査では、年齢、熱傷面積によりtrigger Hbが異なる。
(J Burn Care Rehabil. 2004 Jan-Feb;25(1):71-5.)


参考文献:
1) 松永明 編 /症例で学ぶ新しい周術期の輸液管理」メディカルサイエンスインターナショナル2014
2) 池田弘人 編 /救急医学 増刊号 熱傷治療ガイド 2014/ へるす出版 2014